ロシア人が何にでもサワークリームを入れる5つの理由

ロシア料理
トミー・オカラガン
 ロシアのことを知り始めた外国人は次の3つのことを当然のことと思うようになるだろう。それは雪、おもてなし、そしてどこででも目にする大量のサワークリームである。

 実際、サワークリームは一体何だろう?ロシアに住む外国人にとってこれはどんな食べ物にも入れられる口当たりのよい食べ物のように思われる。しかしディル(サワークリームの悪のライバルである)と同じく、ロシアにいるとサワークリームはあなたについて回るだろう。スープの中にも、パンケーキの中にも・・・ひょっとすると墓場までついてくるかもしれない。

 本当に必要なものなのだろうか?基本的に、ロシア人はディルを多用しすぎであることに外国人が困惑していることについては、ある程度理解しようとしているようである。しかしこれがスメタナ(ロシア語でサワークリーム)のこととなると、彼らはいきなりこれを正当化しようと必死になる。そこでサワークリームについて正確に理解するため、これについてとりわけ熱心に説明してくれる人と話をすることにした。

 そして何にでもサワークリームを入れる理由が以下のようなものであることがわかった。

1.信じられないほど簡単に作れる

 サワークリームがいつ頃からロシアで使われるようになったのか誰も知らない。しかし発酵乳とヨーグルトをどうミックスすればいいのかを理解するのにそう時間はかからない。少なくとも、ゴーゴリがいつもサワークリームを食していたことは知っている。知られているゴーゴリのレシピの半分は、サワークリームを主な材料とするものだ。

 この料理は国の歴史と深く絡み合ったものなので、ほとんどのロシアには楽にできるとアイルランドに住むロシア人のクセニヤさん(42歳)は言う。

 彼女は「今ではサワークリームをほとんど慣習のように作っています」と話す。

 クセニヤさんの手作りのサワークリームは故郷を思い出させてくれるものであり、新たな故郷となった国で作られているものがどんなに美味しくないかということに対するリアクションだという。「サワークリームは牛乳か生クリームにヨーグルトを混ぜたもの。どうやったら他の国でそれを間違うことができるのかわたしには理解できないわ」と言う。「毎晩、寝る前にしっかりとフタをした瓶にそれを入れて置いておけば、翌朝にはできている。それだけ。そしてお店で見つけたどんなものよりもおいしく出来上がるわ」。

2.魔法のようなもの

 サワークリームはロシアでは「調味料」以上のものである。言ってみれば、命を救ってくれるものだ。 ちなみにサワークリームはビタミンが豊富であることから、ロシア人はこれが日焼け止めクリームの代用品になると信じている。

 「サワークリームは奇跡の食品。だからどの乳製品よりもいい」と言うのはモスクワ出身のダニエル。「アロエヴェラと同じ作用で、日焼けした肌をより早く癒してくれる。おかしいと思うかもしれないが、このことは信じてもらっていい」。

 もっと言えば、上質の食料品店を見つけるのが難しいときには本当に多くの人の命を救ってくれる食品である。

 「90年代はわたしと家族にとって飢餓の時代でした」とクセニヤは話す。「サワークリームかマヨネーズをいっぱいにしたお皿はお金を使わずに食べ物をいっぱいにする方法でした。またいまいちな料理の味をごまかし、味を保つことができたのです」。

 サワークリームはわたしたちの常識にあるスーパーフードを再定義する。

3.ロシア人はスパイスがお嫌い

 有史以降、寒く、大多数が農民で占められた国であったせいか、ロシア人は抗菌作用を持つものとして、スパイスを必要としなかったし、持ち入れる術もなかった。辛いインド料理を食べようとして、大変な目にあったモスクワに住む外国人たちに聞いてみたらわかる。

 「テックスメックス料理を除いてが、誰もスパイシーな料理にサワークリームなんてかけない。合わないからね。サワークリームはニンニクや玉ねぎにかけた方がおいしい。ロシア料理でもそうだろう」。 ロシアに住むドイツ人グルメ(24歳)は言う。

 モスクワに住むドミトリー(23歳)はサワークリームが大好き。そんなドミトリーはこれは最悪のときの最後の手段になると言う。「家でよく外国料理をつくるけど、なかには辛いものもある。だから、念のために冷蔵庫の中にはいつもサワークリームを入れているんだ。あまり辛いときには、それで丁度よくするというわけさ」。

4.こころ温まるもの

 ソチ出身のスヴェータ曰く、「私が知ってる限り、サワークリームほど満腹感をもたらしてくれるものは少ないわ。お客様を空腹で帰さないための簡単な方法がサワークリームを出すことよ。ロシア風のおもてなしにぴったりのものだと思う」。

 統計も彼女の考えを裏付けていて、100gのサワークリームは平均して、20%の脂肪分を含んでいる。それは、寒い冬にロシア人を温めるため、胃を保護する膜として理想的なものである。それに代わるものとしては、マヨネーズがくらいしかない。

  「もちろん、マヨネーズも欠かせないものだけど、あまりにも不健康だし、サワークリームの方がいいと思うわ」。モスクワに住むナージャが言う。 即興、適応、克服―これがロシア流なのである。

5.いろいろなものに使える

 朝食に。

 ランチに。

 ディナーに。

 そしてデザートにも。