両親がソ連の子ども時代を振り返ったとき、すぐに思い出すのがおいしいデザートがたくさんあった学校内の食堂である。授業の間の休み時間にもそんなおいしいお菓子を食べたものだ。メレンゲ、ケーキ、ソーチニク、コンデンスミルクが入った筒型ワッフル、エクレアなど本当においしいお菓子がたくさんあった。しかし中でも一番興味をそそられたのがラム・ババである。砂糖のコーティングにラム味のシロップ漬けのレーズンが飾られた小さなケーキだ。
実際には、このラム・ババのレシピを考案したのはソ連のパティシエが最初ではない。フランスで人気となったものだが、元々はポーランド発祥だとされている。しかしながら、これはソ連でも一番人気のあったお菓子で、わたしの家族はこのお気に入りのお菓子を懐かしく思い出していた。
しかしそんなラム・ババがロシアに戻ってきた。モスクワやサンクトペテルブルグの複数の人気ベーカリーが、ソ連のお菓子に郷愁を抱く人々のために、ラム酒入りのこのスイーツを売り出し始めたのである。
ラム・ババはチョコレートたっぷりのコーティングがされたケーキほどおいしそうには見えないかもしれない。しかしその魅力は味にある。作るのは簡単ではない。どちらかと言えば、かなり難しいかもしれない。工程がたくさんある上、ものすごくおいしく作るには外せないポイントがある。ラム・ババはロシアのイースター・ケーキであるクリーチによく似ている。しかしラム・ババのユニークさは甘いシロップの中にラム酒の風味が感じられるところである。冒頭にも書いた通り、食べるまでに数日間待たなければならないことを覚悟して、ロシア風ラム・ババをマスターしよう。
生地の材料:
- バター 100g
- 小麦粉 270g
- 卵(小) 2個
- 水 100ml
- ドライイースト 7g
- 塩 小さじ1
- 砂糖 大さじ1
- ラム酒またはラム酒風味のシロップ 大さじ2
- レーズン 適量
シロップの材料:
- 砂糖 大さじ10
- 水 大さじ8
- ラム酒またはラム酒風味のシロップ 大さじ2
シュガーコーティングの材料:
- 砂糖 250g
- 水 80ml
- レモン汁 大さじ1
作り方:
まずレーズンを準備をする。レーズンをラム酒に浸し、レーズンがふっくらジューシーになるまで数時間置いておく。ドライイーストと砂糖をぬるま湯に入れ、10分ほど置く。大きなボウルに小麦粉をふるい、常温に戻したバター、卵、溶かしたドライイーストをすべて入れ、混ぜる。粘り気のある生地ができる。
ここからが重要な工程である。柔らかく伸びる状態になるまで生地をこねる。ドーフックのついたハンドミキサーを使うと良い。10分から15分こねたら、なめらかで艶のある生地になる。時間がかかってよければ、もちろん手でこねてもよい。
生地が出来上がったら、ボウルに入れ、ラップで覆い、暖かい場所に40分から60分置いておく。大きく膨らんでいたら、ボウルから取り出し、もう一度軽くこね、レーズンを加えて、さらに40分ほど置いておく。
その間にカップケーキ型にバターを塗る。生地が出来上がったら、50gずつのボールを12個作り、カップに入れていく。生地をカップに入れたら、20分置いておく。
オーブンに入れ、温度190~200℃で、表面に黄金色の焼き色がつくまで25分から35分焼く。
カップからケーキを取り出し、ひっくり返し、楊枝で刺し、完全に冷ます。できれば一晩置いておくとよい。
シュガーコーティングを作る。小鍋に砂糖と水を入れ、木製のスプーンでゆっくり混ぜながら火をつける。沸騰し、114~116℃になったら、素早く氷水につけた大きめのボウルに移す。レモン汁を加え、混ぜる。40℃くらいになるまで冷ましたら、白くてツヤツヤしたシルクのようになるまで泡立てる。温めすぎると結晶化するので注意すること。このシュガーコーティングは先に作っておくこともできる。冷蔵庫に入れておけば数週間は保存できる。
もう一つ大事なのが、ババを浸すシロップ作り。小鍋に水と砂糖を入れて混ぜて火にかけ、沸騰したらすぐに火から下ろす。ラム酒を加え、冷ます。
ババを飾っていく。まずケーキをラムシロップにたっぷり浸ける。全体にラムシロップがかかっていることを確認する。重さで判断すると良い。
温かいシュガーコーティングを表面にかけたら冷やす。柔らかくて、ジューシーなラム・ババは紅茶とよく合う。プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)