もしタタールやバシキールの料理を一つだけ試すことができるとすれば、ぜひベリャシをオススメしたい。平らな形の揚げたパイで中にひき肉が入っている。しかしこれは普通のパイではない。それは独特な形をしている。表面に丸い「窓」がついていて、中のひき肉が少し見えるように作られている。一般的にその昔、ロシア人は揚げ物の技術がなかったが、タタール人にはそれがあったと信じられていた。
そしてようやくロシア人が揚げ方を習得し、今、ベリャシはロシアでもっとも一般的なおやつとなった。キオスクや列車のカフェ、バス停や地下鉄の駅の売店で目にすることができる。
ロシア人なら誰でも、長い列車の旅でこのひき肉入りのパイを食べたことがあるだろう。これはベリャーシが非常に人気のあるファストフードであったソ連で生まれた者にとって、とてもノスタルジックな食べ物なのである。しかし本物のベリャシを試したければ、やはりおばあちゃんのホームメイドレシピに沿って作るのが一番だ。
わたしの家庭ではベリャシの儀式のようなものがあった。毎年、家族や友人がサマーハウスに集まる季節になると、祖母はほっぺたが落ちるほどおいしいこのパイを大量に焼いた。わたしたちは冷たいレモネードやレモンと砂糖を入れた熱い紅茶と一緒に食べた。この飲み物は塩気があってジューシーなひき肉のパイにぴったりだった。
レシピはとっても簡単そうに見えるが、パーフェクトなベリャシを作るのに欠かせない秘訣を知る必要がある。ベリャシを家庭で作るのに大事なのは、ジューシーで軽いパイに仕上げるための、絶妙な揚げ方のテクニックだ。
1. まず生地を作る。ぬるま湯にドライイーストと砂糖と混ぜる。10分ほど大きめのボウルに入れて置いておく。そこにふるった小麦粉、塩、油を混ぜ、こねる。小麦粉の種類によって、量が変わるので、量に注意すること。生地は非常に柔らかく、よくのび、少し粘着性がある方が良い。ラップをかけ、暖かい場所に1時間ほど置く。
2. 生地がふくらむ間に、ひき肉の準備をする。タマネギはみじん切りにし、ひき肉と混ぜる。ひき肉は普通、合挽きを使う(牛肉と豚肉の割合は50/50%)。塩コショウで味を整えたら、冷水を加えて、すべてを混ぜ合わせる。
3. 生地が十分にふくらんだら、もう一度優しくこね、小さい丸い球を作っていく。小さくまとめた生地がもう少しふくらむまで20分ほど置く。ペストリーボードに小麦粉で軽く打ち粉をし、まとめた生地を一つずつ伸ばしていく。生地の端に余白を作りながら、計量スプーンを使ってひき肉を乗せていく。
4. ベリャシを閉じる。一番難しい工程である。端をつまんでひき肉を包んでいくのだが、真ん中に小さな「窓」を作る。調理をしている途中でひき肉の肉汁が逃げ出さないよう、「窓」は小さくする。
5. ベリャシの形を整えたら、ふきんかキッチンペーパーで覆い、30分ほど置いておく。
6. 大きめのフライパンかフライヤーを使い、ベリャシが半分浸かるくらいたっぷりの油を使って揚げる。油を温め、弱目の中火で揚げていく。「窓」がついた面を下にして揚げ始める。黄金色の焼き色がついてきたら裏返す。
7. 「窓」から肉汁が出てくるまで裏側も揚げる。肉汁が出てきたら、中のひき肉に完全に火が通り、ベリャシが出来上がったということである。お皿に置き、ペーパータオルをかぶせて余分な油を吸わせる。これで温かいベリャシの完成。甘いレモンティーか冷たいレモネードを一緒にいただく。
プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)
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