76品目のロシアの食品が、オンラインカタログ「味の箱舟」が独自に作成した「食のレッドリスト」に認定されている。「味の箱舟」は、環境にやさしいにもかかわらず消滅しそうな食品を世界中から5千種類も選出している。しかし、それらの一部は絶滅の危機にある。
古代ルーシでは、復活祭直前の聖木曜日に、クリーチと呼ばれるパンとエッグと一緒に、ブラックソルトを用意していた。ブラックソルトは岩塩から作られ、クワスの澱か黒パン、キャベツの葉、ハーブを加える。これらをすべてひとつの袋に入れたら、高温のかまどで焼き、火を消した後も、かまどに入れたままで数時間置いておく。食べ物に使うためには、できた結晶を挽かなければならない。
バイカル湖のオームリは、ウスリーシロザケの一種の非常に珍しい魚で、基本的に、バイカル湖とそこに注ぎ込む川に生息している。平均的なものは一匹500㌘ほどだが、なかには7㎏近いものもある。
塩漬けや燻製のオームリは、バイカル湖を訪れる観光客らにもっとも人気の土産品のひとつだ。オームリの柔らかなフィレはそれほど脂がのっていないので、ジューシーな肉を好む人には、うす塩のオームリがおススメだ。
ユトゥは、ロシアの最北の地に暮らす少数民族ネネツ人たちの伝統的な料理だ。ユトゥは、チョウザメやカマス、オームリのようないろいろな種類のウスリーシロザケから作る。
魚を薄切りにして天日干しにする。その後、屋外か専用の器機を使って燻す。ユトゥは、薄い塩味の燻製のような味がする。
トゥヴァ共和国では、約250世帯が、牧畜を営みヤクを育てている。ヤクの乳は牛乳よりも脂肪分が多く、そのため、味は牛乳よりもまろやかだ。トゥヴァでは、ヤクの乳から、ブィシュタカ(全乳のチーズ)、アアルジュイ(酸乳のカッテージチーズ)、クルタ(カッテージチーズ)といった様々な乳製品を作っている。
ヤクやシカの燻製肉は、長いこと、地方の先住民族たちにとって肉を保存する基本的な方法だった。味は脂のない牛肉に似ているが、調理はかなり楽だ。肉は前もってスライスし、塩、砂糖、胡椒を振って、ニンニクを擦りこんで、6時間から24時間かけて燻してある。
今日のアルタイでは、このような半加工品の製造は、かなり少なくなっており、年間1トンにも満たない。これは、動物の個体数が減少したことや、人々の生活様式の変化に起因している。
これは、18世紀にモスクワの近くにあるコロメンスコエ村で栽培されていた白キャベツのことだ。後には、ロシアのヨーロッパ地域で広く栽培されるようになった。重さが16㎏近くある非常に大きな結球は、かなり柔らかく、そのため、長期保存には向いていない。このキャベツの味は、とりわけ中のほうの葉は、とても柔らかくて甘味がある。塩漬けや酢漬けには最適だ。
ロシアの黒豆は、古代ルーシで古くから栽培されていた豆を元にレニングラード州で栽培されていた。この黒豆は、世界に似た品種がない――厳しい寒さに耐え、病気にも強く、極圏近くでも育つことができる。ロシアの黒豆は、ほとんど砂糖に近いほどの甘味があり、蒸したものや茹でたもの、炒めたり、缶詰のものが、スープやメインディッシュに用いられている。
モスというのは、赤と白の甘いゼリーで、いろいろな種類があり、干した魚やアザラシの脂肪、茹でたユリ根、様々なベリー類から作られる。これは、サハリンに住む少数民族「ニブフ」の伝統的なデザートだ。作ったら凍らせておくと保存が利き、体に良い成分も保たれる。
モスを食べることができるのは、熊祭りのときのここでだけだ。調理法は秘密にされており、親の世代から次の世代へと伝授されている。
お茶が入ってくるまでは、蜜湯はロシアで唯一の温かい飲み物だった。蜜湯が初めて文献に登場するのは、1128年の年代記。蜜湯は、水と蜂蜜(必ずここで採れたもの)、様々な香辛料――シナモン、カルダモン、ショウガ、ローリエ、チョウジ、黒スグリの葉から作られる。
マンタクというのは、クジラの皮と脂肪のことだ。この伝統的なチュクチ料理は買うことはできない。これを食べることができるのは、地元の人たちだけ。というのも、国際条約によって、クジラ猟が許可されているのはチュクチ人とエスキモーたちだけで、しかも、制限された頭数を私的に消費する分のみとなっているからだ。
細かく刻んだマンタクは、生のままや、茹でたり、酢漬けにしたり、燻製にしたりして前菜として食べる。また、スープに入れたり、メインディッシュに添えて食べることもある。マンタクの味は、キノコを添えたサーロ(豚の脂肪の塩漬け)に似ている。この地の人たちにとっては、文明化される以前には、たんぱく質や脂肪やミネラルの供給源だった。
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