本物のロシア式黒パンを自宅で焼くには

ロシア料理
アンナ・ソロキナ
 皮がサクっとしたおいしい丸パンを味わってみないか? ライ麦粉は不要。でも、秘密の食材がひとつある――チェリョームハ(エゾノウワミズザクラ)の実を粉にしたものだ。

 ロシアの店のパン売り場に初めて行ったときに、今まで見たことがないほどたくさんの種類のパンやペストリーがあって驚いたかもしれない。パンは日本のものよりも堅くて甘みはなく、賞味期限はほんの2、3日。通常、ロシアの全粒粉やライ麦のパンには、小麦粉、塩、ときどき砂糖が入ることもあり、イーストかやスタータ、油かバター、そして水を入れる。 レシピによっては、ナッツやドライフルーツ、卵、牛乳を入れることもある。

 さらに興味深いのは、ロシアでは、ライ麦で作られたいわゆる「黒パン」が、「白い」全粒粉パンよりも人気があるということ。パンの種類が豊富じゃない小さな店でも、全粒粉パンよりもライ麦パンの方が種類が多いところがほとんど。事実、色の濃いパンも全粒粉で作られているものの、ライ麦やその他の種類の小麦粉がミックスされている。ロシア人たちは、自分のオリジナルの黒パンがとても好きなので、ヒマワリやカボチャの種とか、ドライプラム、コリアンダー、チェリョームハ粉など、さまざまな食材を使用してパンを作っている。

なぜロシア人たちは黒パンのほうを好むのか

 まだ一度もロシアの黒パンを食したことがなければ、最初はちょっと酸っぱく感じるかもしれない。でも、なぜロシアでは、他の多くの場所に比べ、人々が黒いパンをよく食べるのかについては説明がある。ロシアでは、黒パンのほうが健康によく、重い気分にさせずにお腹を満たしてくれると考えられているからだ。パンのサクっとした皮は、ビタミンB1が豊富で、ライ麦粉はコレステロールを減少させ、血糖値を下げてくれる。

 イーストやスタータを使った伝統的なライ麦パンは、おそらく18世紀末までは、もっとも明確なロシア料理の要素だった。それは、農民と貴族双方の食卓にあり、食事のたびに出されていた。全粒粉パンは、19世紀半ばに人気となったにすぎない。

 現在、ロシアのベーカリーは、多くの種類のライ麦パンを作っている。最も一般的なものは、ダルニツキー(コリアンダーをまぶしたパン)、ボロジンスキー(ボロジノの戦いに因んだもの)、ストリーチヌイ(丸くて甘酸っぱいパン)だ。

 違うタイプのパンについてもっと読みたければこちらを。

自宅でパンを焼くのは大変?

 多くの家庭が伝統的なレシピを使ってオリジナルのパンを焼いていた。今でも、近くの店でパンを買うのは簡単だけれど、ロシア人の中には、自分のルーツに戻って、自宅でパンを作ることを好む人もいる。そして、あなたもチャレンジできる! ライ麦粉がなくても、本物のロシア式の黒パンを焼いてみたいのなら、生地にチェリョームハの粉を加えてみよう。

 パン焼き器は生地を手早く作るのには役立つが、実際には必要ない。多くの人は、生地を作るのに何時間もかかると思っているが、実際は、材料を5〜10分混ぜ合わせ、その後、しばらくの間、生地を寝かせる必要があるだけだ。寝かせるのは1、2時間でいいというレシピもあれば、一晩寝かせなければならないというレシピもある。

 その後、生地をこねてしかるべき形に整える。パン生地はあまり長いことこねすぎてはならない、ほんの数回でOK。でないと焼き上がりがあまりふっくらしない。専用のトレイかシートに載せて焼こう。古典的なレシピはかなりシンプルなもので、いつもキッチンに常備している非常にシンプルな材料でできる。この「黒い」パンは、チェリョームハの粉(実際は乾燥して挽いた果実)を加えて普通の全粒粉で作る。チェリョームハの粉は、アーモンドエッセンスとサクランボの種に似た心地よい香りをパンに与えてくれる。このレシピで作ったパンが客人を驚かせる理由はここにある。

チェリョームハ粉パン

材料:

作り方:

 全粒粉にドライイーストを加えて混ぜる。

 200mlの熱湯をチェリョームハ粉に注ぐ。塩と砂糖を加える。よく混ぜてから少し冷ます。

 チェリョームハ粉が少し冷めたら、全粒粉の入ったボールに入れる。ぬるま湯180mlとオイルを加え、生地に粘りが出るまで混ぜる。油を塗ったボールに移し、ラップでしっかりと覆って、暖かい場所に1時間半ほど置いておく。温かいお湯の入った盥の中にボールを入れ、お風呂場に置いておけばいい。40分経ったら揉んでチェックしよう。

 1時間半経ったら、パン型に成型する(伝統的には、シンプルな丸パン)。タオルをかぶせて、発酵するまでさらに40分間休ませる。

 オーブンを200度に加熱する。オーブンの最下段に水の入ったボールを置き、ベーキングシートに載せてパンを10分間焼く。その後、ボールを取りだし、温度を185度に下げて、30-40分焼く(オーブンによって調整する)。

 パンが焼けたら、すのこの上で冷まそう。焼きたてのパンの魅力的な香りは我慢できない!

 プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)