ソ連の幼稚園、伝説の5つのメニュー

ソ連の幼稚園、1989年

ソ連の幼稚園、1989年

エンデル・タルクペア/TASS
 どうして今、ロシアの子どもたちは、ソ連時代と同じメニューを食べさせられているの?

 ソ連には欠点もあったが、成し遂げたこととして、子どもの死亡や病気に対し、極めて真剣にアプローチしていたことを挙げないわけにはいかない。ソビエト時代に作り上げられた未就学児のための食のシステムは、かなり考え抜かれたバランスのとれたもので、その多くが今も現代的な幼稚園で用いられている。

 ソ連を混乱と飢えが支配していた国内戦の後、ソ連政府は、子ども用の公共給食すべてを管理下に置くことを決定した。子どものための諸機関の主要なモットーとなったのが、あの有名な「よりよい物はすべて子どもたちへ!」という文言だ。すでに1918年には、「子どもの栄養強化について」の法令が採択されていた。これが意味するところは、就学児童や幼稚園児たちの親が支払うのは、食費のほんの一部のみであり、また、貧困家庭や子沢山の家庭の子どもたちは、無料で給食を食べることができるということだ。

 次の課題となったのは、小さな子どもがしっかりと成長できるような、十分な栄養価のある子ども向けメニューを考案することだった。ソ連の幼稚園の模範的なメニューは、ソ連保健省母子予防治療支援主局によって作成された。

 後になると、『美味しくて健康に良い食べ物の本』からの推奨によってメニューが作られていた。つまり、この本の中から、脂分の多いものや辛いもの、香辛料の利いたもの、油分の多いものを除いたメニューが選ばれたのである。その結果、作られたメニューは、多民族的で、様々な民族の料理から成っていた。

 このように、1970年代までの幼稚園では、子どもたちは家庭よりも良い食事を与えられていたと言うことができる。子どもたちは、出された料理を喜んで完食し、おかわりしたがったほどで、おかわりを欲しがったら断ってはいけないことになっていた。

 70年代には、栄養失調がついに克服され、家庭の経済的な豊かさも増し始めて、新たな食品も登場するようになった。そのため、家庭での食事も、多くの人たちにとっては、以前より美味しく多様なものになってきたと感じられるようになる。この時から、幼稚園の給食に対する子どもたちの態度が変わり始めたのである。体に良く、同じメニューが繰り返される幼稚園での食事は、かつてのような人気を得なくなってしまった。

 それでも、ソ連の幼稚園のメニューは本質的なものだったので、アクチュアリティーを失うことなく、その伝説的な料理は、現代のロシアの幼稚園の食堂でも提供されているのである。

1. セモリナのカーシャ(粥)

 幼稚園で今もいちばん普及している朝食は、ミルク粥(カーシャ)だ。カーシャは、カラス麦や蕎麦の実、小麦、オートミールで作られていた。でも、今なおいちばん心ときめくのは、セモリナのカーシャだ。それは、たぶん、このカーシャが、冷めるとすぐに硬くなって、びくともしない板のようになってしまい、皿をひっくり返しても落ちなくなってしまうからだろう。それゆえに、このカーシャは、「宇宙のカーシャ」と呼ばれていた。さらに、あまり注意せずに炊くと、いわゆる「だま」ができる。子どもたちはこれをひどく嫌うか、あるいは逆に、大好きでひとつずつ取っていったりしていた。

2. オムレツ

 もっと人気のある朝食は、鶏卵で作った子ども用のふわふわオムレツだ。ソ連時代は、蒸しキャベツを添えて出されていたが、今日では、缶詰のグリンピースがつくことが多い。オムレツは、子どもたちの間では、まず間違いのない人気があり、稀な例外を除けば、すべての子どもたちに愛されていたし、今も愛されている。

3. 子ども用グリャーシ

 幼稚園のグリャーシは、有名なハンガリー料理とは本質的に異なっている。本場ハンガリーのグリャーシは、とても辛いし脂っぽいが、子ども用のものは非常に体に良い。子ども用グリャーシには、ニンニクも胡椒も香草も入れなかった。ハンガリーのグリャーシでは伝統的に豚肉が用いられるが、子ども向けの場合は、豚肉の代わりに脂身の少ない牛肉を使った。付け合わせには、塩気のないマカロニやじゃがいものピューレ、あるいはお米が添えられた。幼稚園で塩分を加えないようにと、食餌療法の専門家が勧告していた。付け合わせを、肉やソースと混ぜて食べれば、このメインディシュはよりいっそう美味しくなる。グリャーシはどうしても嫌いだという子どもたちもいたことはいたけれども。普通、そういう人たちは、付け合わせだけを全部食べて、肉はこっそりと、先生が見ていない時に、隣の席の大食いの子にあげていた。

4. えんどう豆のスープ

 えんどう豆のスープがメニューに登場したのは、国が、保育施設の給食費用を削減し始めた80年代になってからのことだ。このスープは、体に良く、満腹感のある植物性たんぱく質を含んでおり、部分的に、値段の高い肉の代用とされたのだ。えんどう豆のスープが、好きであれ嫌いであれ、子ども用の魚スープよりもはるかに美味しいことには、誰も異論はないだろう。えんどう豆のスープのいちばんの特典のひとつは、セットでついてくる白パンのラスクだ。一部の子どもたち、とりわけ、元気な男の子たちは、それをズボンのポケットの中に隠し、昼寝の時に食べるようとっておいたものだ。

5. カッテージチーズのザペカンカ

 カッテージチーズのザペカンカは、9時間保育の午後の軽食や、お泊り保育の夕食に出されていた。高カロリーでお腹いっぱいになるようにと、この料理は、コンデンスミルクかサワークリームをかけて出すよう推奨されていた。料理人たちは、惜しむことなく、たっぷりとコンデンスミルクをかけてあげていた。こんなにたくさんコンデンスミルクをかければ、何だって平らげることができるよ!

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