狩猟や漁というものは、シベリアっ子にとって現在まで続くおそらく最も古い娯楽であろう。そこで地元の珍味といえば野生の肉や魚をタイガのスパイスやベリーやキノコと組み合わせたものがほとんどである。その中でもこの地方を訪れたならぜひ試していただきたい料理をご紹介しよう。
1.シベリア風狩猟肉
このジビエ料理は、野生の肉を細長く切り、塩をふり、串に通し、煙に燻されるように炭のそばの地面に突き刺して焼いたものである。この料理の特徴はラムソンとワラビで出来たタイガのスパイス。シベリア風狩猟肉は蒸したじゃがいもとツルコケモモやコケモモなど北方のベリーの付け合わせと一緒にいただく。
2.鹿肉
鹿肉は煮て、焼いて、蒸して、乾燥させて食べる。レストランではスープとしても、メインとしても、前菜としても食べられている。鹿肉のステーキのコケモモソース添えをお勧めしたい。鹿肉は繊維を断ち切るように切り、叩いて薄くし、ブラックペッパーとジュニパーベリーをふりかけ、グリルで焼く。お皿に盛りつけ、コケモモのソースをかける。付け合わせにはキノコや松の実もよく合う。
3.シベリアのペリメニ
本物のシベリアのペリメニは必ず種類の異なる肉を詰めて作る。昔ながらのレシピでは牛肉と豚肉以外にウサギやクマの肉を一緒にひき肉にした。そのもっと前にはよりジューシーにするために小さく砕いた氷を加えていた。
現在の作り方は次のようなものである。同量の豚肉、牛肉、狩猟肉、それに豚の脂身の塩漬けを短時間冷凍し、玉ねぎとニンニクと一緒にできるだけ細かく刻み、よく混ぜる。出来上がったひき肉に塩コショウで味付けし、牛乳を加えたら、小さなペリメニにしていく。レストランでは、骨から取ったブイヨンにレバーを加えたものを壺に入れ、そこにペリメニを入れて出される。
4.バイカルの幻の魚オームリ
オームリも鹿肉と同様、塩漬け、燻製、煮て、焼いて、とさまざまな方法で調理される。もっとも一般的なレシピは串ざしのオームリ。このレシピではオームリの身に背骨から腹にかけて3–4ケ所の切り込みを入れ、表面に塩をもみ込む。それから頭を下にして木の串に刺し、上下を炭で覆うような形で差し、満遍なく火が当たるように回しながら焼く。
オームリは内臓を取り除いた状態で、またそのままの状態で塩漬けにもする。ウォトカに合う理想的なつまみであるとされている。また観光客のお土産には冷燻のオームリがオススメ。
5.生魚の珍味:ザグタイ、ラスコロトカ
シベリア料理には加熱しない魚料理がある。ストロガニナにも似たこの料理は冷凍した魚(または肉)の塊を薄く削り、たっぷりの塩とスパイス、玉ねぎ、酢で濃く味付けして作る。
ザグタイという料理もストロガニナに似ている。ザグタイはオームリまたはウスリーシロザケといった魚のフィレを小さく切って作る。魚の切り身を20分ほど塩水(水1リットルに塩1カップ)に浸けておき、それをビンに移す。魚の層、玉ねぎと黒コショウの層を作り、植物油を加えながら交互に敷き詰めていく。ザグタイは調理したあとすぐに食べることもできるが、冷蔵庫で保存することもできる。加える植物油にはスパイスやマヨネーズ、マスタードなどを加えることもある。
もうひとつの珍しい料理はラスコロトカというもの。たとえばウスリーシロザケを固くなるまで冷凍し、金槌で叩いて細かくする。皮を取り除いてから、塩と黒コショウを混ぜたものにつけていただく。
6.グルジンチキ
グルジンチキとは魚のロール巻きである。ペリメニの皮のような生地を作り、それを薄く伸ばして、その上に塩と玉ねぎと一緒に炒めた魚のすり身を乗せ、それをロール状に巻いていく。ロール状のものを輪切りにして焼き、溶かしたバターをかけていただく。
7.ピローグ
シベリアではさまざまな具が入った50種類以上のピローグが焼かれている。その具は魚、ベリー、肉、野菜、カッテージチーズ、キャベツ、卵、ウワミズザクラなどである。基本的には他の多くの国と同じような具であるが、この地域にしかない本当に珍しいピローグは魚の脂入りピローグである。
魚の脂は、魚の切り身を少量の水を入れた大鍋で煮て抽出する。その脂を生地にのせてまとめてピローグを作った。古儀式派の村々では今もこのピローグを食べることができる。
それよりもよく目にすることができるのがシャンギである。上部の空いた具入りのピロシキである。具にはジャガイモ、野菜、カッテージチーズ、ウワミズザクラなどが使われる。端をつまんで閉じたピローグは“ズギブニ”と呼ばれる。
8.ゴローシニツァ
ゴローシニツァはアンガラ川に生息する赤身の魚の脂身で作る。乾燥したえんどう豆を挽いて小麦粉に混ぜ、熱湯で茹で、そのまま熱いお湯に浸しておく。出来上がったら冷やして、薄い四角い板状の形に切り、魚の脂をかけていただく。
9.キセーリ「ブルドゥーク」
パンの生地を作るときにその一部を残しておき、水を加えてよく混ぜ、生地が沈殿するまで置いておく。上澄みを捨て、これを2回繰り返す。それから沈殿したものに熱湯か沸騰した牛乳を加えれば濃厚でおいしいキセーリ(葛湯のようなもの)「ブルドゥーク」の出来上がり。