1.スモクヴァ
ロシアのお菓子スモクヴァはほぼ忘れ去られてしまったものだが、ウラルのいくつかの村では今も目にすることができる。スモクヴァというのはパスチラの一種である。オーブンでじっくり焼いた酸味のあるリンゴでも作られるが、リンゴのピュレーはホイップされておらず、ハチミツとベリー(一般的にはクロフサスグリかクランベリー)と一緒に煮ただけのものである。スモクヴァはドライフルーツのゼリーのような味のものだ。ちなみにスモクヴァはイチジクの別名でもある。
2.ベリーのピローグ
ウラルでもっとも有名なパイであるシャンギはジャガイモの生地でできたオープンパイ。ウラルの人々は甘いケーキを焼くときにはたいてい北方のベリーを使う。ウラルのおいしいピローグはクランベリー、クラウドベリー、ナナカマドなどで作られている。
3.パレンキ
ウラルの人々は古代から柑橘ピールの作り方を知っていた。パレンキ(「蒸す」を意味するロシア語”parit'”からきている)のレシピは母から娘へと受け継がれ、こんにちまで生きている。
パレンキはニンジン、ビーツ、カブ、ルタバガ、ラディッシュ、カボチャといった根菜をペチカで焼いて作られていた。まず根菜を大きめに切って、粘土の器に少量の水と一緒に入れて生煮え程度まで蒸す。それから天板にのせて、ロシアのペチカに入れ、少し乾燥させる。これらの野菜は糖分を多く含むので、パレンキはとても甘く、キャラメル化することもあるほどだ。パレンキは村ではキャンディの代替品であり、子どもたちが外で食べるお気に入りのお菓子でもあった。現在は普通のオーブンで作られている。
4.ドライベリー
焼き菓子とは別にウラル地方の主婦たちはデザートをもっと簡単につくる。北方のベリーの乾燥させるのだ。まず、ベリーを日光で干し、天板の上にのせてオーブンで乾燥させる。ウラル地方のもっとも親しまれているベリーはサービスベリーで、ロシア語でイルガと呼ばれている。ウラルではこれでジャムや餡をつくる。でも乾燥させたイグラはとてもおいしく、「北国の干しぶどう」とさえ呼ばれている。
5.ラズボルニク
コミ・ペルミャーク族の伝統的なパイで、ラズボルニク(ロシア語の「選び取る」から来ている)は丸いパイがいくつも繋がっていて中に餡が詰まっている。餡はカラメルだったり、砂糖菓子だったり、ジャムだったりする。ラズボルニクはウラル地方では祝祭のテーブルに並ぶご馳走である。
6. クングルのジンジャークッキー
プリャーニクはロシアの伝統的なスパイスケーキで、その始まりはタタール人に征服されていた時代にさかのぼる。そしてバラライカやサモワールと同じように、ロシアを象徴するものとして有名である。ロシアではそれぞれの地域で独自のジンジャークッキーのレシピがあり、ウラルや北方ロシアではコズリを焼く。これは親しまれていた動物をかたどった結婚式用のジンジャークッキーである。
2000年の初めにクングルというペルミ州の小さな町で、かつて焼き菓子工房をつくったヴャゾフ家のレシピから再現したジンジャークッキーをある家族が作り始めた。彼らは自家製の焼き型と自然食材しか使わない。どのジンジャークッキーにも意味があり、自家製のジャムが入っている。その家族はしばしばマスタークラスを開いて、ジンジャークッキーの焼きかたを教えている。
7.ペルミキャンディ
ウラルとシベリアで19世紀に開業したもっとも古いお菓子工場が今も製造する人気のキャンディ。とりわけペルミの工場はチョコレート、ソフトヌガー、ゼリー、ワッフルキャンディ、マシュマロ、ダイエット用スイーツで有名である。地元の人々に愛されるキャンディで、ツーリストたちが必ず持ち帰る一品だ。