ロシアの諸地方から、とってもおいしい至福のお菓子をお届け

ロシア料理
ヴィクトリア・ドレイ
 この国のお菓子の本当の味を知りたければ、アイスクリームや“アリョンカ”チョコレート以外のものに目を向ける必要がある。地方へ向かおう! それぞれの地方にそれぞれの名品がある。

ヴォルガ地方

 この地域はポマトカ(pomadka;ロシアにおけるファッジの一種)の生産で有名だ。ポマトカはソヴィエト時代、そのクリーミーな味わいと作りやすさのために大変な人気を誇った。ポマトカの材料はバターと牛乳、そして砂糖だけ。この至福の一品は今日でも人気がありヴォルガ地方を訪れる旅行者はお土産に買って行く。しかしながら、地元の人々は近年ポマトカの味が落ちていると指摘する。とはいえ、このお菓子は今なおこの地方の美食のシンボルだ。

 

サンクトペテルブルグとレニングラード州

 サンクトペテルブルグで出会える、特にノスタルジックなお菓子の一つはポリャルヌイ(polyarny“北極の”)ワッフルケーキである。私の祖母は学生時代これがものすごく好きだったと言う。彼女はポリャルヌイ・ケーキが売られていない街に住んでいたが、このお菓子の大ファンだったので、いつも誰かに、サンクトペテルブルグ(当時はレニングラード)で買って来て、と頼んでいた。

 このケーキは非常に際立ったアイスクリーム風味だ。バタークリームに覆われた何層ものワッフル生地でできている。このケーキはレニングラード州で生産されていて、ロシアの中でも一握りの街でしか売られていない。ですので、もしこれに出会ったら、少なくとも2つは買うようにしてください。

 

シベリア

 真のシベリアの精神が知りたい? 松ぼっくりヴァレニエ(cone varenye)と呼ばれるロシアのジャムをお試しあれ。本物の杉や松、モミの球果から作ったシベリアの伝統的なスイーツだ。仮にこの説明に興味を引かれないとしても、拒絶せずにとにかくお試しください。絶対に気に入るよ!

 もう一つのシベリアの名産品はオミチカ(omichka)だ。これは1971年にオムスクの工場によって初めて作られ、たちまち国中で人気になった。このデザートは甘いバタークリームとしょっぱいプロセスチーズのハイブリッドだ。かなり変わった一品だが、きっと試す価値はある。

 

トゥーラ州

 トゥーラのプリャニク(pryanik)はロシアの国民的シンボルと言ってよいスイーツだ。今日では国中どこでも買うことができるが、正真正銘の一品はトゥーラ州にしかない。ここではプリャニクは今でも伝統的な方法で作られている。甘い蜂蜜かペイストリー、フルーツ、ベリー、またはコンデンスミルクを詰めた、とてもユニークな至福の一品だ。さらに嬉しいことに、今日ではプリャニクはお土産用のお菓子として生産されている。

 

コーカサス 

 コーカサスはフルーツやナッツが豊富で、そのためこの地域ではチュルチヘラ(churchkhela)など、自然の食材を使った健康的なデザートが有名だ。チュルチヘラはジョージアのキャンディーと思われているが、コーカサスの人々はこれを取り入れて独自の地域名物に作り変えた。ですのでどの市場でもチュルチヘラを見ることができる。チュルチヘラはナッツ、小麦粉、グレープジュースでできていて、とても濃厚な味をしている。チョコレートやキャンディーの代わりにどうぞ。

 

コロムナ(モスクワ州)

 モスクワ州にあるこの小さな街は、ある固有のスイーツのためにロシア中で有名だ。そのスイーツとはコロメンスカヤ・パスチラ(Kolomenskaya pastila)。パスチラはロシアの伝統的なデザートで、材料はただ一つ、リンゴだけだ。コロメンスカヤ・パスチラは本来のものとは異なり、砂糖や白身を含んでいる。また、もろい食感も特徴の一つだ。この種のパスチラの最初の記録は18世紀に遡る。

 

ヴォログダ

 ヴォログダはロシアにおけるいわゆる乳製品の首都で、そのためここでは高品質の乳製品がたくさん作られている。その中で一番おいしいのはたぶんチョコレートバターだろう。一見特に変わったところはなく、所詮はカカオとバターを混ぜただけのものに思えるが、ご辛抱を。すべてはトーストやスコーンに載せて味わってみてのお楽しみだ。

 

カムチャッカ

 ガンコウラン(crowberry)ってご存知? ロシア極東はこの馴染みのないフルーツで有名なのだ。さらに、地元の人々はこれでヴァレニエ(ジャム)を作る。味は独特で、少し渋みがあるが、濃厚な味わいだ。カムチャッカには自慢のスイーツは多くないだが、ガンコウラン・ヴァレニエはこの地域の本当の名物だ。