なぜロシアのレストランはミシュランガイドに入ってないの?

「カフェ・プーシキン」
 レストランに静かな音楽が流れ、客が楽しい夜を過ごしている。と、そのうちの1人だけが、メニューを慎重に調べ、細心の注意を払ってレストランを点検し、メモをとっている。あるシェフにとっては、それは悪夢だが、他のシェフには待望の夢の実現だ。だが、ロシアのシェフにとってはあり得ない夢。なぜミシュランガイドの専門家は、ロシアのレストランを訪れないのだろうか?

あくまでガイドブック。ランキングにあらず

 まずは、良いニュースから始めよう。ロシアは、そのレストランがミシュランガイドに含まれていない唯一の国ではない。このガイドは、世界の30カ国未満の国をカバーしているにすぎず、東ヨーロッパのほとんどが無視されている。ようやく最近、アメリカと日本が追加されたばかりだ。

 ミシュランガイドは、フランスのミシュラン社から出版される各種ガイドブックの総称で、とくに名高いのが、レストランの評価を星の数で示すレストラン・ホテルガイドだ。

 しかし、そもそもの初めは、アンドレとエドゥアールのミシュラン兄弟が作成した、このガイドは、タイヤの修理、自動車整備、ガソリンスタンド、フランス全土のホテル一覧など、運転手にとって有益な情報を提供していたにすぎない。

 その後、ベルギーおよび周辺諸国をカバーするようになった。要するに、かつては、外国に出かけるフランス人のためのガイドブックだったわけだ。あくまでも運転手のためのハンドブックというのが、あれこれの国およびそのレストランを記載するに際しての主な基準だった。

 「だから、ミシュランガイドの主なテーマは、道路と観光ということになる。いつの日か、ロシアの道路(モスクワだけでなくロシアの)がまともになり、外国人観光客が重要な収入源になれば、そのときは、このガイドは我々にも目を向けてくれるだろう」。モスクワのレストラン「AQ Kitchen」のブランドシェフ、アドリアン・ケトグラスさんはこう語る。

 各国のガイドブック全般の動向について言えば、主要な出版社のすべてが、少なくともモスクワ、サンクトペテルブルク、モスクワ周辺の古都群「黄金の環」などに関して、ロシア観連書籍を出している。

 「サンクトペテルブルクは、観光地としては最高の場所の1つだから、他の地域もこれに引っ張られるかもしれない。2~3種の国際的なレストランガイドが、ロシアを扱う予定だと発表している。ミシュランも間もなくそうなることを願っている」。レストラン評論家のボリスさんはこう述べる。彼は匿名でレストランの評論を書いている、ロシア唯一の人物。

 

ロシアのレストランには何が足りないか? 

 それにしてもなぜ、モスクワやサンクトペテルブルクのトレンディなレストランは、いまだにミシュランガイドに収録されないのだろうか。そういうレストランは、“雨後のキノコのように”(日本語の表現なら「雨後の筍のように」となるが)、次々にオープンしているというのに。

 ミシュランガイドは、コンセプトがやや保守的で、その点がしばしば批判される。 ライバルのレストランガイド「ゴー・ミヨ」は今年11月、モスクワに関する最初の本を出した。その著者たちによると、「ゴー・ミヨ」が新顔に注目するとすれば、ミシュランガイドはシェフの才能を確かめるという。

 だから、ミシュランに載せてもらうには、成功だけでなく安定性も求められる。レストランの年間通しての、さらに10年、20年にわたる品質が期待されるわけだ。ところが、ほとんどのロシア・レストランは、シェフとコンセプトの両方をあまりにも頻繁に変える。


ミシュランの専門家はロシアのどこに来るか?

 「ミシュランガイドでは、ロシア市場はまだ準備が整っていないと考えてきたが、最近、見解が変わったようだ」。ナタリア・マルゾエワさんはこう言う。彼女は、「ロシア・フランス料理の季節」社のディレクターで、定期的にロシアのシェフをフランスに招待している。

 ミシュランが注目する可能性のあるロシア・レストランとしてナタリアさんが挙げるのは、「Savva」(シェフはアンドレイ・シマコフ)、「Twins Garden」(同ベレズツキー兄弟)、「The White Rabbit」(同ウラジーミル・ウーヒン)。

 「ミシュランの有名な星をつけてもらえる可能性のあるレストランは、約20軒はあると思うが、残念なことに、その多くはビストロスタイルになっている。ほとんどの店は、高級レストランとしては経営できない。その理由ははっきりしている。資金面の問題だけでなく、社会主義時代の1920年代~1980年代の外食産業の歴史、そしてその後の現代史に関係している。しかし私は、国際ガイドブック、とくにミシュランが来れば、ロシアの食文化の発展を刺激すると思う」。ナタリアさんはこう続けた。

 ウラジーミル・ムーヒンさんは、「The White Rabbit」のシェフ。この店は、世界のレストランTOP50のランキングで23位にランクされている。ムーヒンさんもまた、現代ロシアの食文化の発展については楽観的だ。「ロシア食文化は上昇傾向にある。私の意見では、アジアとスカンジナビアに続く、次の世界料理のトレンドになるチャンスは十分だ。ユニークな製品と独自の調理技術があるから」


ミシュランガイドのロシア人の名前

 公平を期すために、ロシア人の名前がミシュランガイドに載っていることを付記しておく。ただし、ロシア国外のレストランだが。ジュネーブのレストラン「Green」(シェフはアナトリー・コム)、マンハッタンの「Betony」(アンドレイ・デロス)がそれ。

 ミシュランの星を持つロシア唯一のレストランは、ロシアの人気の連ドラ「クーフニャ」(キッチン)に出てきたものだけだ。つまりフィクションで、脚本家の心のなかにしか存在しないが、連ドラは6シーズン続いた。このモスクワのレストランは「ヴィクトル」といい、フランス料理を提供していたので、フランスのドライバーも楽しめるだろう。

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