ヴァレニエ(果実煮)はジャムの一種で、ロシアの古い言葉で「煮た甘味」を意味する。煮た後でも果実がそのまま残っているのが特徴。これは季節の食べ物で、ベリーなどの果物をダーチャ(別荘)で採取する晩夏から中秋にかけて、つくる。 できあがったヴァレニエは通常、冬まで保存する。
人気が高いのは、ラズベリー、クロスグリ、イチゴ、チェリー、チョークベリー、アプリコット、プラム、リンゴのヴァレニエ。ズッキーニやニンジンからつくることもある。そして特有の人気ヴァレニエというのもある。
ロシア極東、サルナシのヴァレニエ
サルナシという果物を知っているだろうか。キウイに近い果物で、切ってみるとそれがよくわかる。ビタミンCが豊富で、そのまま食べても、ジャムにしてもおいしい。ロシア極東で広く生育している。
つくりかた:
サルナシと砂糖を1:1の割合で用意する。サルナシを洗う。鍋に砂糖と水を入れ(砂糖1キロに対して水1カップ)て火で温める。サルナシを加える。3~6時間そのまま置いておく。次に煮て、冷まし、また煮て冷ます。できあがるまでこれをくり返す。
コーカサス、マツボックリのヴァレニエ
マツボックリ(マツの球果)、スギの球果、またはモミの球果の香り豊かなおいしいヴァレニエは、伝統的なコーカサスとシベリアの甘味であり、一部の病気の優れた治療薬である。食感からマツの蜂蜜と呼ばれることもある。材料は若い緑色の球果。コーカサス地方では5月、シベリアでは6月に採取する。球果は爪で簡単に穴を開けられるほどやわらかく、長さが1~3センチのものが適当。
つくりかた:
1リットルのヴァレニエをつくるのに、500グラムの球果(20~30個)が必要。若い芽を使うこともできる。
球果と砂糖を1:1の割合で用意する。お湯で丁寧に球果を洗い、ステンレス・スチール製の鍋に入れる。樹脂を多く含むため、ホーロー鍋だと煮る際に鍋を傷める可能性がある。水と砂糖を加えて沸騰させる。次に室温まで冷ます。球果が茶色になってやわらかくなるまで、冷ます、煮るを1~2回くり返す。
レモン、バニラ、シナモン、その他のスパイス、またクロスグリやクランベリーを加えることもできる。
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カレリア、ホロムイイチゴのヴァレニエ
ホロムイイチゴは、ロシア北部の湿地に生育している。ビタミンCはオレンジの4倍。 黄色いラズベリーのようだが、味はまったく異なる。
採取の時期は8月。冬に向けてヴァレニエをつくるのに最適な時期である。
つくりかた:
ホロムイイチゴと砂糖を1:1の割合で用意する。
ホロムイイチゴを洗って乾かす。砂糖シロップを用意して、ホロムイイチゴを加え、トロ火で沸騰させる。アクを取り、さらに5分煮て、冷ます。これをもう一度くり返す。裏ごしして、種を取り除き、またヴァレニエを煮る。
アストラハン、スイカのヴァレニエ
ロシア人はスイカが大好きだ!スイカが生育するロシア南部では、地元の人がスイカを使ったさまざまな料理をつくる。中にはスイカの塩漬けまである。そして、繊細な味のヴァレニエもつくる。
つくりかた:
スイカ500グラムに対して、砂糖1キロを用意する。スイカの種を取り除いてから角切りにして鍋に入れる。砂糖を加えて、汁が出るまで2~3時間置いておく。鍋を火にかけて15分煮て、冷ます、を3回行う。 木製のスプーンでヴァレニエをかき混ぜる。 3回目に煮る時に、バニラとクエン酸を少々加える。
スイカの皮の白い部分でもヴァレニエをつくることができる。白い部分を拍子木切りして、普通のヴァレニエのようにつくる。
ウラル、レネットのヴァレニエ
レネットとはウラル地方、アルタイ地方、シベリアに生育するリンゴの一種で、ウラルのレネットは、優しいウラルの女性を意味する「ウラロチカ」とも呼ばれる。庭で育てたレネット、野生のレネットのどちらもヴァレニエに使う。レモン、ショウガとショウガ汁を加えることも多い。
つくりかた:
レネット1キロに対して、1.2キロの砂糖が必要。レネットを丸ごと使う。レネットを洗い、タオルでふいて、つまようじでそれぞれのレネットの底部に穴を開ける。このようなヴァレニエをつくるのにぴったりなのはホーロー鍋。
最初に砂糖シロップをつくり、次にレネットを加えて、弱火にする。混ぜると果実が崩れるので、混ぜない。10分ほど煮る。室温で一晩置いておく。次に5~10分煮る。
ヴァレニエがマーマレードのようになったらできあがり。時間が足りなそうだったら、さらに5~8分煮る。
ロシア中央部(モスクワ周辺)、セイヨウスグリのヴァレニエ
このベリーは味、ロシアの寒さに対する耐性から、「北のブドウ」と呼ばれる。ロシアの一般的なヴァレニエの材料である。
つくりかた:
セイヨウスグリと砂糖を1:1の割合で用意する。茎を切り、実を洗って乾かす。 鍋に入れて、水を1/2カップ加えて沸騰させる。実を丸ごと使い、そのままにしたい場合は、つまようじで穴を開ける。
沸騰したら、砂糖を加えて、2~3時間置いておく。再度沸騰させて、30分煮る。
このヴァレニエにはオレンジ(1キロのセイヨウスグリに対してオレンジ2個)、クルミ(1キロのセイヨウスグリに対してクルミ100グラム)も合う。
アルタイ、シーバックソーンのヴァレニエ
シーバックソーンはロシアで広く生育している。1930年代、アルタイ地方の農業学者は、ほとんど棘のない新しい品種を開発した。この地域ではとても人気があり、シーバックソーンの油、ジュース、リキュールなどもつくられている。だが、もちろん、ヴァレニエが最高だ。
つくりかた:
シーバックソーン1キロに対して、砂糖2キロを用意する。シーバックソーンを洗って乾かし、木製のスプーンなどで砂糖と一緒につぶす。常温に置いておく。
混ぜて、また1時間置く。とろ火でゆっくりと煮る。