地方別の珍しいヴァレニエ7種

ロシア料理
エレオノラ・ゴリドマン
 松ぼっくりやスイカなどのジャムのレシピをご紹介しよう! 

 ヴァレニエ(果実煮)はジャムの一種で、ロシアの古い言葉で「煮た甘味」を意味する。煮た後でも果実がそのまま残っているのが特徴。これは季節の食べ物で、ベリーなどの果物をダーチャ(別荘)で採取する晩夏から中秋にかけて、つくる。 できあがったヴァレニエは通常、冬まで保存する。

 人気が高いのは、ラズベリー、クロスグリ、イチゴ、チェリー、チョークベリー、アプリコット、プラム、リンゴのヴァレニエ。ズッキーニやニンジンからつくることもある。そして特有の人気ヴァレニエというのもある。

  1. ロシア極東、サルナシのヴァレニエ

 サルナシという果物を知っているだろうか。キウイに近い果物で、切ってみるとそれがよくわかる。ビタミンCが豊富で、そのまま食べても、ジャムにしてもおいしい。ロシア極東で広く生育している。

つくりかた:

 サルナシと砂糖を1:1の割合で用意する。サルナシを洗う。鍋に砂糖と水を入れ(砂糖1キロに対して水1カップ)て火で温める。サルナシを加える。3~6時間そのまま置いておく。次に煮て、冷まし、また煮て冷ます。できあがるまでこれをくり返す。

  1. コーカサス、マツボックリのヴァレニエ

 マツボックリ(マツの球果)、スギの球果、またはモミの球果の香り豊かなおいしいヴァレニエは、伝統的なコーカサスとシベリアの甘味であり、一部の病気の優れた治療薬である。食感からマツの蜂蜜と呼ばれることもある。材料は若い緑色の球果。コーカサス地方では5月、シベリアでは6月に採取する。球果は爪で簡単に穴を開けられるほどやわらかく、長さが1~3センチのものが適当。

つくりかた:

 1リットルのヴァレニエをつくるのに、500グラムの球果(20~30個)が必要。若い芽を使うこともできる。

 球果と砂糖を1:1の割合で用意する。お湯で丁寧に球果を洗い、ステンレス・スチール製の鍋に入れる。樹脂を多く含むため、ホーロー鍋だと煮る際に鍋を傷める可能性がある。水と砂糖を加えて沸騰させる。次に室温まで冷ます。球果が茶色になってやわらかくなるまで、冷ます、煮るを1~2回くり返す。

 レモン、バニラ、シナモン、その他のスパイス、またクロスグリやクランベリーを加えることもできる。

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  1. カレリア、ホロムイイチゴのヴァレニエ

 ホロムイイチゴは、ロシア北部の湿地に生育している。ビタミンCはオレンジの4倍。  黄色いラズベリーのようだが、味はまったく異なる。

 採取の時期は8月。冬に向けてヴァレニエをつくるのに最適な時期である。

つくりかた:

 ホロムイイチゴと砂糖を1:1の割合で用意する。

 ホロムイイチゴを洗って乾かす。砂糖シロップを用意して、ホロムイイチゴを加え、トロ火で沸騰させる。アクを取り、さらに5分煮て、冷ます。これをもう一度くり返す。裏ごしして、種を取り除き、またヴァレニエを煮る。

  1. アストラハン、スイカのヴァレニエ

 ロシア人はスイカが大好きだ!スイカが生育するロシア南部では、地元の人がスイカを使ったさまざまな料理をつくる。中にはスイカの塩漬けまである。そして、繊細な味のヴァレニエもつくる。

つくりかた:

 スイカ500グラムに対して、砂糖1キロを用意する。スイカの種を取り除いてから角切りにして鍋に入れる。砂糖を加えて、汁が出るまで2~3時間置いておく。鍋を火にかけて15分煮て、冷ます、を3回行う。  木製のスプーンでヴァレニエをかき混ぜる。  3回目に煮る時に、バニラとクエン酸を少々加える。

 スイカの皮の白い部分でもヴァレニエをつくることができる。白い部分を拍子木切りして、普通のヴァレニエのようにつくる。

  1. ウラル、レネットのヴァレニエ

 レネットとはウラル地方、アルタイ地方、シベリアに生育するリンゴの一種で、ウラルのレネットは、優しいウラルの女性を意味する「ウラロチカ」とも呼ばれる。庭で育てたレネット、野生のレネットのどちらもヴァレニエに使う。レモン、ショウガとショウガ汁を加えることも多い。 

つくりかた:

 レネット1キロに対して、1.2キロの砂糖が必要。レネットを丸ごと使う。レネットを洗い、タオルでふいて、つまようじでそれぞれのレネットの底部に穴を開ける。このようなヴァレニエをつくるのにぴったりなのはホーロー鍋。

 最初に砂糖シロップをつくり、次にレネットを加えて、弱火にする。混ぜると果実が崩れるので、混ぜない。10分ほど煮る。室温で一晩置いておく。次に5~10分煮る。

 ヴァレニエがマーマレードのようになったらできあがり。時間が足りなそうだったら、さらに5~8分煮る。 

  1. ロシア中央部(モスクワ周辺)、セイヨウスグリのヴァレニエ

 このベリーは味、ロシアの寒さに対する耐性から、「北のブドウ」と呼ばれる。ロシアの一般的なヴァレニエの材料である。

つくりかた:

 セイヨウスグリと砂糖を1:1の割合で用意する。茎を切り、実を洗って乾かす。  鍋に入れて、水を1/2カップ加えて沸騰させる。実を丸ごと使い、そのままにしたい場合は、つまようじで穴を開ける。

 沸騰したら、砂糖を加えて、2~3時間置いておく。再度沸騰させて、30分煮る。

 このヴァレニエにはオレンジ(1キロのセイヨウスグリに対してオレンジ2個)、クルミ(1キロのセイヨウスグリに対してクルミ100グラム)も合う。

  1. アルタイ、シーバックソーンのヴァレニエ

 シーバックソーンはロシアで広く生育している。1930年代、アルタイ地方の農業学者は、ほとんど棘のない新しい品種を開発した。この地域ではとても人気があり、シーバックソーンの油、ジュース、リキュールなどもつくられている。だが、もちろん、ヴァレニエが最高だ。

つくりかた:

 シーバックソーン1キロに対して、砂糖2キロを用意する。シーバックソーンを洗って乾かし、木製のスプーンなどで砂糖と一緒につぶす。常温に置いておく。

 混ぜて、また1時間置く。とろ火でゆっくりと煮る。