他のどの国よりも多い。政府の仕事を監督する重要な国家機関である会計院のデータでは、ロシアはガス埋蔵量で世界一、石油埋蔵量では世界第6位、ニッケル、プラチナ族、金、鉄などの有用鉱物の埋蔵量でも世界をリードしている。
ロシアの地中に見つかっている有用鉱物の総量の価格は、世界市場で28兆ドルに上ると見積もられている。その4分の3を石油とガス、石炭が占めている。現在見つかっている天然ガスだけでも、ロシア国内の50年分の消費量を優に賄える。
「ロシアで見つかっている天然ガスの埋蔵量は世界最大で、世界全体の約2割を占める」とプレハーノフ記念ロシア経済大学経済理論講座のオレグ・チェレドニチェンコ准教授は話す。
ロシアのガス埋蔵量は38兆立方㍍と見積もられている。2位はイランで32兆立方㍍、3位はカタールで24兆7000億立方㍍だ。
ロシアのガス専売企業「ガスプロム」は、2019年だけで2369億立方㍍のガスを輸出している。この数字は同社の史上最高値だ。
なお、旧ソ連圏外への輸出量は1992億立方㍍である。これは歴史的な輸出量を記録した2018年の98.7パーセントに当たり、2017年よりも2.5パーセント多い。ヨーロッパ諸国への輸出量は過去最高に達した。とりわけフランス、オーストリア、ハンガリー、オランダへの輸出が目立った。
2020年はコロナウイルスのパンデミックの影響で輸出量は落ちる見込みだ。ガスプロム独自の評価では、2020年の旧ソ連圏外へのガスの輸出量は1650~1700億立方㍍になるとされている。
他国よりも天然ガスの埋蔵量が多く原価が安いことが、ロシアが長年世界最大の天然ガス輸出国であり続けている要因だ。
「EU諸国への輸送路が長いことを勘定に入れても、国境でのガス価格は圧倒的多数のライバル国よりも低い」とロシア国家公共行政アカデミー応用経済研究所のドミトリー・ゴルデエフ上級研究員は話す。彼によれば、輸出用の強力なパイプラインを多数持つことで、輸送能力の限界に突き当たることなく、必要量の天然ガスを供給することができる。
少なくとも、ロシアは地位を守るための努力を怠っていない。例えば、最近ロシアは液化天然ガスの輸出を活発化させている。これにより、法的にパイプラインを使用したガスの輸出を禁じられている独立企業による天然ガスの輸出を促すことができ、輸出路の分散によって政治的なリスクも下げることができる。
最も分かりやすい例は中国へのガスの輸出だ。2014年、ガスプロムと中国石油天然気集団との間で燃料供給の30年契約が結ばれた。この契約では、ガスプロムから中国へのガス供給量は次の通りだ。
オレグ・チェレドニチェンコによれば、現在の世界情勢はロシアに不利に働いているにもかかわらず、ロシアが最大のガス輸出国の地位を保つ可能性はかなり高いという。
「ロシアが天然ガス輸出国として主導的な地位を保つかどうかは、経済的側面ではなく、政治的側面に大きく左右される」とドミトリー・ゴルデエフ氏は言う。彼によれば、経済的観点からは、地中に大量のガスが確認されており、また発達した輸送路を持つことにより、ロシアは今後数十年間は競争価格で国外へガスを輸出できるという。しかも、現在世界中で石炭や石油といったエコでないエネルギー源を天然ガスに切り替える傾向が見られている。
基本的にロシアはテイク・オア・ペイ方式の長期契約でガスを供給している。つまり、買い手は仮に規定供給量のガスをすべて引き取らなかったとしても、満額の代金を支払わなければならない。ガス供給インフラにはとても費用がかかり、大変な技術的ソリューションを要するからだ。
例えば、ロシアのガスプロムは、ドイツにガスを売るためにバルト海の底に「ノルド・ストリーム」を敷設し、トルコ市場にガスを送るため、「ブルー・ストリーム」と「トルコ・ストリーム」という2本の海底パイプラインを建設した。プロジェクトの費用を回収するには長期契約を結ぶしかない。しかし、世界市場で炭化水素の価格が下落する中、パイプラインで輸送するガスは、より「柔軟な」液化天然ガス(LNG)に負けつつある。
「母なる石油」と「父なるガス」
ワシリー・ロシキン「既存のインフラが、天然ガスの原価と供給価格、引いては競争価格の決定に最適なバランスをもたらしている」とオレグ・チェレドニチェンコ氏は話す。
したがって、今後ロシアは液化天然ガスの供給も発展させていく予定だ。液化天然ガスの国際市場におけるロシアのシェアは世界全体の25パーセントに達するだろうと、最近エネルギー省のアレクサンドル・ノヴァク大臣が具体的な期限を示さず発表した。
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