セレブの最新の流行、ロシアのサムライ・ナイフ(写真特集)

 ロシアの小さなガレージで作られたナイフが、ハリウッド女優がキッチンへ。このロシア製ナイフは、今、競争相手を刻み付けている。

 アメリカの女優クロエ・グレース・モレッツが刃物好きであることはよく知られている。そして彼女は、アメリカのトーク番組に出演した際、司会者コナン・オブライエンにバタフライ・ナイフの妙技を披露し、見る人をくぎ付けにした。しかも、このハリウッド女優がインスタグラムで1,700万人ものフォロワーに自分たちの製品の宣伝をしてくれているのを見て、ロシアでナイフ製作ビジネスを立ち上げた職人たちは驚いた。

クロエ・グレース・モレッツの刃物についてのインスタグラムストーリー

 「これは料理人が夢見ていたもの!」―女優は大きめの刃がついたナイフについてこうコメントしている。多くの人が驚くだろうが、これはロシアの小さな職人グループが作ったものだ。ナイフ好きたちの趣味が高じて仕事になったものなのだが、なかなか評判が良く、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツや他の国々からも注文が来ている。

ガレージに作られた工房

 会社のウェブサイトには、会社誕生の歴史について、 「3人の男たち(衛生兵、エコノミスト、ソムリエ)が、バーに出かけて大酒を飲んだ翌日、ナイフ製作者になった」と記されている。

 少し滑稽ではあるがこれは事実で、ビジネスはまさにこのようにスタートしたのだという。3人の中の1人であるソムリエのアレクサンドル・ワシリエフさんは、2018年に「ヴァスヴェル・ナイフ」を兄と、2人の共通の友人とで設立した。3人で痛飲した夜の直後だった。

 「誰もビジネスマンやプロのナイフ職人になりたいなんて思ってもいなかったんです。ただ、オフィスでの灰色の業務の毎日をなんとかしたい、何かワクワクするような、腕にものを言わせるような仕事をしたいと思っていただけで。そんな僕と兄に、友人は、子どものころから彼の趣味だったナイフの作り方を教えてくれると言ってくれたんです。計算してもらうと、始めるのに必要な費用はわずか500ドル(約52000円)でした。ダーチャのガレージを(小さな工房に)改造して、趣味としてナイフを作り始めたんです」とワシリエフさんは言う。

 まもなく、この小さな工房はナイフの販売を始めたが、それは人気を呼び、瞬く間に売り切れた。マーケティング戦略もビジネスプランもなかったが、製品は外国でも売れることが分かったため、直感的に、国外の刃物市場にも入り込めるチャンスがあると判断した。

 「我々の製品は品質のわりにとても魅力的な価格を付けています。ヨーロッパかアメリカの鋼と高品質のスタビラズドウッドしか使っていません。西側諸国だと、このレベルの品質のものは少なくとも価格は2倍します」とワシリエフさん。

ベースギター刀 

 ヴァスヴェル・ナイフが通販サイトEtsyに製品を掲載すると、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツや他の国々の顧客から、ロシアのガレージで作られたナイフの注文が入るようになった。

 最初は、20ドル(約2000円)程度の簡単に作れる普通のナイフだけを扱っていたのだが、そのうちに、もっと創造的でゴージャスな製品をラインアップに加えるようになった。

 たとえば、これはベースギターを刀にしたもの。この会社ではこれを「ギタナ」と名付けた。説明がきには、「これで敵を切りつけた後、葬式で甘いメロディーを奏でることが出来る。ベースギターとしても(背面の仕掛けによりひと動作で弦を取り外すことができる)、刃にはRWL34鋼材が使われておりとても鋭いため、刀としても使える」と記されている。

 この刀はアントニオ・バンデラスの「エル・マリアッチ」役からヒントを得たもので、映画と同じようにカッコいい。

 「あるドイツの顧客(児童心理学者)から、日本の古い懐剣を400ドル(約4200円)で買うと言って送ってきたのですが、その仕様書に基づいて作ったんです。こんな金額をナイフに出すなんてあり得ないと思いましたが、それは大間違いでした。これをカタログに載せると1年半の間に少なくとも10セットは売れました」とワシリエフさんは話す。

 この懐剣は今ではEtsyのサイトで買えるが、値引きされても1,600ドル(約17万円)の値段がついている。

メイド・イン・ロシア

 今、この会社は、独特な形の折りたたみナイフの試作に取り組みながら、新たな分野に挑戦している。創業者はこのナイフが新たなヒット商品になると期待している。

  「信じられないかも知れませんが、ロシア人が作ったメイド・イン・ロシアは顧客にとってはとてもカッコいいものなのです。海外の人たちは、ロシアの手工業はどんな分野においても高いクオリティを持っていると考えているんです。顧客から幾度となくそう聞きました」とワシリエフさんは述べている。

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