ロシア版EUは生まれるか

アルメニアのセルジ・サルキシャン大統領、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領=

アルメニアのセルジ・サルキシャン大統領、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領=

ロイター通信
 旧ソ連圏に投資家が新たに進出しようとする場合、もはや各国と個別に交渉する必要はない。この2年間で、ユーラシア経済連合(EEU)が十全に機能し始めたからだ。今のところ加盟しているのは、旧ソビエト共和国5か国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、アルメニア)だが、EEUは、新加盟の扉は開かれているとしている。

 1991年のソ連崩壊後、当初は、旧連邦構成共和国をもとに新統合体「独立国家共同体(CIS)」が生じたが、間もなくそれは単なる看板の機能しか果たさなくなった。これに取って代わったのが、2009年に創設された関税同盟。2010年には、ロシアとカザフスタンで活動を開始し、2011年にはベラルーシが加わった。その後、これらの国の国境で税関が廃止され、3カ国のどの国境でも通関手続きが行えるようになった。さらに2015年には、他の旧ソビエト共和国、アルメニアとキルギスタンも加盟を決めた。

 「ユーラシア経済連合(EEU)は、かつて同じ国家の一部であった国々が、相互の経済関係を維持し強めるために必要だ。これらの国は、連邦崩壊後、経済的に互いに疎遠になってしまっていた」。ロシア経済・国家行政アカデミー・応用経済研究研究所・国際経済研究室のエヴゲニー・グシチン研究員は指摘する。同研究員の見解によれば、EEUはまた、加盟国の経済を世界システムに統合するプラットフォームともなるべきだという。

 また研究員の意見では、EEUが成功裏に形成された理由は以下の通り。まず第一に、加盟国が歴史と文化を共有しており、過去に協力の経験を持っていること。第二は、加盟国の政治的意志で、それが、ユーラシアにおける経済統合の戦略的方針を定めた。第三は、基本的な意志決定機構、すなわちユーラシア経済委員会の存在だ。

 

活動の原則 

 「国家間の統合体としてのEEUが見込んでいるのは、CISよりはるかに深い、EU(欧州連合)に比肩するような、加盟国の統合だ」。ロシアの大手証券会社「フィナム」の金融アナリストであるティムール・ニグマトゥッリン氏はこう述べる。氏によれば、EEUのおかげで、例えば、加盟国が、通商以外での様々な制限を著しく緩和し、資本と労働力の移動をずっと容易に行えるようになるという。統合による相乗効果のおかげで、長いスパンで見ると、ロシアのGDP(国際総生産)は年間0.5パーセント増え、より経済規模の小さな加盟国では年間1パーセント増となると、ニグマトゥッリン氏は試算する。

 EEUの初期段階では、加盟国間の統合において枢要な方向は、関税面での協力や、通商、その技術面での調整だった。すなわち、加盟国にとって主要課題であったのは、活動の重要な分野において、単一の法的空間を創設すること。

 2010年には、関税法が発効し、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3国で、この分野における単一システムが機能し始めた。また、関税関連行政に関する規範文書が採択された。そのおかげで、通関に要する文書の数は著しく減り、この協定に加わった国の国境では、税関が廃止された。その後、2012年2月には、EEUを運営する単一組織「ユーラシア経済委員会」が誕生。また、同年1月には、単一経済空間を形成する、17の国際基本文書が採択されている。この空間は、4つの「自由」、つまり商品、サービス、資本、労働力の移動の自由を見込んでいる。

 単一経済空間が形成された初期段階に、加盟国間の統合の深化に関して行われた作業のおかげで、EEU創設の条件が作成された。そしてEEUは、2015年1月1日に機能し始めた。

 「EEUは、加盟国間の経済通商上の協力を確固たるものとし発展させていくため、然るべき条件を作り上げることができた」。グシチン氏はこう指摘する。氏の意見では、2015年度のロシアの貿易統計もこれを裏付けている。全般的に輸出入が落ち込むなかで、加盟国間の落ち込みは、他国とのそれに比べてはるかに小さかったという。

 

第二のEUになるか?

 グシチン氏によれば、EEUとEUを比較する場合、まず前者の若さを割り引くべきだという。「EUは長い統合の発展の歴史を有しており、第二次世界大戦後に形成されたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体にまで遡る。EUによって達成された統合の深さは、EEU諸国にはまだない」。グシチン氏はこう指摘したうえで、EU の活動は、当然のことながら、肯定的なものも否定的なものも含めて、EEUの創設過程において考慮されたと述べる。

 「概して、EEUのような巨大国際プロジェクトが実現していくプロセスについては、一義的に成功だの失敗だのと言えるわけがない。当初の統合段階においては、様々な経済的、政治的利害が錯綜した。それらは、各国のエリートの影響力に触れるものだった」。ロシアのFX会社「テレトレード」の主任アナリスト、アレクサンドル・エゴロフ氏はこう言う。氏によると、EEUはCISに比べて、はるかに生命力が強い。なぜなら、統合の基盤に加盟国の経済的利益があるからだという。

 これに関連し、専門家らは次のように指摘する。EEUが成功裏に発展していくためには、加盟国の経済規模が小さいことに鑑み(ロシアをのぞいて)、他の経済ブロックおよび国家との緊密な統合が不可欠である、と。

 2016年10月、EEUと中国の間で、「5プラス1」の形で、自由貿易圏創設に関する交渉が始まった。

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