LCCポベダが独自方針で黒字

アレクセイ・コパエフ撮影/タス通信
 国営航空会社「アエロフロート」の子会社で、ロシア唯一の格安航空会社(LCC)「ポベダ」は、手荷物持ち込みの厳しい決まりなど、さまざまな制約で乗客との関係をこじらせているが、わずか1年で黒字になった。

 ポベダは同時に、複数の論争を巻き起こした。機内で、泣く赤ちゃんを連れた両親が空いた座席に移動したところ、両親が事前に座席自由選択のサービス料を支払っていないとして、客室乗務員が戻るよう指示。両親が従わなかったため、警察に引き渡された。これは交流サイト(SNS)で怒りを呼んだ。また、手荷物として機内持ち込みが許可されている女性のハンドバッグと男性のブリーフケースに該当しないリュックサックを持ち込もうとし、追加料金を請求された女性国会議員が、この問題を提起したことから、監督機関がリュックサックも無料の手荷物として認めるようポベダに求めることとなった。これ以外にも、ポベダは昨年、Duty-Free(免税品)の輸送を有料にしている。厳しい制限にさまざまな反発が起こっているものの、ポベダは経営効率の高さを示すことができている。

 当初、ロシア会計基準により、ポベダの初年度の赤字は15億ルーブル(約22億5000万円)ほどと試算されていたが、ポベダは赤字を回避しただけでなく、3700万ルーブル(約5550万円)の利益まで出したと、ロシアのコンサルティング会社「キリコフ・グループ」の経営パートナー、ダニイル・キリコフ氏は説明する。ロシア市場全体の低迷を背景に、このような指標は楽観ムードを呼ぶという。2016年度の実績はもっと良くなるのではないかと、ロシアの通信社「アヴィアポルト」のオレグ・パンテレエフ分析部長は予測する。

 ポベダは市場低迷の中、財務指標をあげている。2016年第1四半期のロシアの航空会社の総営業損失は、240億ルーブル(約360億円)。2016年上半期の総旅客輸送規模は8%以上縮小しているという。

 

おもしろい会社

 ポベダのビジネスモデルは、従来のLCCのモデルとは異なる。第一に、モスクワに隣接する街の二次空港の利用をやめ、基盤空港を「ヴヌコヴォ」国際空港にした。パンテレエフ分析部長はこのように説明する。第二に、外国のLCCとは異なり、機内の追加サービスを販売していない。第三に、路線網をかなり制限している。アイルランドのLCC「ライアンエアー」やイギリスのLCC「イージージェット」には80路線あるが、ポベダには30路線しかなく、親会社のアエロフロートと競合しないようにしていると、「ロシア経済・国家行政アカデミー」経済研究所のエミリ・マルチロシャン准教授は話す。

 パンテレエフ分析部長によると、ポベダは主に燃料を節約しており、そのために厨房機器をのせず、また荷物の重量を厳しく管理して、航空機の重量を最低限に抑えているという。また、空港とサービス料の割り引きについて、積極的に交渉している。

 

独自性の主な理由

 ロシアのLCCに独自性があるのは、国内の航空の発展自体が異なる道のりを歩んできたため。「外国では大都市の近くに小さな空港がたくさんあるが、ロシアでは空港自体が少ない」と、ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家ドミトリー・バラノフ氏。ロシアの大都市近くには民間空港が一つしかないのが普通で、他の空港は軍に属していて、使用できない。ポベダ自体は自社の空港を選べないという。

 「ロシアで完成されたLCCが登場するのは、空港のサービス市場の自由化の後になる。ポベダの主な課題は今のところ、コンセプトを磨くこと」と、ロシアの証券会社「オトクルィチエ・ブロケル」のセルゲイ・ヘスタノフ最高責任者。ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏によると、状況は将来変わるという。政府は主要都市間だけでなく、中小の拠点間でも路線を再構築させようと計画しており、そうなれば勢いの増す空港間競争がLCCの発展に拍車をかける。