エジプト問題で旅行業界に打撃

AP通信撮影
 ロシア人の間で人気の高い旅行先であるエジプト。だが「コガリムアビア航空」のエアバスA321型旅客機(9268便)墜落を受けて、政府は6日、エジプト発着のすべての旅客便を運航停止とした。この影響で、旅行業界は5000万ドル(約60億円)以上を失う可能性があり、専門家は新たな倒産の波を予測している。

 運航停止命令が出る前にエジプトに入国していたロシアの旅行客とその荷物は、別々にロシアに向けて輸送されることも決まった。旅行客はエジプトに来た時と同じ航空会社の航空機で出国する。荷物はロシア連邦非常事態省の航空機で運ばれる。

 ロシア連邦観光局のデータによると、エジプトはロシア人に最も人気の高い旅行先である。昨年の海外旅行客の約30%または約300万人がエジプトに行っていることを、ロシア旅行業者組合(ATOR)のドミトリー・ゴリン副理事は明らかにした。

 

泣きっ面に蜂

 ロシア当局によると、エジプトには現在、約8万人のロシアの旅行客がいる。

 現地から旅行者を帰国させるためだけの空のエジプト行き航空便に、旅行業者は多額を支払い、すでに損失を被っている。航空便の空席一席につき、航空券の半額の損失となることを、旅行代理店「ペガス・トゥリスティク」のアンナ・ポドゴルナヤ氏と旅行代理店「ナタリー・ツアーズ」のウラジーミル・ヴォロヴィヨフ社長は指摘する。つまり、往復で一人平均250ドル(約3万円)とすると、旅行代理店には総額1000万ドル(約12億円)ほどの損失になる。

 ここにキャンセル便の損失も加わる。ATORの試算によると、すでに年末までの約7万件のツアーが販売済み。一人当たりの平均価格を800ドル(約9万6000円)とすると、業界は少なくとも5600万ドル(約67億2000万円)を失うことになる。

2011年1月に「アラブの春」が始まった際、ロシア連邦外務省はエジプトへの渡航中止勧告を行い、航空便は2ヶ月間運航停止になった。この時、旅行業界の損失は2億ドル(約240億円)になった。

 他の潜在的な損失には、エジプトのホテルの前納金がある。昨年、ロシアの旅行代理店が多数倒産したため、ほぼすべてのホテルが前納金を要求するようになったと、ポドゴルナヤ氏は説明する。旅行代理店はこれから、現地の提携先にエジプト便の運航再開後に同様の規模の旅行者を送ることを約束しながら、交渉していかなければならない。

 

どこも倒産するわけではない

 旅行代理店にとって、人気旅行先のツアーの大量キャンセルは、倒産まっしぐらを意味すると、ロシア旅行業協会(RST)のイリーナ・チュリナ広報担当は考える。唯一の回避策は、旅行先の変更の提案またはツアーの延期。

 エジプトに代わり得る旅行先はトルコ、キプロス、またタイなどのアジアのリゾート。旅行代理店は旅行先の変更にともない、旅行客に支払い済みの旅行代金を休暇の延期や他のツアーの予約などへの預り金にするよう提案している。

 どれほどの期間、エジプト便が運休になるのかは、今のところわからない。アルカジー・ドヴォルコヴィチ副首相は6日、少なくとも数週間になると話していた。つまり、監査が実施され、安全対策が作成された後である。ドミトリー・メドベージェフ首相は8日、旅行代理店支援プログラムを作成するよう指示した。

 

ロシア人旅行客はどう話しているか

 モスクワではエジプトから帰国した人を支援するため、ヴヌコヴォ国際空港、ドモジェドヴォ国際空港のインフォメーション・カウンターに非常事態省の職員が配置されている。多くの旅行客が、自分たちより先に到着した荷物について問い合わせをしている。

 トヴェリからの旅行者ユリヤさんはコメルサント紙にこう話した。「着陸した後、全員が紛失荷物申告を書くように言われる。とにかく全員」。荷物を探すために、モスクワに数日間滞在しなければいけないという。

 ヤクーツクからの旅行者エヴゲニーさんはこう話した。「僕たちが飛行機に乗った時、荷物は非常事態省の輸送機に積まれた。だけど、どうやって受け取ればいいのか。説明がなかった。モスクワからヤクーツクまで戻る飛行機は2日後に飛ぶ。受け取れなかったら、何かしらの書類を書いて、提出することになるんだろう。出発までに受け取れればいいけど」

 紅海に行こうとしていた旅行客も混乱している。ヴィタリー・ヤロフスキーさんは、エジプトの代わりのツアーを提案されたという。「タイ行きを検討したけど、空きがなかった。エジプトに行けなかった人全員をタイのホテルは収容できないし、価格にもかなり差がある」。その結果、旅行代理店から30日以内に返金すると約束されたという。

 エジプト・シャルムエルシェイクの北100キロに位置するダハブのリゾート(カイトサーフィンのシーズンの真っただ中)にいるクセニヤ・カウロワさんはこう話す。「飛行ルートを変える話には慣れっこ。エジプト革命(2011~2013年)の時もまったく同じだった。ロシアのサーファーはあの時も、なんとかしてダハブに行けないかと方法を探ってた。価格や風の条件から、ダハブの代わりになるところは少ないから」。ダハブでパニックの兆候は見られないという。「皆幸せそうにサーフィンしているし、旅行客も大勢いる。早めに帰国する人なんていない。8日に来た人もいた。モスクワからエジプト航空とトルコのペガサス航空を使ってね」とカウロワさん。

 

RBCデイリーコメルサントヴェドモスチ参照記事