カスピ海でのチョウザメ漁。=2002年、GeorgeGeorgiou/Panos Pictures/Grinberg Agency撮影
カスピ海でのチョウザメ漁。=2002年、GeorgeGeorgiou/Panos Pictures/Grinberg Agency撮影
裕福なヨーロッパのグルメたちは、ロシアにより9年間にわたる欧州向けのチョウザメキャビア輸出禁止令が2年前に解禁され、年間150キロの養殖のチョウザメ・キャビアの輸出が可能になったことを大いに歓迎した。その一方で、天然のロシア産キャビアは今や入手不可能である。
カスピ海の漁停止
黒色のキャビアこそが最も高価で美味なものだというのは勘違いである。最も高価な魚の卵は黄金色で、これはカスピ海のチョウザメ、アルビノ・ベルーガ・チョウザメの卵から得られる。この珍味が入った小さな瓶でも軽く5万ドルはする。魚が抱卵するのには最低20年を要するからだ。キャビアの色が淡いほど魚の成熟度も高くなる。成熟した魚ほど、より上品な風味と色彩になる。卵の色には次のような等級がある。0(最も濃い)、00(中くらいの色合い)、000(最も淡い)。000級が最も高価で「ロイヤルキャビア」と呼ばれる。
ソ連崩壊後の乱獲によりチョウザメの個体数は劇的に減少した。ロシアは11年前、カスピ海で商業目的のチョウザメ漁に対するモラトリアム(暫定停止措置)を適用した。
世界の天然キャビア生産量の9割を誇るカスピ海に面するイラン、カザフスタン、トルクメニスタンおよびアゼルバイジャンなどもこのモラトリアムを尊重することに同意した。
2006年には、絶滅危惧種の取引を取り締まる国連組織のワシントン条約がキャビアやその他の天然チョウザメ関連製品の国際的取引を禁止した。
27種のチョウザメが現在絶滅危惧種に関する国際自然保護連合(IUCN)レッドリストに数えられており、そのうちの63%が「絶滅寸前」となっている。
キャビア価格の高騰がチョウザメの大規模な乱獲と密輸をあおっている。
19トン
ロシアでの合法的な養殖場におけるキャビアの生産量(市場調査の報告)。
90%
ロシア産イクラで極東の天然サケが占める割合。残りは養殖魚から得られている。
225トン
ロシアの闇市場でのキャビアの年間販売量。数百万㌦もの利益と推算される。
最近のデータによると、カスピ海では2010年から11年にかけて4000トンの未加工キャビアが採取された。昨年、採取量は1500トンにまで減少した。
アジアの店舗で合法的に輸入されたロシア製キャビアを見つけることはほとんど無理だ。例外は、すし用のイクラを西の隣国から輸入している日本である。しかし、香港では最近、カスピ海のイラン側で水揚げされた天然チョウザメがアジアで売りに出されたことが目撃されている。
中国では、ロシア産の塩漬け物のキャビアが店頭に出回っている。カワカマスの「キャビア」は本物そっくりだが、味はチョウザメの卵と比較にならない。
アラスカ産イクラも
キャビア愛好家たちは魚卵に対する欲望を満たすために、より安価な赤いイクラに注目するようになっている。
正月前になると、イクラの価格さえ急騰する。大多数のロシア人はこの時期の季節の定番メニューを思う。つまり、バターを塗って赤いビーズのようなイクラをのせたオープンサンドイッチだ。正月に限らず、お祝いごとや人が集まる席の食卓には欠かせない。
今年夏にはイクラが7割も高騰した。主な原因は、ロシア東部のサケ漁の結果が芳しくなかったためだ。その後、アラスカ産の冷凍イクラが輸入されたおかげで、その市場価格は通常キロ当たり50ドル程度に落ち着いた。
ロシア産イクラの40%から60%は、カムチャツカやサハリンなど極東地域の漁場からの産品である。ロシアのイクラの年間生産高は1万1000トンから1万3000トンと推定されている。
8月までに1500トンに及ぶ冷凍イクラがロシアに輸入され、その取引額は1300万ドルを超えると連邦税関局が報告している。90%近くのイクラは1キロ当たり7~9ドルという評価額を与えられたが、それはロシア産イクラの平均価格の数分の1でしかない。
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