相互補完の道探る

日本・ロシアフォーラム =ヴィクトル・ワセーニン/ロシースカヤ・ガゼタ撮影

日本・ロシアフォーラム =ヴィクトル・ワセーニン/ロシースカヤ・ガゼタ撮影

 【①資源開発】吉海泰至・三井物産執行役員エネルギー第二本部長が、三井物産も参画した石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について日本のエネルギー供給元多様化の必要性が生じたことが事業参画の背景にあったと指摘した。パノフ元駐日大使は「日本は豪州などに液化天然ガス(LNG)生産工場を建設しており、訪米した安倍晋三首相は米国から安いシェールガスを買いたいと要請した。日本は本当にこれ以上、ロシアのエネルギーを必要としているのか疑問だ」と問題提起した。

分科会参加者のコメント

パノフ発言が新鮮
山下総一郎氏 
 国際協力銀行ユニット部長
 さまざまな意見を聞けて有意義だった。特にパノフ元駐日大使による「日本は本当にロシアのエネルギーを必要としているのか」という問題提起はロシア側発言として新鮮で、興味深かった。
生産的だった討論
セルゲイ・ルジャーニン氏
 ロシア科学アカデミー極東研究所副所長、モスクワ国際関係大学教授
 生産的で建設的な意見交換ができて満足している。こういうフォーラムをもっとひんぱんに開催し、日本とロシアの専門家同士が意見をぶつけ合う機会を増やしてほしい。
ロシアに存在感
向井千秋氏
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙医学研究センター長、宇宙飛行士
 国際宇宙センターを往復できる宇宙船はロシアのソユーズしかないので、ロシアとの協力が欠かせません。宇宙飛行士同士の交流も盛んで、今年は女性宇宙飛行士第一号のテレシコワさんの飛行50周年でロシアに集まります。

 石油天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)の本村真澄主席研究員は「日本のエネルギー供給元多様化のためにはロシアの資源確保が重要だ」と述べた。

 ルジャーニン極東研究所副所長、国際協力銀行の山下総一郎氏、コンサルタント会社「KアンドLゲーツ」のミラノフ氏もそれぞれの専門分野で見解を披露した。

 【②IT・宇宙】スコルコボ基金のエフィーモフ企画部長がロシア版シリコンバレー計画「スコルコボ」の現状について説明した。カスペルスキー日本法人の川合林太郎社長は日露間の認識のギャップを指摘。「日本人はハードウエアを作るのが得意だが、ロシア人はソフトウエアが得意だ。両者はうまく協力できる」と語った。

 日露の宇宙飛行士も発言し、向井千秋氏が「ロシアの宇宙開発に比べ、日本はあらゆる面で遅れている」として政府と民間の交流促進を訴えた。一方、バトゥーリン氏は日本の宇宙開発に目的と戦略がないと指摘するとともに、宇宙ゴミの回収などでの日露協力を求めた。

 このほか、シソーエフ・モスクワ大学物理学部長、シャロフ・ドクターウェブ社長、エーリンDO-RA社長がそれぞれ報告を行った。

 【③インフラ】スマートコミュニティー(環境負荷の少ない次世代社会)との関連で高原一郎資源エネルギー庁長官は、東日本大震災で電力供給システムの改革が課題になったことを指摘して都市開発での日露協力を提唱した。

 日建設計の中分毅常務は、モスクワなどロシアの6都市でスマートコミュニティーの建設事業に協力していることを紹介し、熱と電力の同時供給システムでエネルギー利用効率の改善が必要だと語った。サハリンの産業クラスター作りに取り組むSASサービスのコルキン社長は、港湾などのインフラ事業で日本に協力を呼びかけた。

 国際協力銀行の黒石邦典部長、ロシアAPEC研究センターのイワシェンツォフ副所長、政治評論家のマルコフ氏も報告を行った。

 【④文化・スポーツ】茶道裏千家前家元で日露交流を続けている千玄室氏は「茶道は和の心が肝心。一人の人間として敬い合うことから始まる」と語った。

 『カラマーゾフの兄弟』を新訳した亀山郁夫・東京外国語大学学長は、ロシア語のノスタルジーと日本語の「ものの哀れ」には共通の感覚があることを指摘した。作家のサラスキナ氏は「ロシアというとドストエフスキーを思い浮かべる人が多い。小説の主人公に自分たちを投影しているからだ」と語った。

 柔道の金メダリストで東海大学副学長の山下泰裕氏、同じく銅メダリストのノソフ氏、元スケート選手でJOC委員の橋本聖子参議院議員、プロホロフ・モスクワスポーツ委員会代表がスポーツの観点から日露協力を探る見解を述べたほか、ノビコワ・ボリショイ劇場広報部長、ストノーギナIABC副社長が報告した。

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