一風変わったソ連の映画ポスター15点(PICS)

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ロシア・ビヨンド
 ソ連の映画のポスターは、ひとつの芸術分野だ。アヴァンギャルドなコラージュから、SFテイストの世界観まで、多様な作風の面白いポスターを集めてみた。

1. セルゲイ・エイゼンシュテイン『戦艦ポチョムキン』、1925

 オデッサに停泊中の黒海艦隊のある艦の乗組員は、虫のわいた肉を出された事に怒って暴動を起こす。やがて暴動は反政府の反乱に発展し、鎮圧のため、市に政府軍が入ってくる。

2.ジガ・ヴェルトフ『世界の六分の一』、1926

 ソ連随一のドキュメンタリー映画監督による宣伝映画で、ソ連政府の注文により制作されたもの。ソ連の広大な土地で、人々に必要なほぼ全ての作物が生産されている様子を披露するのが目的であった。

3.ボリス・バルネット 『帽子箱を持った少女』、1927

 名手ボリス・バルネット監督作品で、ネップ時代の陽気なモスクワが舞台のコメディ。時代を彩ったアイテム、宝くじがキーアイテム。

4.セルゲイ・エイゼンシュテイン『十月』、1927

 10月革命10周年を記念して制作された歴史映画。巡洋艦アヴローラの発砲と冬宮殿の攻撃など、1917年の出来事を最大限正確に描写している。

5.セルゲイ・エイゼンシュテイン『アレクサンドル・ネフスキー』、1938

 ロシア正教で列聖もされているアレクサンドル・ネフスキー大公を描く本作は、「正しい」愛国映画の見本だ。弾圧と粛清が最も激しかった時期に、スターリンの注文によって制作された。しかし、天才エイゼンシュテインが手がけただけあって、傑作に仕上がった。もっとも歴史学者によると、作中の描写は実際のネフスキーとは相当かけ離れているようである。

6.ミハイル・カラトーゾフ『鶴は翔んでゆく』(邦題『戦争と貞操』)1957 

 将来を誓い合ったものの、戦争によって引き離されてしまったボリスとヴェロニカの物語。2人の愛は、様々な試練によって試されることになる。戦争映画だが、敵は登場しない。本作はカンヌ映画祭でパルム・ドールを獲得した。

7.ユーリー・チュリュキン『娘たち』、1961

 小さなニュータウンに、トーシャという名の娘がやってくる。町のイケメン、イリヤは彼女をディスコに誘うが、公衆の面前で拒絶されてしまう。そこで、1週間の間に彼女を惚れさせてみせると、友人と賭けをする。本作は過度に通俗的であるとして役人には不評であったが、観客には好評で、観客動員数はトップを記録した。

8.ミハイル・ロンム『一年の九日』、1962

 グーセフとクリコフ、2人の若手核物理学者が取り組んでいた実験の結果、グーセフは致死量の放射能を浴びてしまう。しかし医師の警告にも関わらず、彼は実験を継続する。新時代の英雄たちを主人公に据えた、雪解けの1960年代の傑作の1つである。

9.スタニスラフ・ロストツキー『この静かな夜明け』、1972

 高射砲部隊の女性兵士たちが、多勢に無勢の戦闘を戦うことになる。それぞれが静かな人生を望んでいたにも関わらず、過酷な戦争が影を落とす。『この静かな夜明け』は、旧ソ連地域で最も人気のある戦争映画の1つである。

10.フルンゼ・ドヴラチャン『誕生』、1976

 1920年代、ソビエト政権がアルメニアに定着しようとする模様を描いた映画。レーニンの同志アレクサンドル・ミャスニキャンはアルメニアの深い傷を癒し、絶望の淵にある人民を救う使命を課せられる。

11.アンドレイ・タルコフスキー『ノスタルジア』1983

 作家のアンドレイ・ゴルチャコフは、農奴の音楽家の足跡を追ってイタリアにやってくる。探索するうち、彼はエウジェニアという女性と知り合う。彼女はロシアの哀愁を、アルセニー・タルコフスキーの詩から理解しようとする。ソ連の巨匠による心理ドラマの傑作である。

12.グレブ・パンフィーロフ『テーマ』、1986

 インスピレーションを得るべく田舎を訪れたモスクワ在住の作家が、思いがけず自分の「能力」を発見する。良心に対する譲歩と妥協の境界線をめぐるこの作品はペレストロイカ期まで上映できず、初上映はベルリン国際映画祭。そこで金熊賞を含む4つの賞を獲得した。

 13.ニキータ・ミハルコフ『黒い瞳』、1987

 アンナというロシア女性に惚れたイタリア人は、新しい人生を始めるべく、家族を残してロシアにやってくる。しかしそこで、アンナが人妻だと知る。チェーホフの『犬を連れた奥さん』がベースとなった映画の傑作の1つで、主演のマルチェロ・マストロヤンニはこの映画でカンヌ映画祭の男優賞も受賞した。

14.マルク・ザハーロフ『竜を殺す』、1988

 騎士のランスロットがやってきた街は、長年、ドラゴンの独裁下にあった。彼は罪無き人々を救おうとするが、市長は、ドラゴン無しには街も人々も生きられないと仄めかす。誰のために命を賭けるか、問いかける寓話的映画である。

15. ラシド・ヌグマノフ『針』(邦題『僕の無事を祈ってくれ』)、1988

 モロは、恋人を麻薬中毒から救おうとする。並の手段ではそれが叶わないと分かると、彼は悪の根源を絶つべく、売人狩りを開始する。ソ連でタブーとされていたテーマに挑んだ最初の映画の1つだ。

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