ソ連時代には、映画のホームドラマもまた、他の形式の視覚芸術と同じく、理想社会への志向を見せることを目的としていた。しかし、ここにパラドックスがある。ほとんどのソ連映画は、それなりに現実との接点があったが、実のところ、人々が映画を見に行ったのは、困難な現実から束の間逃れるためだった。
第二次世界大戦とスターリンの大粛清の結果、人口統計上の巨大な不均衡が生じた。それは主に、男性の「遺伝子プール」を破壊し、ソ連の男女関係を歪んだものとした。
問題は、ソ連の全世代のかなりの部分が父親なしで育ったということだ。戦後、父の不在は、男女間に根本的に異なる関係をもたらした。父の不在、親が一人であることによる困難は、1960年代~1970年代の多くのソ連映画に反映している。
「健康な家族関係」の形成は、ソ連の社会政策のアルファにしてオメガとなった。
1980年代には、家族計画に関する政府の政策は、結婚の理念を――その核となる価値観、倫理、利益を含めて――強化することを目的とした。その課題のなかには、ソ連の出生率を高めつつ、働く母親を支援し、育児と仕事を両立させることが含まれていた。
1.『カーニバル』(タチアナ・リオズノワ監督、1981年)
幸運を夢見る娘が、銀幕のキャリアに憧れている。シングルマザーに育てられた18歳の意欲的なスターの卵が、ふるさとの小さな田舎町からモスクワに向けて出発する。彼女は首都で映画女優に挑戦する決心だ。ニーナ・ソロマティナ(イリーナ・ムラヴィヨワが見事に演じた)は、いくつもの失望と失敗を嘗めて、厳しい現実を知り、人生は甘くないと悟る。しかし、ついに幸運はニーナに微笑み、彼女は再婚していた父親(ユーリー・ヤコブレフ)との関係を修復し、生涯の伴侶を見つけ、結局、自分の夢を実現する。
2.『娘・母』(セルゲイ・ゲラシモフ監督、1974年)
孤児院で育った娘オリガが、実の母親を探しに、スヴェルドロフスク(現在のエカテリンブルク)からモスクワに赴く。洗練された知識人の家族(夫、妻、2人の若い娘)と出会ったことで、オリガの人生はまったく予想外に変化していく。彼女はいつも直情径行で、何でも物事をはっきりさせないと気が済まない。彼女は、世界を白黒、善悪に割り切り、躊躇する人々を軽蔑する。
彼女が知り合ったこの知識人の家族は、その点正反対である。彼らは洗練されていて、ロマンティックで、のんきだ。正面衝突しかねないところだったが、オリガは、自分の新しい「家族」の全員の生活に、前向きな変化をもたらすきっかけを与える。
3.『絆』( ニキータ・ミハルコフ監督、1982年)
これは、ノンナ・モルジュコワの最も記憶に残る役の一つになった。このエネルギッシュな女優は、素朴な田舎の女性を演じた。彼女はモスクワへ、一人娘と孫娘を訪ねてくる。彼女が唯一望むのは、娘の破綻した家庭を建て直すことだ。しかし、格言にあるように、「地獄への道は善意で敷き詰められている」。彼女の干渉は、家庭の摩擦を増やしただけだった。ニキータ・ミハルコフの映画は、家庭の価値観――それは決まり文句では語れない――の賛歌だ。社会的意識の高い、悲痛なドラマは、家族との和解が幸福と調和への最も確かな道であることを示している。
4. 『モスクワは涙を信じない』(ウラジーミル・メンショフ監督、1979年)
3人の女子が、モスクワにある寮で、一部屋をシェアしている。あるとき、いちばん責任感の強いカテリーナは、叔父の教授に、家の留守番を頼まれた。それは、モスクワ都心にあるスターリン様式の高層アパートで、叔父夫妻が自宅を離れて休日を過ごす間に、留守を預かったわけだ。翌日、3人の親友は、大きなパーティーを開き、教授の娘だというふりをする。
カテリーナ(ヴェーラ・アレントワが演じる)は、そこでハンサムでおとなしそうなカメラマン、ルドルフと知り合い、やがて妊娠していることに気づく。ルドルフは、彼女が教授の娘ではなく工場労働者だと知るや、彼女を捨てる。
「私たちは、2部屋に4人住んでいるのに、あんたと赤ん坊まで入りたいと言うの?」。ルドルフの意地悪な母親は自ら、カテリーナに別れるように言う。にもかかわらず、カテリーナは娘を産み、やがて工場長になり、ついに人生の伴侶にも出会った。
『モスクワは涙を信じない』は、非常に魅力ある映画であることが各国で証明され、1981年にアカデミー外国語映画賞を受賞した。
5.『ポクロフスキー門』(ミハイル・コザコフ監督、1982年)
この煌めくコメディーは、芸術的で機知に富んだ会話に溢れている。まさにこれは、ソ連の生活の百科事典だ!この映画は1950年代のモスクワを舞台にしている。主な出来事は、ありふれたソ連式共同住宅「コムナルカ」で展開されるが、どの住人も創造的で、風変わりで、並外れたところがあって、いずれも特筆に値する。
この映画は、魅力的な若い女たらし、コスチク(オレーグ・メンシコフが演じる)に焦点を当てている。コスチクは、叔母とアパートを共有すると、すぐさま向こう見ずな冒険を始める。
コザコフの見事な喜劇は、家族関係への賢明な洞察に満ちている。劇中で元夫は、元妻、隣人、友人、そして新しい「大切な人」と、住まいのシェアを強いられる。必見だ!
6.『家庭の事情』(アレクセイ・コレネフ、1977年)
若い新婚夫婦のリーダ(マリーナ・デュジェワ)とイーゴリ(エフゲニー・ステブロフ)は、初めて子供が生まれると、イーゴリの義母の助けを当てにする。しかし、彼らとアパートを共有している、このガリーナ・アルカージエヴナ(ガリーナ・ポリスキフ)は、昔ながらのおばあさんの役割を果たす用意がない。そこで家族は、別居するために、小さなアパートに引っ越す方法を探し始める。
この楽しいコメディーは、依然として、いわば古典的なリマインダーであり、愛こそが地球を動かしていることを思い出させてくれる。
7.『義母』(オレーグ・ボンダリョフ監督、1973年)
この映画は、ソ連の普通の家族を描いているが、この家族は嵐をくぐり抜ける。
シューラ・オリヴァンツェワの生活は一見、順風満帆だ。彼女は、美しく装飾された新しいアパートに住み、相思相愛の夫と2人の子供がいる。ただ生きて、楽しめばよい。だが、この楽園は、シュラの夫パーヴェルの非嫡出子、幼女スヴェータの出現で、動揺する。シューラ(タチアナ・ドローニナが名演を見せた)は、優しさ、人間味、愛情をもって試練と苦難に耐える田舎の女性を見事に演じている。