メートルやマイルは忘れよう!だってサージェンがあるんだから(インフォグラフィックス)

Irina Baranova
 ロシアでは、革命後にようやくメートル法に切り替えたが、それ以前は、いろいろな長さの尺度を用いていた。しかも、地域によってその名称もバラバラだった。

 昔からロシア人は、自分の体の部分(指、掌、肘など)で、あらゆるものを測定してきたが、長い間、それらには正確な数値がなかった。地域によってその長さがかなり違うこともあった。

 こういう状況を整理しようと最初に試みたのがピョートル大帝(1世)だ。彼は、ロシアの尺度をすべて、イギリスのそれに対応させることを命じ、例えば、同国のフィートとインチを導入して、普及させようとした。

 また、ロシアの度量衡の正確な値は、1835年に、ニコライ1世の法令「ロシアの度量衡の制度について」で導入された。

 1899年にはメートル法が導入され、普及が図られたが、ロシアの伝統的な度量衡と併用され続けた。ロシア革命後にソビエト政府がそれを廃止するまで。

 今日、ロシアではメートル法のみが使われている。しかし、古いロシアの単位も、会話で耳にすることがあり、それらを含む諺がたくさん日常生活に残っている。

 

ヴェルショーク(Вершок)=4,45 ㎝(1,75 インチ)

 これは、長さを表す最小の単位だ。語源は、「верх(上)」なので、これは成人男性の親指の最初の関節に等しいと考える歴史家が多い。

 ヴェルショークは非常に小さい単位だから、比喩的な意味でロシア語に入り込んでいる。例えば、

 「罪からヴェルショーク」(犯罪、罪まで一歩)。

 “от греха на вершок”

 また、「言葉は袋いっぱい、行いはヴェルショーク」。

 “Слов на мешок, а дел на вершок”

 これは、口ではいろいろ言うが、ほとんど何もしない、つまり、「不言実行」の反対で、「有言不実行」を意味する。

 人の身長が、ヴェルショークで測られたのは面白い。例えば、作家イワン・トゥルゲーネフの短編『ムムー』の主人公は、発話障害のある召使ゲラシムだが、彼は次のように描かれている。

 「古代の勇士さながらの体格で、身長12ヴェルショークの男…」

 しかし、12ヴェルショークは、50㎝強にすぎない。実は、人は誰でも2アルシン(142 cm。アルシンについては以下を参照)はあるはずで、それにプラスされる高さがヴェルショークで表されるのだ。ちなみに、ヴェルショークは、布の長さを測るのにもよく使われた。

 

ピャージ(Пядь) = 17,8 ㎝(7インチ)

 ピャージは、親指の先から人差し指の先までの長さだった(ただし、指を広げたとき)。ピャージは、見方により、長さに幅が出てくる(4~6ヴェルショーク)。
 古代ロシアでは、ピャージは、22~31 cmの範囲だった。資料ごとに、長短さまざまなピャージが出てきて、なかにはぶっ飛んだものもある(煉瓦の長さに等しいとか)。

 ピョートル大帝の時代には、ピャージはしばしば「チェトヴェルチ(四分の一)」と呼ばれ、その長さは7インチに固定された。

 ピャージは、日常生活で用いられるごく一般的な単位だった(例えば、積雪の深さやイコン〈聖像画〉のサイズを測るのに使われた)。こんな慣用句がある。

 「額に7ピャージある」

 “семь пядей во лбу”

 信じがたいほど賢い人について、こう言う。

 

ローコチ(Локоть)=45㎝(17インチ)

 古代ロシアの「ローコチ(肘)」は、肘から中指の先端までの長さだった。しかし、地域によってローコチの長さは異なり、だいたい36~54cmの範囲だ。「モスクワのローコチ」は、2ピャージまたは35.6cmだったことは、はっきり分かっている。

 ローコチは、とくに商いに便利で、慣用句にも出てくる。

 「背丈がローコチなのに(小男で背丈が肘くらいしかないのに)、それでもカフタン(外套)が短い」

 “Сам с локоток, а кафтан короток”

 「爪くらいの背丈なのに、あご髭はローコチくらい長い」

 “Сам с ноготок, а борода с локоток”

  これらの諺は、外見と知恵または社会的地位とが釣り合わないことを表している。

 

アルシン(Аршин)= 71㎝(28インチ)

 アルシンは、約2ローコチ、つまり中指の先から肩までの長さに相当する。最初に現れた定規は、1アルシンの長さで、それが16のヴェルショークに区切られていた。そのため、人の身長は、先ほど述べたように、2アルシン+〇〇ヴェルショークと示されたわけだ。

 アルシンは「シャーグ(一歩)」とも呼ばれていた。19世紀には、ライフルの射程なども、これで測定していた。

 アルシンは、ローコチに取って代わり、商いの場に根を下ろしたが、最初はその長さはいかなる法律でも定められておらず、商人はそれぞれ、自分の尺度のイメージをもっていた。

  そこからこんな慣用句が生まれた。

 「自分のアルシン(尺度)で測る→転じて、自分勝手に判断、評価する」

 “Мерить всех на свой аршин”

 

サージェン= 2.1m(7フィート)

 サージェンは、両腕を横に水平に伸ばしたときの、一方の手の指先からもう一方の手の指先までの長さだ。後に、英国の7フィート相当の長さに固定された。

 サージェンは、道などの距離を測るのに使われ、建設や土木工事などでも盛んに使用された。

 また、「斜めのサージェン」という表現、単位もあった。これは、伸ばした腕から反対側の足のつま先までの長さで、約2.5mだ。

 「肩幅が斜めのサージェン」という表現もしきりに使われていた。これは、ボガトゥイリ(古代の叙事詩の勇士)的な堂々たる体格を意味した。

 

ヴェルスタ(露里)= 1,06㎞

 ヴェルスタはたぶん、距離を測る最も一般的な単位だった。1ヴェルスタ=500サージェンだから、1㎞強になる。長い街道はヴェルスタで測定され、各ヴェルスタごとに特別な里程標が立っていた。これは何よりも、郵便の利便性のために必要だった。

 この言葉は、キロメートルの定義に近いこともあり、日常の言語や文学に非常に長い間残っていた。

 「1ヴェルスタの距離からも聞こえる」

 “Слышно за версту”

 「狂犬は7ヴェルスタもものとせず」

 “Бешеной собаке семь вёрст не крюк”

  これらの諺、慣用句は、ヴェルスタの距離感をよく表している。 

 

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