最も高値のついたソビエト時代の写真

カルチャー
エカテリーナ・シネリシチコワ
 世界のオークションで数千ドルの値が付けられた伝説の写真家の写真である。

1.コンストラクター(“自画像”)、エル・リシツキー

120万ドル

 このソビエト時代の写真は2019年に最新の落札価格の記録を作った。オークションハウスのクリスティーズでトレチャコフ美術館から出品された前衛芸術家エリ・リシツキーの自画像は約95万ポンドで落札された。

 リシツキーはロシアの前衛主義と構成主義の重要人物の一人だった。彼は絵画と建築の両方で活動し、本の挿絵を描いたり、家具の考案、写真撮影などをしていた。

 他の多くの前衛芸術家と同様に、彼は革命と新政府のイデオロギーを熱狂的に受け入れ、ソビエト連邦のキャンペーンポスターやその他のシンボルの作成に積極的に関与した。

2.「ライカをもつ少女」、アレクサンドル・ロドチェンコ

51万9千ドル

 ソビエト連邦におけるデザインと宣伝の「父」であり、芸術家かつ写真家であるロドチェンコは、幾何学的な抽象化、ミニマリズム、および前衛芸術の特徴である非標準的な遠近法をソビエト写真に導入した。今日、彼の作品は国際オークションで最も人気のある作品の一つだ。

 1930年代初頭に撮影されたこの写真は、ロドチェンコにとって女神だった、エヴゲニャ・レンベルグの悲劇的な死の直前の姿を写したものだ。この写真は、2018年にニューヨークのクリスティーズでオークションに出品された。

3.「階段」、アレクサンドル・ロドチェンコ

281,250ドル

 もう一つのロドチェンコの作品は、2019年にクリスティーズで売却された。 1935年に撮られたこの写真は、彼特有の方法で古典的な構図と遠近感を破壊した。ロドチェンコの作品は、新しい「ソビエト連邦」のイメージと、通り、家、ソビエトの人々、そして彼の生涯はどうあるべきかという、人々の心の中にある視覚言語を形成した。

4.「ルリキ」の中の一枚、ボリス・ミハイロフ

30,672ドル

 ロンドンのサザビーズでオークションにかけられたこの写真は、1985年に撮影された。 「これは誰もが持っていた家庭の写真で、あまりにも美しく描かれています。これはある馬鹿げたことでした。私はこれをソビエト文化全体の白痴の印だと考えています」とミハイロフは語った。

 「ルリキ」がミハイロフの故郷ハリコフ(現在のウクライナ)で初めて展示されたとき、評判は敵対的なものだった。批評は、すべての写真家が行っている「内職」が芸術の分野に持ち込まれた、というものだった。それ以来、この敵意はほとんど変わっていない。とある芸術評論家によると、祖国では、原則を批判する異端、反体制派、というミハイロフの評価が続いている。しかし、欧米では、彼はソ連で最も有名な写真家の一人であり、特に彼の展覧会はニューヨークのMoMA、ロンドンのテート・モダン、ヴェネツィアのビエンナーレで開催されている。

5.「赤のシリーズ」の中の一枚、ボリス・ミハイロフ

21,087ドル

 ミハイロフの写真で2番目に高価なものは、「赤のシリーズ」に属するものだ。赤色は全ソビエト史に付随するもので、イデオロギーの色だった。このシリーズは1970年代に公開され、ルリキと同様に、ソ連の視覚的イメージを再解釈するものだ。今回だけ、プラカードや力強い指導者の肖像を持ち、ゆるぎないソビエト市民の神話を信じる大衆のデモの美学が危機に瀕していることが明らかになった。

6.「ライヒスタークの赤旗」、エヴゲニー・ハルデイ

13,750ドル

 これは、第二次世界大戦の象徴的な写真であり、最も広く流通している写真だ。ナチス時代のベルリンの国会議事堂にソビエトの旗を掲げてあるものだ。確かに、今日の歴史家によると、公式の軍事フォトジャーナリストであるハルデイが到着する頃には、すでに議事堂の壁面には旗が数多く掲げられていた。彼は遅刻したのだ。その後、ハルデイは、最初に出会った兵士に公開用の写真を撮ることを願い出て、遠近法の良いアングルを見つけて、2本分のパトローネを使って写真を撮ったと言われている。

7.「ジャン=ポール・サルトル」、アンタナス・ストクス

11,119ドル

 1965年に撮られたこの写真は、リトアニア人(リトアニアにはソ連で最も有名な写真学校の1つがあった)のストクスの最も有名な写真であり、フランスの哲学者サルトルの最も有名な写真だ。何度も世界中で雑誌の表紙になり、フランスで教科書になったり、学校の教科書に掲載された。写真のサルトルは、彼が写真撮影されていることを疑いさえしなかった。彼の隣にいたストクスを作家だと思っていたのだ。 

 「さて、どうしようもありません」と、彼が写真家だと気づいた後サルトルはこう答えた。 「少なくとも写真ができました。」

8.「ライヒスタークの赤旗(最初のバージョン)」、エヴゲニー・ハルデイ

8,750ドル

 世界中で流通した有名な写真(このリストの6番を参照)の数秒前にハルデイが捉えた瞬間は、5,000ドル安く販売された。この写真では、若いロシア人中尉が最後の一フレームの写真で広げられる旗の準備をしているところだ。

9.「市場にて」、アレクサンドラス・マツィヤウスカス

6,134ドル(4枚の写真の1枚として)

 もう一人のリトアニア人マツィヤウスカスは、ソ連の辺境を旅行し、日常生活を記録した。確かに、通常の「優れた」ソビエト様式ではないが、客観的なドキュメンタリーのスタイルになっている。

 彼の作品は現在、サンフランシスコ近代美術館、サンタフェのニューメキシコ美術館、パリ国立図書館、ニューヨークの国際写真センターや、その他世界中の会場で展示されている。