モスクワの地下鉄は光と影のコントラストに満ちた宮殿のようである。毎日、何千人もの旅行者が最も美しい中心駅の写真を撮ろうと地下に潜る。電車の待ち時間が少ないことも、また路線図が分かりやすいこともモスクワの地下鉄の魅力の一つである。
しかし、何百万人ものモスクワ市民がラッシュアワー時に車両の中でむっつりと身体をよじらせ、おたがいの足を踏みつけているのもまた事実である。このような日常を好きになり、にっこり笑いながら我慢するのはなかなか容易なことではない。
「地下の街」はモスクワの記録写真家であるドミトリー・ズヴェレフが何年にもわたって撮り続けた写真集である。「みんなと同様、地下鉄はよく利用する。地下鉄で何も読むものを持っておらず、首からカメラをぶら下げていたら、周りの面白いことを撮るしかないだろう?」