美しくも危険なロシアのパフォーマー、オリガ・クロイトル

セルゲイ・カルポフ撮影/TASS
 フェミニズムが高まる中にあって、女性を簡単に「美女」と呼んでよいのかどうか甚だ疑問であるが、美しい女性が見せるパフォーマンスをご紹介することは許されることだろう。

 現代芸術には疎くても映画が好きだと言う人なら、ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の中で、ヒロインのキャリー・ブラッドショーが、ロシア人アーティストのアレクサンドル・ペトロフスキーとの初デートでギャラリーに行くシーンを覚えているかもしれない。そのギャラリーに、食べ物を一切口にせず、沈黙を守るパフォーマーが住んでいて、恋人たちはその夜遅くギャラリーが閉まってからも彼女がその約束を守っているのか確かめにいくというシーンだ。

 一方、現代芸術に少しでも明るい人ならおそらく、「パフォーマンスの女王」の名で知られるセルビア人女性のマリーナ・アブラモーヴィチを知っているだろう。モスクワの32歳の美人パフォーマー、オリガ・クロイトルはこのアブラモーヴィチと比較されることが多い。しかしオリガ自身はこれを否定する。「マリーナ・アブラモーヴィチのスタイルには賛同できないわ。彼女とわたしは似ていないと思う。なぜならこれはパフォーマンスであって、すべての観客を惹きつけるためのショーではないの」。またオリガは自分の芸術表現はもっと万人向けで、より広い層の人々に理解されるものだと考えている。

 以下にご紹介するのが、オリガ・クロイトルのもっとも印象的なパフォーマンスである。

1.支点

 あなたは低い木株の上に何時間も続けて動かずに立ってみたことがあるだろうか?クロイトルは直径40センチ、高さ4メートルの柱の上に2時間立つ。彼女はその天辺に登って初めて、自分の「支点」を見つけ、自分の生きる場所を見つけることができるのだと確信している。

 これがおそらく彼女のパフォーマンスの中でもっとも有名なもので、彼女はこの作品に対し、モスクワで年に1度授与されるカンディンスキー賞を受賞している。クロイトルはこのパフォーマンスを冬季を含め、複数回行なっている。

 キュレーターのオクサナ・チヴャキナは、「パフォーマンス“支点“はシンボリックなものであると同時に、実際に身体の中の支点を見出すものでもある。当たり前の価値観が混ざり合い、新たな指標にとって代わる現実の世界で、支点を見つけようとする試みなのである」と指摘している。

2. 無題(開かれた棺)

 アーティストが草に覆われたガラスの蓋のついた棺の中に横たわっている。彼女は全裸で、ボッティチェリのヴィーナスの誕生さながら、自分の髪で一部を覆い隠している。観客はガラスを通して「彼女の上を」歩き、上から彼女を見ることができるようになっている。

 オリガはサイト上で「どんな芸術作品も、基本的には裸のアーティストが観客に対して、自分自身のもっとも親密な部分をさらけ出そうとして作り上げるものだ。たとえときにアーティストがそれを恥ずかしいと思ったり、恐ろしいと思ったりしても」と指摘している。

 オリガはルーヴル美術館を訪れた際に、この作品を作るインスピレーションを得た。毎日何千人もの人に見つめられ、写真を撮られるモナ・リザが可哀想になったのだという。

3.繭

 パフォーマンスの基になっているメタファーは明確なものである。どんな繭からも美しい蝶が生まれるはずである。しかしなぜこれほど美しいアーティストが自分自身に繭を巻いて、木に縛りつけているのか。

 実はここには別の意図がある。繭は美しい蝶を捉える罠なのである。それは危険なものでありながら、身を守るものでもあり、明るい未来を待つものでありながら、死を前にした苦しみでもある。

4.浄化

 9日間、オリガは自分の髪を使って展示室の床を掃除する。来館者の中から一人を選び、バケツを持って、その人の後をついて歩き、その人が立ち止まる作品の前の床を自分の濡れた髪で洗いながら進む。このようにして、彼女は「すべてのネガティヴな記憶を自分自身の中に取り込み、まるでスポンジがすべての痛み、苦しみ、怒り、憤りを吸い込むようにカルマを浄化するのだ」と説明している。

 このパフォーマンスは自分自身、そして人々についての詳細な調査になったという。彼女は来館者の行動をいくつかの段階に分け、恐怖、羞恥心の克服、慣れ、そしてそれなしでは生きていけなくなる状態とした。人々は彼女に再び会うために美術館に戻ってくるのだそう。

5.隔離

 孤独というのはクロイトルの創作における一貫したテーマである。高い柱、棺、繭・・・。彼女は「わたしのパフォーマンスはすべて、今ここでわたしの感じていること」と話す。もう一つのパフォーマンス「隔離」もこのテーマに含まれているもので、これは近代芸術美術館「ガラーシ(ガレージ)」で行われた。

 クロイトルは赤いレッドカーペットで巻かれた棒で、自分自身を壁に刺している。この赤いカーペットは血の象徴であり、人間の動きを止める何か重大な出来事を表している。つまり何も手を打つことができず、今起きていることを認識しようとしているという状況だ。オリガはこのパフォーマンスについて、「ウクライナでの軍事紛争に対するわたしのリアクションだ」とコメントしている。

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