昨年末、パリを訪れた人はおそらく誰もがロシア科学文化センター横に設置されたマトリョーシカの大群に気がついただろう。これは、2025年の国際博覧会(万博)の開催地に立候補していたエカテリンブルグのアーティストらが誘致アピールの一環として、世界の画家とともに絵をつけた20体の巨大なアート・オブジェである。しかしこのマトリョーシカたちがパリに集結する前、それぞれのマトリョーシカはそれぞれ世界の大都市に設置されていた。
2025年の万博誘致委員会のコンスタンチン・プドフ委員長はこのプロジェクトについて、「それぞれの都市で、ロシアのアーティストと外国のアーティストがペアになってマトリョーシカに絵をつけた」と説明した。
スペインのマトリョーシカの片方に絵を描いたのは有名な女性アーティスト、ジーナ・ポルテラ。ウラルの自然とエカテリンブルグの美しさにインスピレーションを受けたという。作品のテーマは地球への愛なしに新たな技術を生み出すことはできないというもの。そのポルテラとペアを組んだロシアの芸術家パーヴェル・アガラコフは、もう一つのマトリョーシカに、世界を変える発見を行ったニコラ・テスラをイメージした模様を描いた。
ロンドンにあるプーシキン美術館の来館者を迎えたのは次の2体。一つは、ダニエル・ポノマリの手による2つの顔を持つマトリョーシカ。表側にはイギリスの女王エリザベス2世の顔、裏側にはフレディ・マーキュリーの顔がつけられている。このマトリョーシカには、善い行いをし、地球の未来について考えようというメッセージが込められている。
もう一つのマトリョーシカに絵をつけたドミトリー・シシキンの作品は、初の人工衛星打ち上げと初の有人宇宙飛行をテーマにしたもの。
ベルギーのアーティスト、1up_crewはロシアの伝統人形を現代女性に変えた。一方のドミトリー・シシキンはマトリョーシカにニューラルネットワーク風の衣装をつけた。
アレクサンドル・リシェリエ・ベリゼの作品はもっとも抽象的なマトリョーシカとなった。しかしこのマトリョーシカは楽観的に未来を見つめている。
これに対し、ドミトリー・シシキンはパヴェル・バジョフのおとぎ話「石の花」をモチーフ
ジュゼッペ・サザフィナは20世紀初頭に活躍したロシアのアヴァンギャルド画家の作品をテーマに、色鮮やかなマトリョーシカを作った。ティム・アヴァクモフは世界の変容をテーマに、「ピクセル」の衣装を身につけたインスタレーションを作り上げた。
マリーシカ・ネルはリサイクル資材を使用したマトリョーシカを制作した。
一方、アンナ・ベロウソワはマトリョーシカに、東洋の伝統的な女性の衣装を思わせる長いスカーフを巻きつけた。
パヴェル・フィートが制作したマトリョーシカは極めてクリエイティヴなもの。スローガンは「人生は夢であることを認識しよう!」
アリョーナ・アゼルナヤのマトリョーシカはすべての人形の中でもっとも伝統的なもの。その手にはカラヴァイを抱えている。
ニーナ・ノリテが制作した赤い耳あてをしたマトリョーシカは「世界中の平和」を擬人化している。
彼女とペアを組んだメリッサ・ヴァハボワは透かし彫りの「鋳鉄の」パビリオンを表現した。これは1900年にパリで開かれた万国博覧会でグランプリを受賞した傑作である。
イグナシオ・リヴァスの手によるマトリョーシカのお腹には花が描かれており、作品は結実を象徴している。
アンナ・ベロウソワのマトリョーシカは森で音楽を聴き、自然との調和を夢見ている。
クロード・チャンドラーはマトリョーシカの祖国を得意のスタンプの技法で表現した。
アンドレイ・カルポフはプリミティヴィズム(原始主義)のスタイルで絵をつけ、衣装には空と太陽を描き込んだ。
11月末、これらすべてのマトリョーシカがパリのロシア文化センター横に集合した2025年の万博の開催地は、投票の結果、大阪に決まり、マトリョーシカたちはロシアに戻ることになった。今、マトリョーシカたちはエカテリンブルグにある文化センター「ウラル」で来館者たちを出迎えているが、この後はエカテリンブルグ市内にあるその他のクリエイティヴスペースでも展示されることになっている。
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