バレエ界の輝けるスター、新星が舞う:11~12月にマリインスキー・バレエの日本公演

カルチャー
アンナ・ガライダ
 マリインスキー・バレエが、今年11月~12月に10日間にわたり、日本公演を行う。プログラムには、すでに評価の定まった古典的演目が選りすぐられた。

日本とマリインスキーの絆

 日本では、マリインスキー劇場のバレエは、地元のサンクトペテルブルクにおとらず良く知られている。それというのも、このロシア最古のバレエ団は、1960年代初頭以来、他のどの国よりも頻繁に当地で公演を行ってきたからだ。もはや日本のファンがそらで覚えていない、マリインスキーのレパートリーなど残っていないように思えるほどだ。

 同バレエ団のアーティストたちも、日本公演を心待ちにしている。彼らによると、日本ほど彼らの芸術を愛し理解してくれるところはないのだという。

 それは次の事実が一因となっているかもしれない。すなわち、日本にバレエを紹介し、真のブームを呼び起こした最初のダンサーが、あのアンナ・パヴロワであったこと。彼女は、サンクトペテルブルクのバレエを代表する偉大なバレリーナで、20世紀初めにマリインスキー劇場の舞台を鮮やかに彩った。

 近年の日本公演では、マリインスキー・バレエは、アメリカの天才振付師ジョージ・バランシーンの作品の独自の「読み」や、ソ連時代のクラシック・バレエの大御所、ユーリー・グリゴローヴィチの演出、また、今日世界で最も人気の振付師の一人、アレクセイ・ラトマンスキー(彼もペテルブルクにルーツをもつ)の作品などを紹介してきた。

今回の日本公演の特色

 さて今年2018年は、マリウス・プティパの生誕200年にあたる。彼は、フランス出身のバレエダンサー・振付師・台本作家で、19世紀なかばに帝政ロシアに渡り、60年間の長きにわたり活躍。まさに彼のバレエにおいて、今日ロシア・クラシック・バレエとして知られるものが確立された。そこでマリインスキー・バレエは、自らの原点を振り返り、プティパの名と結びついた演目を東京で上演することとした。

 すなわち、東京文化会館の舞台で、チャイコフスキーの曲による伝説的な『白鳥の湖』を上演する(この作品は、プティパとその弟子レフ・イワノフが復活上演し、成功を収めた)。また、プティパ作品としてはこれより早い『ドン・キホーテ』も。

 さらに、ディベルティスマンでは、ミハイル・フォーキンの『ショピニアーナ』とともに、巨匠プティパのもう一つの傑作『パキータ』 のグラン・パ・ド・ドゥを上演。ディベルティスマンには、『眠れる森の美女』、『海賊』、『タリスマン』の断片も含まれる。

 マリインスキー劇場のこれらの演目は、日本のファンは再三見ている。しかしクラシック作品の良いところは、再演されるたびに、新たな世代のファンとアーティストの双方が、それを「発見」していくことだ。こうした伝統により、マリインスキー公演は、わずか数日間で、このバレエ団が演じる無限の至宝を目にする機会をもたらす。

スターたちの競演

 日本公演は、1128日に『ドン・キホーテ』で開幕する。主役を演じるのは、ヴィクトリア・テリョーシキナ。華麗だが玲瓏とした魅力のある、マリインスキーの女王だ(戴冠式はしてないが)。彼女のパートナーは、韓国出身のダンサー、キミン・キム。そのユニークな技術と熱い演技で、テリョーシキナと調和のとれたペアをなす。他の演目で主役を踊るのは、ペテルブルクの新星、レナータ・シャキロワ、ティムール・アスケロフ、フィリップ・スチョーピンら。

日本の永久メイも登場

 『白鳥の湖』は1269日の予定。最初に踊るのは、ヴィクトリア・テリョーシキナとキミン・キムのおなじみのペア。キムの魅力は観る者のすべてを虜にするだろう。他にオデット姫・黒鳥のオディールを踊るのは、カリスマ的魅力あふれるエカテリーナ・コンダウーロワ、繊細な踊りがプティパ時代を彷彿とさせるエカテリーナ・オスモールキナ、そして期待の若手ナデージダ・バトーエワ。一方、ジークフリート王子役は、野性味のある美男子ティムール・アスケロフ、洗練されたザンダー・パリッシュ、そしてキミン・キムだ。

 『パキータ』 のグラン・パも、エカテリーナ・コンダウーロワとアンドレイ・エルマコフ という豪華な配役。

 なお、今回の日本公演は、マリインスキー劇場の二人の新星が華々しく国際デビューを飾る場となる。その一人は、日本の永久メイ(ながひさめい)。彼女は、プリンセスグレースアカデミー(モンテカルロ)卒業後、ペテルブルクに招かれた。2018年に、研修生からいきなりセカンド・ソリスト昇進した。もう一人は、マリア・ホーレワ。今夏にワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業したばかりだが、すでにいくつかの主役を演じている。