芸術家ナディラ・フィラトワが描いたモスクワ地下鉄の通勤客

カルチャー
ダニエル・チャルヤン
 ナディラ・フィラトワは最初、映像芸術の学校に通っていたころ、練習のつもりで地下鉄の中でスケッチを始めた。それがやがて毎日欠かさず情熱を持って続ける趣味となった。

 「わたしはモスクワ生まれで、子供の頃の記憶はあまりないのだけど、いくつか好きな場所があった。たとえば、雀が丘にあるピオネール宮殿はその一つで、母がよくいろんなクラスのために連れて行ってくれた」と彼女はモスレンタに語る。

 「自分が近くに住んでいたせいもあるけど堤防が好き。学校があったリガ駅のあたりは沢山の思い出がある。そこで一番面白いところは鉄道博物館」。

 「映像芸能を学ぶために通っていた学校で、毎週スケッチを1セット提出しなくてはならなかった。先生はみな交通公共機関の中がスケッチをするのに一番いい場所だと教えてくれた」とナディラは言う。 

 「地下鉄には毎日乗っている。好きなのは車両の中を動き回ること。どのくらいスケッチを描いたか数え切れない」。

 「時々、自分を描いてくれと酔っ払いにうるさく付きまとわれて、彼らはわたしが断ると怒り狂ってたわ」。

 「人をスケッチしているとき、その人に気づかれると気まずいので、そんな時はすぐに別の人に変えるの」。

 「立ってるときでも、座っているときでも、わたしがタブレットで何をしているのか覗き見ようとする人がいるととても嫌だ」。

 「前は、鉛筆かシャープペンシルで描いていたのだけど、iPad Proを使うようになってからは、盗られたりしないかと心配だったわ」。

  「わたしが描くのはとても面白い人たちだけど、彼らは降りていってしまうので、写真に撮ることにしているの」。そうでなければスケッチを消してしまうしかないからだという。

  「写真はどこにもアップロードしないから、スケッチに描かれた人が誰かは絶対わからないの」。