ロシアンドールについて知っていると思っていることはすべて忘れよう

カルチャー
アレクサンドラ・グゼワ
 豪華なドレスに身を包んだ美しい人形をコレクションに含めたいというなら、行列に並ばなければならない。ジャン・ポール・ゴルチエは2つも持っているのだとか。

 

 この実物そっくりのプロポーションを持つ人形は典型的なおもちゃの人形でもマトリョーシカでもない。ポリウレタン樹脂、プラスチック、あるいはセラミックで作られた40センチの高さの人形は、普通の人間のプロポーションで作られ、オートクチュールの衣装を身につけている。

 ペルミに住むエカテリーナ・ポポワとエレーナ・ポポワという双子の姉妹は2004年から人形を作っている。初期の作品は、当時人気があったマリリン・マンソン、ディタ・フォン・ティース、マドンナ、ジョン・ガリアーノなどの顔をしている。

夢を実現するためのコラボ

 2002年、ポポワ姉妹はSISTERSというブランドを立ち上げ、人気アーティストやファッションデザイナーたちとコラボレーションしている。現在、エレーナとエカテリーナはデザイナー、セレブ向けのファッションを手がけるマイケル・コステロとコラボした大規模なショーの準備をしている。

 2017年、ジャンポール・ゴルチエがこの人形をどうしても手に入れたいと申し出たのを受けて、姉妹はこの有名なデザイナーのために特別に2体の人形を制作した。ゴルチエが片方がピンクで片方が白のウィッグを持っていたことから、姉妹は人形の髪をそのようにした。

 姉妹はこう語る。「ゴルチエは片方の人形に手首にゴールドの蝶番をつけ、爪をゴールドにしてほしいとオーダーしました。

 そしてもう1つには体に3Dのタトゥーを入れてほしいと言いました。わたしたちの草木模様のタトゥーが好きだと言っていました」。

西洋と東洋、両方からのインスピレーション

 姉妹のコレクションはどれも違ったスタイル、民族色をもっている。彼女らは、「インスピレーションをいちばんもらうのは自然から。自然以上のデザイナーはいないのです」と話す。

 姉妹は最近のコレクションで「さくら」と名付けた東洋人形のデザインにも手を染めた。日本のグラフィックアーティスト、山本タカトから人形のタトゥーやボディーアートに彼の作品の一部を使う許可を得た。

 2018年には、オランダの芸術家、イングリッド・バールスとコラボして、アフリカの仮面からインスピレーションを受けたPOPと呼ばれる限定モデルを発表した。

流行を捉えて

 ファッションの流行には、特別に注意を払ってはいないと言うが、姉妹の作品は往々にして流行を捉えている。

 姉妹は2作目の人形の試作品のプレゼンテーションにあたり、ブレイズのたくさんのついたウィッグをいくつか用意して日本の緊縛のように、人形のボディーに絡めつけた。そのように、裸身を隠すことによって逆に肉体美を表現したのである。

 ちょうどその頃、英国の歌手、FKA twigs は「Pendulum」のビデオクリップで同じような試みをしていた。

 「このようなトレンドは自然に出来上がるものなので、変わったこととは思いません。私たちの仕事はファッションデザインで、人形は小さなモデルなのですから」。姉妹は自分らにはクリエイティブな強い直感力があるらしいと語る。

人形とは異なる2人

 姉妹はスタジオでの制作に時間のほとんどを使う。だから普段の服装はとてもカジュアルである。しかし、何足かのルイ・ヴィトンの靴を持っている。デザイナーであるファブリツィオ・ヴィティーから個人的に贈られたものだ。

 そして次に、姉妹は人形の洋服を自分たちのためにいくつか作ろうと考えていると言う。どんなものを選ぶのか待ちきれない。