FIFAワールドカップロシアを訪れる前に読んでおくべき5冊の本

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 少女たちや詐欺行為、謎めいたロシア精神――『戦争と平和』を読み終わるのには苦労したというのなら、ロシアに来る前に読んでおくべき短めの本をいくつかご紹介しよう。

1. アレクサンドル・プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』

 モスクワに行って、試合前にまずどこを訪ねようかと思っているところを想像してみてください。もちろん、赤の広場だろう!豪華な店舗やレストラン、たくさんの観光客に囲まれていると、この広場が、400年前には公開処刑や論争の場だったなんて信じられないことだ。

 例えば、イワン雷帝の末子が早過ぎる死を遂げた後、この国を誰が治めるのかは、はっきりしていなかった。そうして、ボリス・ゴドゥノフが、赤の広場で、手に負えなくなった群衆たちによって選ばれたのだ。

 素晴らしい詩人アレクサンドル・プーシキンは、韻文で書いたこの史劇の中で、動乱に時代はいかにしてロシアに到来したのか、そして、自分が手に入れた玉座の継承者だったイヴァン雷帝の息子の死をめぐって非難された時に、ゴドゥノフが何を感じたのかという歴史的な物語を世に広めたのだ。

2. ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』

 これは、モスクワっ子たちが最も好きな小説のひとつだ。だから、もしモスクワの人たちに良い印象を与えたければ、この作品のプロットを知っているといって驚かせればいいのだ。パトリアルシュ池を散策してみてください、多くのバーがある人気のトレンディスポットで、この小説が始まる場所でもあります。「他人に話しかけてはいけません」と書いた看板が目に入るかもしれませんが、気分を害さないでください。

 外国の外交官を装った悪魔がモスクワを訪れ、人々を魔力で欺いて混乱に陥れていく。時を同じくして、彼は美しい女性と契約を結び、悪魔の舞踏会を催すのだ。

 とても面白いこの本は、どうすれば騙されないですむか、どうすれば闇の力を見分けられるのかを教えてくれることだろう、そして、イエス・キリストに関する2、3のことも。

3. ニコライ・ゴーゴリのペテルブルクもの

 多くのサッカーファンがサンクトペテルブルクに来ることが予想される。素晴らしい選択だ!ペテルブルグは300年間ロシアの首都だったから、優れた作家たちの多くがここに住み、この街のどんよりとした風景に根差した最高の物語を創ったのだ。陰鬱なドストエフスキーを覚えているか?彼もそうした作家の一人だったのです。

 ニコライ・ゴーゴリは、ドストエフスキーの鬱々とした気分に導いたりはしない。『ネフスキー大通り』を読んでみてください。この街のメインストリートで出会えそうな人たちが描かれている短編だ。そうなんです、ゴーゴリは、19世紀に執筆を行ったのだが、私たちは、今日もなお、この手の人を見かけたり、顔を突き合わせたりすることがあるのだ。

 『外套』は、貧しい役人の物語だ。彼は、典型的なペテルブルク人で、いちばんの宝物だった、新着した外套を盗まれてしまう。移ろいゆく幻影のような『鼻』を読んで笑うことも忘れないでください(さらに、ヴォズネセンスキイ大通り36番地にある鼻の記念碑を見ることも)。それから、短編の『肖像画』には少しゾっとすることだろう。

4. イリヤ・イリフとエヴゲニー・ペトロフ『十二の椅子』

 この二人の作家は、どの作品を読んだとしても笑わせてくれることだろう。彼らには、『サッカーファン』という題名のおもしろい短編があって、それは、ソ連の人たちのサッカーの試合への愛と、小さな子どもから高齢のお年寄りまで(共産党の役人たちでさえ)、サッカーの試合を見に行くためなら、今やっていることを忘れてしまうほどである様子が描かれている。

 『十二の椅子』は、おそらく、彼らの最も有名な作品で、二人の詐欺師が、内側にダイヤモンドが隠されていると言われている椅子を探して、ロシアじゅうを旅する物語だ。もしも読む暇がなければ、少なくとも、同名のソビエト映画を見てください!

5. イワン・ブーニン『暗い並木道』

 多くの外国人男性が、すでにTinder(ティンダー)でロシア美女を探しているのだろうことは想像できる。(そして、1980年のオリンピック年に生まれた子どもがかなりいたように、2018年ワールドカップの年生まれの子どももかなり誕生するのではないかと期待している)。ロマンティックで、またエロティックな文学体験をするため、そして、謎めいたロシア女性のことをもう少し理解するために、この短編集を読んでみてください。

 この短編集の中から、読む物語は選べるが、見逃してはならないのが「聖月曜日」だ。この短編では、ある男女が、情熱的で静かな恋愛をするのだが、その後、彼女は姿を消し、数年後になってようやく彼は彼女を見つけ出す、しかし、もはや手の届かぬ存在になっていて…。それから「カフカース」、そして表題作の「暗い並木道」も注目に値するものだ。そして、「軽い呼吸」は、この短編集には収められていないが、非常に感動的で、ロシアの女性が愛のためならどんなことをする心づもりでいるのかを教えてくれる。

 

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