善か悪か:ロシア人俳優がハリウッド映画で演じた役

カルチャー
ボリス・エゴロフ
 現代のロシアの役者は、ロシア人あるいはスラヴ人のキャラクターを演じるようしばしばハリウッドから要請される。伝統的に、彼らは悪役を演じてきたが、いくつか注目すべき例外がある。今回ロシア・ビヨンドは、近年のハリウッドの大ヒット作品でロシア人俳優が演じた特に注目すべき役を取り上げる。

『エネミー・ライン』(2001)のヴラジーミル・マシコフ

 この“善玉 vs. 悪玉”の映画はボスニア紛争(1992~1995)の時期に設定されている。あるアメリカ人パイロット(オーウェン・ウィルソンが演じる)はボスニアのセルビア人勢力に撃墜され、安全地帯に逃れようとする。ロカー将軍の勢力は彼を必死に捕えようとする。

 ヴラジーミル・マシコフは、ロカーの右腕であるサーシャを演じている。サーシャは熟練のスナイパー、そして追跡者でもある。容赦なく残酷な彼はこの映画の主要な敵役の一人だ。この役は典型的な悪役で、敵味方に対し何の感情も持たない。彼は自分を守るためなら何でもし、仲間を困難な状況に置くことも憚らない。

 

『ピースメーカー』(1997)のアレクサンドル・バルーエフ 

 ロシア人の将軍アレクサンドル・コドロフ(アレクサンドル・バルーエフが演じる)は、この政治的アクションスリラーの中で、ジョージ・クルーニーやニコール・キッドマンが演じるヒーローたちに対する一番の敵役である。

 悪人コドロフは、ロシアの軍事基地から移動中の列車から大陸間弾道弾を盗もうと画策する。コドロフの手下らは、自分たちの痕跡を消すため核装置を爆発させる。 

 映画が進むにつれ、外国のバイヤーにミサイルを売ろうというコドロフの計画は頓挫し、彼はしまいには、クルーニーが演じる米軍特殊部隊大佐によって殺害される。

 

ダイ・アナザー・デイ(2002)のミハイル・ゴレヴォイ 

 ジェームズ・ボンド・シリーズの映画の一つで、ミハイル・ゴレヴォイはロシア人科学者のヴラジーミル・ポポフを演じている。彼は、太陽エネルギーを一点に集中できる反射鏡軌道衛星“イカロス”を作り出した。この兵器を使って、ポポフのボスである北朝鮮のタンサン・ムーン大佐は韓国を攻撃することを計画する。

 ジェームズ・ボンド(ピアース・ブロスナンが演じる)との飛行機での戦いの間、機内の気圧が下がり、ゴレヴォイは機外に投げ出されて死ぬ。

 

『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)のイーゴリ・ジジーキン

 ふつうインディ・ジョーンズはドイツ人と戦うが、今回彼は共産主義者らと対面する。イーゴリ・ジジーキン演じるアントニン・ドフチェンコ大佐は、ペルーのジャングルにあるテレパシー能力を持つクリスタル・スカルの捜索でソヴィエト兵の一団を率いている。

 高齢にもかかわらず、インディは戦いの中で体格の良いドフチェンコを倒す。倒された大佐は巨大な赤アリの群れの中に落ち、生きながらにたちまち食べられてしまう。

 

『ヴァンパイア・アカデミー』(2014)のダニーラ・コズロフスキー

 ロシアで最も有名な俳優の一人、ダニーラ・コズロフスキーは吸血鬼のコメディーで指導的な役を演じた。彼の演じるドミトリー・ベリコフはシベリア出身のロシア人ダンピール(半人半吸血鬼)だ。彼はこの映画の主人公ローズ・ハサウェイの良き助言者でボーイフレンドである。

 

『ブラック・シー』(2014)のコンスタンティン・ハベンスキー

 ジュード・ローが主役を務めるこのアメリカ・イギリス映画は、第二次世界大戦中にジョージアの沖合で金塊の積荷とともに沈んだドイツのUボートの捜索を描いている。

 コンスタンティン・ハベンスキー演じるロシア人船員の“ブラッキー”は乗組員の一人だ。彼は映画のラストを迎えることができない。潜水艦の気圧が上がって正気を失った別の船員に刺されて死んでしまうのだ。

 

『セイント』(1997)のヴァレーリー・ニコラエフ 

 怪盗紳士サイモン・テンプラー(ヴァル・キルマーが演じる)が活躍するこの映画は、1990年代の危機の間のモスクワの出来事を描いている。ロシア人オリガルヒで犯罪者のイヴァン・トレチヤク(ラデ・シェルベッジヤが演じる)は、弱い政府を倒して権力を奪うことを切望している。

 サイモンは善玉の側につき、トレチヤクと、その息子でヴァレーリー・ニコラエフが演じるイリヤと対決する。珍しく、この映画には二つの結末があり得る。そのうち一つでは、トレチヤクは赤の広場でクーデターの失敗後に逮捕される。もう一つのバージョンでは、イリヤは戦いの中でテンプラーに殺害される。

 

『ウルヴァリン』(2013)のスヴェトラーナ・ホッチェンコヴァ

 スヴェトラーナ・ホッチェンコヴァ演じるミュータント・ヴァイパーは、ウルヴァリンの名でも知られるローガンの主要な敵役の一人だ。彼女は危険な敵で、致死性の毒を含め蛇のような能力を持つ。

 最後の戦いの場面で、ヴァイパーはローガンの助っ人ユキオによって殺される。

 

『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011~)ユーリー・コロコリニコフ

 この長編英雄テレビシリーズでユーリー・コロコリニコフが演じる“野性的な”スターの登場は、短いが光っている。このキャラクターはマグナー(自由民の中で最も獰猛な種族の一つセンのリーダー)だった。

 スターは黒城の攻撃に参加し、夜警団の多くの戦士を殺す。結局彼は、ジョン・スノウとの決闘に敗れて死ぬ。

 

プレデター(2010)のオレグ・タクタロフ

 俳優で元総合格闘家のオレグ・タクタロフ演じるニコライ・フョードロフは現代のハリウッド映画に現れる数少ない善玉ロシア人キャラクターの一人だ。

 ロシアの特殊部隊の兵士ニコライは、チェチェンでの戦闘中プレデターに捕らえられ、他のさまざまな国のスーパー戦士とともに未知の惑星の狩場へと放り込まれる。

 強力な銃で武装したフョードロフはプレデターたちの標的となる。彼はためらうことなくチームの一員エドウィンを助けに引き返すが、結局この行為が命取りとなる。

 負傷したニコライは、対人地雷で自爆して敵を吹き飛ばす。