モスクワで日本の夏祭りJ-FEST

 モスクワ都心のゴーリキー公園の一角にある、現代美術館「ガレージ」前の 「芸術広場」。いつもは閑散としているのに、今日は見違えるばかり!たこ焼きとラーメンの屋台の前に、何キロも続く長蛇の列。色とりどりの浴衣を着た女の子たち。赤白の提灯。日本のおもちゃや小物を売っている売店。そしてこれらすべてが、和太鼓の轟をともない、異次元空間を生み出していた。

日本の夏祭りのスタイルで

 ロシア最大の日本文化フェスティバル「J-FEST Summer 2017」はざっとこんな様子で目に飛び込んできた。イベントはすべて屋外で行われており、入場は無料だ。フェスティバルの形と中身は、日本伝統の夏祭りを踏まえている。

アレクサンドラ・バズデンコワ撮影アレクサンドラ・バズデンコワ撮影

 「私は日本語にすごく興味があって、勉強を始めました。で、こういうフェスティバルがあると聞いて、ボランティアをやってみることにしたんです」  。「J-Fest」と書いたTシャツを着たナターシャさんは笑いながら言う。

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 「ここはとってもポジティブな雰囲気!日本文化が好きな人は優しいし、少し子供の魂を持ってますね」。彼女はこう続けながら、筆者の目をのぞき込んだ――筆者がその範疇に入るかどうか見極めようとするように。

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 「私はアニメスタイルの画家です」と、ひきとったのは、クセニアさんで、やはりボランティアだ。「気持ちよく時を過ごそうと思って。私は考えたんですが、別に客として行かなくてもいいじゃないか、皆を助けてあげようって」。この2人の女の子は「賢い遊び」のコーナーで働いている。

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 「ここには碁、麻雀もあるし、剣玉もできるし、漫画も置いてます。日本語のマスタークラスも開講しますよ。それにいろんな面白い人たちと知り合えるし」とナターシャさんは説明してくれた。

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 「お客さんたちからたくさんの質問を受けます。寄って来て、プログラムについて尋ねます。お客さんには、お祭りの全体の様子が分からないのに、ここにはほんとにたくさんのイベントがあるから、もちろん、ボランティアに聞いたほうが簡単ですね」

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ポップカルチャーも伝統文化もしっかり紹介

 この間、メインステージでは、日本舞踏家、飛鳥舞央さんが、盆踊りの踊り方を教えてくれている。

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 ある屋台には、アニメキャラクターのフィギュア、ピカチュウの縫いぐるみ、日本のお菓子や文房具、ロシア語に訳された漫画本、日本のレコードなどがあり、日本の技術で焼かれた陶器なども売られていた。その工房の共同設立者であるプローホルさんは、昼食を食べにいくところだった。

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 「この前、日本文化祭に行ったのは6年前ですが、どんどん大規模になって、しかも面白くなっていますね」と彼は、カレーライスの屋台への道すがら、印象を話してくれた。

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 「日本人の文化の広め方、伝え方は見事ですね。ポップカルチャー以外に、伝統文化がしっかり紹介されているのもいいことです。だから、全体として伝統の祭りの雰囲気が保たれています。場所も配置もいいし、スタンドも良くできてます。ほら僕の父は、革製のコップのコースターとベルトを買いました。ほとんどすべての日本人がここに集まっているようなのも嬉しいです」

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カレーライスの屋台に長~い行列

 私たちはフードコートに近づくと、憧れのカレーライスには、長蛇の列ができているのに気がついた。列のしっぽはどこか遥か彼方だ。

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 「ふむ…唯一の難点は、食べ物に長い列ができていることですかね」とプローホルさんはがっかり。「でもまあ、どこのマーケットでもこんなもんじゃないですか」

アレクサンドラ・バズデンコワ撮影アレクサンドラ・バズデンコワ撮影 そうこうしているうちにも、人の数はどんどん増え、いよいよ洗練されたコスプレイヤーが現れてきた。

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 今年のモスクワは、時ならぬ雷にしばしば見舞われ、延々と雨が降り続いてきたが、今日は例外のようで、太陽がまぶしく輝いている。

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 ちなみに、この場所がフェスティバルに選ばれたのは偶然ではない。日本の美術家、村上隆のロシア初の大規模な展覧会が、9月末に、ここ、現代美術館「ガレージ」で始まるのだから。

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