トルストイのイメージあれこれ

グーグル・ドゥードゥル「レフ・トルストイ」。ロマン・ムラドフ・絵。2014年、©ロマン・ムラドフ

グーグル・ドゥードゥル「レフ・トルストイ」。ロマン・ムラドフ・絵。2014年、©ロマン・ムラドフ

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 作家レフ・トルストイがロシアの文化と社会生活におよぼした影響はとても大きく、道徳の原則を宣言するヒゲをはやした老人のイメージは、普通名詞、ミーム、文化コードの一部のようなものになった。

1.     トルストイ=罪人

地獄のレフ・トルストイ。生神女示現イコン教会のフレスコ画の断片。クルスク州、1883年地獄のレフ・トルストイ。生神女示現イコン教会のフレスコ画の断片。クルスク州、1883年

 タゾヴォ村(モスクワの南500キロ)の教会にある最後の審判のシーンのフレスコ画では、トルストイが炎の地獄で焼かれている。トルストイは教会を制度として批判し、教会の教義を受け入れなかったことから、教会から破門され、信者にも反感を持たれた。フレスコ画は教会の教区信徒の同意を得て描かれた。

 

2.     トルストイ=キリスト教徒

ヤン・ストィカ。キリストを抱擁するレフ・トルストイ。1910年ヤン・ストィカ。キリストを抱擁するレフ・トルストイ。1910年

 「破門者」という名称で有名なこの絵画には、キリストに反抗した邪説の説教者ではなく、主の前で柔和さを示し、頭をさげるキリスト教徒として描かれている。

 

3.     トルストイ=神

巨人と小人。レフ・トルストイと同時代の作家。フョードル・フィドレルのコレクション、作者不明の風刺画。書籍「レフ・トルストイ伯爵。肖像画、版画、絵画、彫刻、風刺画などにおけるロシアの地の偉大な作家」、サンクトペテルブルク、1903年巨人と小人。レフ・トルストイと同時代の作家。フョードル・フィドレルのコレクション、作者不明の風刺画。書籍「レフ・トルストイ伯爵。肖像画、版画、絵画、彫刻、風刺画などにおけるロシアの地の偉大な作家」、サンクトペテルブルク、1903年

 この風刺画はバチカン美術館にあるナイル川の神の彫刻を模している。大きなトルストイと小さな他の作家のコントラストが、トルストイの文学的な優位性を示していることは明らかである。

 マクシム・ゴーリキーもトルストイと神を比較して、宇宙創造の秘密がわかると言っていた。

 

4.     ズボンをはいていないトルストイ

ナルキス・ブーニン。魚釣り。1903年、=ボナムズナルキス・ブーニン。魚釣り。1903年、=ボナムズ

 ナルキス・ブーニンの絵画は当時の人に強い印象を与えた。多くの人がシャツしか着ていないトルストイの絵に憤った。トルストイの脇には画家イリヤ・レーピン(水色のシャツ)が描かれている。レーピンは、トルストイの絵画を複数描き、トルストイへの崇拝に貢献した、と説明している。

 

5.     トルストイ=人民の良心

イリヤ・グラズノフ。永遠のロシア。1988年、=モスクワ国立ソ連人民画家イリヤ・グラズノフ絵画ギャラリーイリヤ・グラズノフ。永遠のロシア。1988年、=モスクワ国立ソ連人民画家イリヤ・グラズノフ絵画ギャラリー

 画家イリヤ・グラズノフの課題は、ロシア全史を一枚の絵画に描きまとめ、現在の場所を示すことだった。トルストイ(右下)はここで、同時代の人および追随者に対して大きな影響をおよぼす人物の一人になっている。トルストイの宗教・倫理的教義の原則の一つである、悪に暴力で抵抗しないという「無抵抗」のプレートを胸に下げている。

 

6.     トルストイ=観念論者

トルストイと雄鶏。オレグ・クリクのインスタレーション。1997~2004年、=オレグ・クリク/マルチメディア・アート美術館トルストイと雄鶏。オレグ・クリクのインスタレーション。1997~2004年、=オレグ・クリク/マルチメディア・アート美術館

 現代の画家クリクは、トルストイの作品にいつも感銘を受けていたと話す。トルストイのイメージを使って、「高」と「低」を一つにした人類の文化遺産を描いた。トルストイは自然を文化よりも高く配置していたため、「高」とは自然すなわち雄鶏で、「低」とは文化すなわちトルストイという描写である。

 

7.     トルストイ=中傷の被害者

無声映画「偉大な老人去りし」、ヤコフ・プロタザノフ監督。1912年

 トルストイの息子のレフを含む当時の人にとって、この映画は許しがたいものであった。評論家は、映画の登場人物の誰もが「最も醜悪な照明にさらされた」として、トルストイの人生の私的な部分の憶測と描写を批判した。キリストが死亡したトルストイを天で迎えている最後のシーンも、批判の的になった。

 

8.     トルストイ=インディアナ・ジョーンズの師で友人

テレビ映画「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険。父との旅」のシーン。ディーパ・メータ監督およびマイケル・シュルツ監督。1996年=ルーカスフィルムテレビ映画「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険。父との旅」のシーン。ディーパ・メータ監督およびマイケル・シュルツ監督。1996年=ルーカスフィルム

 家族のもとを離れた主人公が、家から去ったトルストイと出会う。2人は当初、理解しあえなかったが、その後一緒に旅をして、さまざまなできごとに遭遇し、最後に家に戻ることを決める。トルストイはここでインディアナ・ジョーンズの師で、自分の知恵を共有し、別れ際に聖書を贈る(正しくは、インディアナの野球カードと交換する)。

 

9.     ミームとしてのトルストイ

レフ・トルストイの肖像画、イリヤ・レーピン画、1887年=トレチヤコフ美術館/コラージュレフ・トルストイの肖像画、イリヤ・レーピン画、1887年=トレチヤコフ美術館/コラージュ

 トルストイはたくさんのミームを生んだ。最も有名かつ失礼なのは、「言葉ではレフ・トルストイだが、実際はフレン・プロストイ(愚鈍な野郎)だ」(フレンはわさびのことだが、男性器も意味する)だが、他にもいろいろある。ダメな話し相手を寛容に見つめたり、「あちゃー」と顔を手で覆ったりするトルストイの、知的な優位性を示すミームである。

 

10.  トルストイ=世界規模のスター

グーグル・ドゥードゥル「レフ・トルストイ」。ロマン・ムラドフ・絵。2014年、=ロマン・ムラドフグーグル・ドゥードゥル「レフ・トルストイ」。ロマン・ムラドフ・絵。2014年、=ロマン・ムラドフ

(グーグル・ドゥードゥル「レフ・トルストイ」。ロマン・ムラドフ・絵。2014年、©ロマン・ムラドフ)

 グーグルはトルストイの生誕186年をドゥードゥルにした。トルストイ自身や「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」、「イワン・イリッチの死」などの有名な作品についての説明を加えた。

 

「アルザマス」誌の記事を参照。作成者はアナスタシア・トゥリャコワ。

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