カントリースタイルのフェンスで装飾され、ウェブカメラが設置された強化ガラス製のスペースが14ある新規猫預り所の「サー・キャット」が数週間前、モスクワのビジネスセンターでオープンした。都心から自動車で20分の距離にあるサー・キャットは、飼い主が休暇に出かけている猫を現在6匹世話している。滞在「客」は1日24時間週7日、常時監視下にあるので、飼い主はログオンして愛するペットの様子をスマートフォンを使って覗き見ることができる。
創設者によると、サー・キャットは質素ながら快適な宿泊施設で、スイートは強化ガラスと最も衛生的な材料でできている。一泊450ルーブル(12.5ドル)の料金では、宿泊客は広さ1.3平方メートル、長さ2.3メートルのスペースに収容され、柔毛状の物で覆われた5層構造のアクティビティ用遊具、マット、餌が入ったボウル、砂箱や換気システムが備えられている。
きっかけ
このプロジェクトの創始者のアンドレイ・プーシキン氏は、猫のためのホテルというアイデアを初めて思いついたのは、クリスマス休暇で留守にしている間の、飼い猫の一時的な預け場所を探していたときだったと明かした。「私の留守中に妹がペットの世話をしてくれたことがあって、その次には友人が面倒を見てくれましたが、その時は面倒をみることができる人が誰もいなかったので、私は旅行をキャンセルしてクリスマスを自宅で過ごさなければなりませんでした」
一泊450ルーブル(12.5ドル)の料金では、宿泊客は広さ1.3平方メートル、長さ2.3メートルのスペースに収容され、柔毛状の物で覆われた5層構造のアクティビティ用遊具、マット、餌が入ったボウル、砂箱や換気システムが備えられている。 =写真提供:sircat.ru
プーシキン氏は、ペットの飼い主の多くは、モスクワ郊外に数多く存在するネコ向けの保養所について慎重だと述べた。「猫好きの人は、飼い猫の生活環境にある不確定要素を恐れるものです。彼らが受けられる最大限のサービスといったら、猫が大丈夫だということをホテルの管理人から電話で知らせてもらえることでしょう」
反対に、サー・キャットは、都心への近さ、それぞれのスペースに設置されたオンラインのウェブカメラ、清潔で広々としたケージ、お手頃な料金など、他の猫預り所に欠如している充実したサービスを提供している。
ウェブカメラサービスは、面白い話題の良いネタになることがある。カメラを通じて自分の猫が食べ物の強い好き嫌いを示していることに気づいたある客は、プーシキン氏に電話し、鶏の胸肉をドライフードに交換するように依頼した。
脱サラ
「私はCEO、マーケティングディレクターと管理者の役割を兼ね合わせています」と言うプーシキン氏は、かつては企業金融を扱う専門家だったが、この新事業に完全に専念するために、ロシアの国営企業での高給の仕事を辞めなければならなかった。安定した企業生活から起業家の挑戦的な生活へと転身する決断の理由は何だったのかと尋ねられると、プーシキン氏は、今の自分は人々のために本当に役立ち、彼らの生活を楽にすることができていると感じていると語った。
「このプロジェクトをゼロから立ち上げるのには3ヶ月しか要しませんでした。そして、新たな宿泊スペースを追加し、サービス内容を調整し、喜んでいただけた飼い主のお客様からのフィードバックをいただく中で、この新事業がどのように日々成長していくかが分かるようになりました」と分析する。
目標
この創設者によると、彼が設定している主な目標は、1年半から2年間でコストを回収できる程度まで猫預かり所の年間稼働率を引き上げることにある。夏期の旅行シーズンは、休暇に出かける客が飼い猫を預かり所に持ち込むというのが主なパターンだが、非ピーク時の季節でも、出張で留守にするため、猫のための良質な宿泊施設を求めているビジネスパーソンなどにより、稼働率を簡単に維持することができる。
プーシキン氏は、ホテルのドアにつけられた宿泊施設を見下ろす小さな窓を指して、次のように語った。「このビジネスセンターで開業してまもなく、ビジネスセンター内のあらゆる会社の間で猫預り所の存在が知れ渡りました。それほど口コミの力は強力なのです」
ホスピタリティ・インカム・コンサルティング社のエレナ・リセンコーワ社長は、「この種の事業は、その創設者にあまり高い収益をもたらしません」と述べた。
猫のホテル「サー・キャット」は、オンラインのペット監視サービスを提供する。=ビデオ:YouTube.com
「ホステルやペット服店と同様に、ペットホテルは小中規模のビジネスに適したアイデアですが、大規模なプロジェクトには適しません」とリセンコーワ氏は指摘する。そして、10年ほど前に最初のペットの保養所がロシアに出現し始めて以来、この業界が大幅な成長を遂げたり主力企業が登場することはなかったと付け加える。
外国の経験
猫の頭数が世界で三番目に多いロシアだが、猫預かりサービスの分野では後塵を拝している。世界最大のネコ頭数を誇る米国では、動物用宿泊施設やペットの宿泊が可能なホテルには長い歴史がある。
リセンコーワ氏によると、ロシアのホテルはペットフレンドリーな環境からかけ離れている。「動物同伴のチェックインを禁止するホテルがまだあります。場所によってはペットの同伴が可能な施設もありますが、清掃のために追加料金を請求されます」と説明する。彼女は、ホテル業界でこのようなサービスがなかなか提供されない理由は、ロシア人観光客は通常ペットを連れて旅行しないからなのだと付け加えた。
「動物に対する配慮は、成熟社会に見受けられる兆候です。ロシアは、まだこのレベルに達していません」とリセンコーワ氏は結論づけた。