大斎のスイバスープ

スイバは、調理する価値が十分にあるすばらしく多用途ながらデリケートなハーブ。そのスイバのスープは、東欧全域において伝統的で、受難週にぴったりの料理だ。

 私がロシアでの暮らしが大好きな理由のひとつは、1年を通してスイバが手に入ることだ。この葉菜はヨーロッパや米国では佳肴なのだが、その春遅くの短期間の出現は、伝説的なプリマドンナによる「今晩限り」のパフォーマンスであるかのように扱われる。

 しかしロシアでは、冬の真只中であっても、ファーマーズマーケットにちょっと足を運べば、肉や魚のソース(スイバとサケの組み合わせは、鶏の胸肉とスイバと同様に夢のような取り合わせだ)や伝統的なロシアの緑のボルシチあるいはシュチャヴェレヴィー・スープを作るのに必要な量のスイバが簡単に手に入る。

 

東欧伝統の食材 

 スイバのスープは、さまざまな東欧料理の共通点をつなぐ淡い緑色の糸のようなものだ。ポーランド人は固茹で卵とサワークリームを添えて冷たくして食べる。ウクライナ流の緑のボルシチでは、スイバにジャガイモ、ニンジンやその他の根菜を組み合わせて透明なスープにするが、これは温かくして食べる。私が米国で遭遇したチェコのバージョンは、りんごとスイバの取り合わせにより、同時に甘くてピリ辛い、きわめて独特の風味を醸し出していた。フランス風のスイバは格段のものだ。卵とクリームでとろみをつけてあり、滑らかなピューレになっているのだが、その両方とも、スイバの葉を煮詰めた際にできるツンとくる、やや胡椒がきいたおおらかな風味を完璧に引き立たせる。

 だが、スイバの調理には2つだけ欠点がある。一度摘んだら短時間のうちに使わないと、すぐにしなびてしまうということがひとつ。もう一つは、葉を茎から摘み取らなければならないという面倒な問題がある。これは手間と時間がかかることがあるが、不可欠な作業だ。スイバの茎はきわめて苦く、スープやソースの味を台無しにしてしまう。

 

バター、卵なしで試行錯誤 

 ロシア正教徒にとっては、まだ大斎(*カトリック教会などの四旬節に相当し、受難週までの6週間を指す)の精進料理しか食べない期間中で、彼らはあらゆる乳製品、卵、肉、魚、アルコールや砂糖を避けるので、またしてもここに料理のチャレンジが出現する。バター、たまごやクリームといった脇役の力に頼らずに、伝統の味に匹敵するすばらしい味のスイバスープをどうやって作るか、という問題である。

 何回か試行した結果、私はついに食感と風味の間で調度良いバランスを達成することができた。興味深いことに、澱粉を多く含んでいるためスープにとろみをつけるのに使えると私が見込んでいたジャガイモは、スープをあまりにもこってりとさせてしまうことがわかった。また、その代役となるにはズッキーニは苦すぎることも判明した。

 一方、セロリの根はスイバの酸っぱい風味を上手に引き立て、ゆっくりとカラメルにした長ねぎとナツメグは、私が思い描いていたすてきなベースとまろやかな口当たりを実現してくれた。最後に、スイバの永遠の友ともよぶべきホウレンソウは、スープの色彩、食感や風味を引き立ててくれる。  

 スイバの葉をバターでゆっくりとソテーにした時の、あの錬金術のようなすばらしさに取って代わるものはないのだが、いくらかの大さじの水でゆっくりと煮詰めることで、スイバの特徴である決定的な風味はなんとか引き出すことができた。少しの塩とレモン汁を一絞り、それに赤唐辛子粉をひとつまみ足して完了だ! 

 

精進料理でないバージョン 

 大斎の精進料理ではないバージョンを作る場合は、野菜ストックの代わりに鶏がらストックを使用し、スイバとホウレンソウの葉を大さじ4のバターでソテーにして、長ネギが「汗をかく」ように水分が出てきた段階で大さじ2の砂糖を加える。スープはステンレス製の刃がついたブレンダーかフードプロセッサーでピューレにし、熱いピューレ状のスープ1カップを、クリーム状になるまで撹拌した2個の卵黄にゆっくりと注ぐ。最後にサワークリームかヘビークリームをたっぷり足す! 

 

大斎のスイバとホウレンソウのスープ

材料 

鶏ガラあるいは野菜ブロス、約3リットル

ズッキーニ、2個を1.3センチほどの厚さに輪切りする

セロリの根、1個

長ネギ、4本をきれいに洗って大雑把に切る

スイバ、3カップ、葉脈や茎を取り除く

若どりホウレンソウ、2カップ

パセリ、1カップをみじん切りにする

塩、大さじ1

レモン汁、大さじ2

ナツメグ、大さじ2

赤唐辛子粉、小さじ半

バター*、大さじ4

 

1.深く底の厚いスープ鍋で半カップの水を沸騰させ、弱火にする。長ネギを柔らかくなるまでソテーにし、くたくたになってきたところで大さじ半の塩と大さじ1のナツメグをかける。

2.セロリの根、ズッキーニとストックを加えて沸騰するまで加熱し、その後は野菜がフォークを刺して柔らかくなっていることが確認できるまでとろ火で調理する。

3.大きめのソテーパンかフライパンを中火にかけ、大さじ4の水を加え、ゆっくりと沸騰させる。スイバの葉を加え、葉がくたくたになり、水分が浸出しきるまで調理する。 

4.調理したスイバをスープ鍋に入れ、かき混ぜてさらに3分間調理する。その後未調理のホウレンソウとパセリを足し、残りの塩とナツメグ、そして好みに応じて赤唐辛子粉を加える。火を止めてレモン汁を加える。 

5.スープを一定量ずつ好みの食感になるまでステンレス製の刃がついたブレンダーかフードプロセッサーにかける。

 

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