欧米諸国でも黒猫は不吉な動物とされる=アントン・デニソフ撮影 / ロシア通信
世界の多くの人々がそうであるように、ロシア人は邪視(害をもたらすと信じられている邪悪な眼差し)を信じ、恐れる。例えば、自分の子供について良い事を言われた親のなかには、左肩越しに唾を吐く素振りをし、木に三回触る人がいる。
他には、近く実現しそうな夢について語る時や、これから行く旅行について話をする時に、同じ動 作をすることがある。ロシア人は、良い事や褒め言葉に邪視が向けられるのを恐れ、魔除けのために木(樹木に限らず、木製のものならなんでも良い)に触れる。木が近くにない場合、同じ事だと言って、多くのロシア人は自分の頭をコンコン叩く。
ロシアではお金に関するジンクスが多い。例えば、タクシーの運転手やレジ係は、お金を手渡しされるのを嫌がり、車のダッシュボードやレジの隣のトレーに置いてくれと言う事がある。これは決して、潔癖性で他人の手を触りたくないということではない。お金は負のエネルギーを含み、様々な人々のエネルギーを伝える事が出来ると信じられている。乗客がタクシーを降りたり、買い物客がレジを離れたりすると、エネルギーを伝える力は失せるとされているので、置いていったお金を手に取る事ができる。
ロシア人と同居する場合、ゴミを夜に出すのは控えるべきだ。夜に出すと、家に不幸が訪れるとされている。ゴミの匂いが気になる場合、しっかりしたゴミ袋に入れ、きちんと封をすればいい。
ロシア人は、空のボトル、鍵や小銭をテーブルに置いてはいけないと信じている。縁起が悪く、金運が低下したり、涙を流すような不幸に繋がるとされている。ちなみに、これは家庭での話だけではなく、公共の場でも同じだ。レストランでの食事でも、人は空いたボトルをテーブルの下に置いたり、ウェイターに渡そうとする。
これらの物は、ロシア人へのプレゼントに適さない。ハンカチは涙を呼ぶと言われており、ナイフは敵を意味し、時計は別れの象徴だ。万が一知らないでこのような物を贈った場合、贈られた人は代わりに小銭をくれる事があるが、驚くなかれ。こうすれば、その贈り物は貰ったと言うより、買ったことになる。高価な贈り物に小額の小銭を渡されて驚いても、小銭は受け取らなければいけない。
家やアパートの敷居に立ったり、敷居を挟んで人と話したり、物を渡してはいけない。古代スラヴ人は、敷居には悪魔が宿っていると信じていた。宅配便などを受け取る場合は、家から一歩出るか、せめて片足だけでも出さなければいけない。
ロシア人にとって、外出した後家に戻るのは縁起が悪い。従って、外出後に忘れ物に気づくと、ロシア人はまず、本当に取りに帰る必要があるか考え、もし本当に必要な場合には取りに帰るが、その際、鏡で自分の目を見る事を忘れない。これによって、邪悪な力を欺くことができるとされている。
古代ルーシでは、末席とされるテーブルの角に座るのは、嫁に行き遅れた女性、貧しい親戚や養ってもらっている人と決まっていた。そのため、未婚の若い女性が 角の席に座ったら、7年間嫁に行けないという迷信が生まれた。
最近では自ら好んで角の席に座る若い女性もいるが、お嫁に行けなくなるよ、と言われると「あら、私の将来の夫は角を持つのだわ」(ロシア語で「角を持つ」とは、とても狭い家を持つ事)と答える。しかし、大概のロシア人は若い女性を角に座らせず、自 分も座ろうとしない。
家族の誰か、もしくは客が長旅に出る場合、出かける前に家にいる人は全員揃って座らなければならない。一見、椅子取りゲームの様に見える。特に荷物が並ぶと、廊下や玄関は狭いが、誰かが「旅の前に座ろう」と言うと、全員がすぐにどこかに座らなければいけない。
これは、安全な旅のためのまじないだ。全員がどこかに一分間座らなければならないが、実はこれは結構役に立つ。座っている間に落ち着き、忘れ物がないかなど確認するのに丁度良い。
ロシアの迷信は、悪いジンクスばかりではない。縁起の良い物も数多い。クモが服についていたり、ハトに糞をされたり、犬の糞を踏んでしまったら、気分を害する事はない。これらのことは、金運が非常に上がる事を意味する。
他にもロシアの迷信は多数ある。いちいち全部覚えていられない、面倒くさいと思うだろう が、実はロシア人も全く同じ事を感じている。ロシア人でも、いちいち迷信を気にする事は辛いと思っているが、それでも、迷信は世代が変わっても受け継がれている。何か縁起の悪い事をしてしまったと気づくだけで気分が落ち込み、しばらく、インスピレーションや成功から遠ざかる事がある。
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