ローストダックのリンゴ添え

ローストダックは秋の定番ともいえるポピュラーな食べ物だが、脂肪分がきわめて多く、当紙専属の料理専門家であるジェニファーにとって、ちょっとした後ろめたさを感じずにはいられない一品だ。

写真提供:ジェニファー・エレメーワ

カモ料理は難物 

 カモの料理はやめておいた方がいいという妥当な理由はいくつもある。私の場合、それは“文学的な”ものだ。

 あひるのピン、ジマイマや、『かもさんおとおり』のカモの夫婦のせいで、耐えがたい罪悪感を感じるのだ。それに加えて、肉がたくさん付いているわけでもないのにかなり法外な値段がすることから生じる罪悪感もある。

 そして言うまでもなく、脂肪分の問題がある。調理する上では便利な材料になるものの、1羽のカモに含まれている驚異的な量の脂肪分によって、お皿が脂だらけになってしまうことがよくある。

 

結構毛だらけ 

 しかし、カモがどうしても私の頭から離れなかった。それに、タルト用のリンゴは今が旬だ。

 私が1羽まるごとのカモの調理を試みたのは、もうずいぶん前のことになる。レニングラーツキー市場で私が違う方向を向いている隙に、何百本もの羽が皮に刺さったままのカモをさっと手際よく包んで私に手渡した、やや不親切な鶏肉販売員のせいで、私はその時、大変な思いをしたのだった。その晩、私は毛抜きを手に、あの販売員がすでに済ませたと間違いなく誓った羽抜き作業を、夜遅くまで行わなければならなかった。

 今回、同じ過ちを繰り返したくなかった私は、ドロゴミロフスキー市場の外国産肉売り場で、透明なセロファンに覆われたフランス産のカモを購入した。私はこれまで長年にわたり、オーストラリア産の牛肉やフランス産のウズラ卵 に大金をはたいてきた得意客なのだから、それくらいの気を遣ってくれてもいいだろうという思惑によるものだ。 

 

驚異的な量の脂肪をどうするか 

 ロシアの料理本で、脂肪の問題に言及したものはなかった。私が見つけることができた唯一の有用なヒントは、19世紀のマスターシェフ、エレーナ・モロホヴェッツによるものだ。「…余った脂は…カーシャにつけて食べるよう、召使いに与えれば良い」。これはおもしろいアイディアだが、我が家の家政婦ライサに対してこれを試みたら、まずいことになるだろう。

 ようやく、マーク・ビットマン著の権威とされる『あらゆる物の調理法』で、おもしろいヒントに遭遇することができた。彼は、二重法なるものを提案している。

 まずナイフのような先のとがった道具でカモの皮全体に切り込みを入れ、45分間ほど十分に蒸した後、短時間オーブンでローストするというものだ。これは、カモの脂肪分が溶けて流れ出るのを可能にする、素晴らしい調理法であることが判明した。その結果、肉がカモ脂のバイカル湖で溺れることもなく、パリパリの皮がジューシーで風味に満ちた素敵な肉を包むという仕上がりになった。さらに、余った多少のカモ脂をジャガイモの表面にかけ、これをオーブン皿でローストした。残りの脂は、一応冷蔵庫の奥にしまっておいた。カーシャにつけて食べるのが好きという人が現れるかもしれないから。

材料

カモ、1羽(2キロ弱)
タルト用リンゴ、皮をむき、芯を除いて、大きめに切ったもの、1~1カップ半
レモンジュース、小さじ1
リンゴ、小サイズ、4~6個、洗っておく
皮をむいた赤ジャガイモ、450~680グラム(残り物として食べるのが好みなら、もっと多くしても良い)
キャラウェイの実、大さじ1
新鮮なマジョラム、大さじ1
セイヨウワサビ、小さじ2
新鮮なショウガ、1片
オレンジ、1個、皮をすりおろしてから果汁を絞る
ハチミツ、大さじ2
塩こしょう、好みに合わせて調整

調理法:

  1. 冷水でカモをよく洗い、余分な脂肪を取り除く。小型のナイフやフォークの先端を使って、カモの皮全体に切り込みを入れる。
  2. カモを蒸すには、ダッチオーブンかストック用の深なべを、蒸篭か水切りボウルを中に入れて使う。蒸籠の底のすぐ下まで鍋に水を張る。カモを鍋に入れ、蓋をして45分間蒸す。 
  3. カモが蒸されている間にジャガイモとリンゴの準備をするが、茶色に変色するのを防ぐためにレモンジュースをかけてかき混ぜる。小型の果物ナイフで小さいリンゴの表面に全体的に切り込みを入れるが、芯はそのままにする。 
  4. オレンジの皮、ショウガとハチミツを小さい鍋に入れて混ぜ、シロップ状になるまでとろ火で調理する。
  5. オーブンを190°Cに予熱し、ラックの位置をオーブンの中央部に調節する。
  6. 蒸したダックを深なべから取り出し、まな板の上で15分間冷ます。鍋の中の蒸し汁とカモ脂を、非反応性のガラス製容器に移す。カモ脂は、容器の表面に浮くはずだ。 
  7. ロースト用鍋にベーキングペーパーをしく。クッキングペーパーでジャガイモの水分をとり、大さじ2のカモ脂の中に入れ、塩こしょうをたっぷりかける。これをロースト用鍋に入れ、オーブンで15分間調理する。
  8. 細かく切ったリンゴ、セイヨウワサビ、キャラウェイの実とマジョラムを入れて混ぜ合わせる。カモの中に十分に塩をすり込み、リンゴの混合物を余裕をもたせて穴の中に入れる。鶏肉調理用の糸で縫い合わせるか、串を使ってこれを閉じる。
  9. 胸が下を向くようにカモをロースト皿に入れ、これをジャガイモの上段にあるラックにのせる。カモにシロップを塗り、ラックをおオーブンに入れる。15分間調理する。
  10. オーブンから取り出し、カモを反対側にひっくり返す(胸を上向きにする)。この面にもシロップをたっぷり塗る。小型の切っていない芯つきのリンゴを、ジャガイモと共にロースト皿に入れる。オーブンの温度を220°Cに上げ、肉用の温度計が75°Cを示すまで、さらに15~20分間調理する。
  11. カモをロースト皿から取り出し、カービングボードにのせる。トングで小型のリンゴを取り出し、両方ともテント上にフォイルで15分間覆う。カモが「休んでいる」間、ジャガイモを残りの大さじ1のカモ脂に入れ、塩をかけて、さらに焼き魚用グリルに入れて10分間調理する。
  12. カモを切り分けてすぐに供する。 

 

 調理法は、マーク・ビットマン著『あらゆる物の調理法』(How to Cook Everything)による。

 では、プリヤトノヴォ・アペティータ(おいしく召し上がれ)!

 

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