「騒乱の結果は全世界に影響」

エフゲニー・プリマコフ元首相 =ロッシースカヤ・ガゼータ撮影

エフゲニー・プリマコフ元首相 =ロッシースカヤ・ガゼータ撮影

中東問題の権威であるエフゲニー・プリマコフ元首相に、シリア、イラン情勢などについて聞いた。同氏は、イスラムの穏健派と過激派の対立は、中東地域のみならず、世界全体に影響を及ぼすと指摘した。

- まず、シリア問題についてお伺いします。全体的な状況から判断して、悪化の一途をたどっています。首都のダマスカスでは、つい34ヶ月前までは見られなかったパニックの兆しが、初めて認められました。これら一連の流れについて、どのような見解をお持ちですか。

シリアは外国の勢力が介入して、完全な内戦状態に陥っています。シリア人とともに、他の国のあらゆる種類の傭兵やら義勇兵やらが、アサド政権派と戦っています。最近では、アメリカのオバマ大統領がCIAに対し、シリアの反体制派への支援を認める直接指令を出しました。

これは、アメリカや他の国にいかなる脅威も与えていない主権国家への、深刻な内政干渉です。反体制派に対し、サウジアラビアやカタールは資金援助をしていますし、トルコも積極的に支持しています。

- 今多くの人が、アサド政権が崩壊した後の状態を憶測しています。国は崩壊するのでしょうか。現政権支持派がテロの標的になるのでしょうか。

武装した反体制派がアサド大統領を引きずりおろすことに成功したら、スンニ派の政権を樹立しようとするでしょうから、自動的に全人口の1割強しかいないアラウィー派の迫害が始まります(アサド大統領も軍幹部も同派に属している)。しかし、一部の人が指摘しているように、与党バアス党の活動家だけが迫害を被るわけではなく、反体制派とは異なる宗教的信条を持つ人々はすべて、弾圧の対象になるでしょう。

- シリア紛争は、「アラブの春」と呼ばれている一連の運動の続きです。あまたや他のアラブ研究家にとって、これらの変革は予想外だったのでしょうか。

はい、まったくの予想外でした。私だけでなく、アメリカ人、ヨーロッパ人、当のアラブ人など、すべての人にとってそうでしょう…。どこかの国で、独裁政権に対する反対運動が起こることはあり得ましたし、政権転覆も予測可能でした。しかしながら、変革の波が中東地域全体に広がっていくとは、誰も予想していませんでした。

- イスラム過激派が、チュニジアやエジプトの政権を首尾よく、また民主的に奪取したことは、多くの人にとって驚きとなりました。広大で戦略的に重要な地域の過激化は、警戒感を抱かせませんか。

過激なイスラム教徒の立場が強くなったことが、一連の革命の主な結末だと断言することは、正しくないと思います。エジプトの「ムスリム同胞団」は、かなり穏健な組織ですが、シリアの「ムスリム同胞団」は、より過激です。

今エジプトで注視すべきは、「ムスリム同胞団」と、実際に過激なサラフィー派の関係です。つまり、「自由公正党」(選挙で約50%の議席を獲得した政党。結局、憲法裁判所が選挙結果を無効とし、国会は解散した)と、「光の党」(30%近い議席を獲得した政党)との関係ですね。

最近就任したムハンマド・ムルシー大統領は、「ムスリム同胞団」からの脱退を表明し、「すべてのエジプト人の父」となることを約束しました。最近の内政と外交での発言と活動から、エジプトが世俗国家であり続けることを期待できます。サラフィー派は、シャリア(イスラム法)に従った政府の樹立を目指していますが。

- アフガニスタンのタリバン、エジプトのサラフィー派、北コーカサスのワッハーブ派など、原理主義的な宗派の人気が高まっている理由は何だとお考えですか。

イスラム教の世界は一様ではなく、穏健な宗派を好む人もいれば、過激派を好む人もいます。また、それらの宗派の代表者同士の敵対関係によって、多くのことが変わってきます。このような敵対関係の影響は、中東全体、はたまた世界全体にも波及するのです。

- 波乱に満ちた「アラブの春」の背後には、アメリカの影が見えるという主張については、どうお考えですか。

滑稽ですね。エジプトのムバラク元大統領は親米派でしたし、ロシアにとっても良きパートナーでした。アメリカを悪と見なす必要はありません。アメリカの責任を追求するとしたら、現状をよく把握しないことですね。エジプトで変革が起こって、中東に駐在していたアメリカ大使全員がワシントンの会議の場に集まった際、クリントン国務長官は、どの大使も自分の執務室から出ることなく現実離れした報告書を作成したとして、厳しく叱責していました。

- 中東地域での今後の運動の拡大について、どのように予測していらっしゃいますか。

今後しばらくは、新たな革命の波は起こらないでしょう。

- イスラエルがアメリカの支援を受けて、あるいは受けずに、イランの核施設を攻撃する可能性については、どう評価されますか。

アメリカは、それが自国の大統領選挙前に起こることを嫌がっていて、イスラエルを抑えつけています。ここで理解すべき点は、イスラエル政府にも、アメリカ政府にも、異なる立場を取るさまざまな勢力が存在しているということです。誰がどのように動くかということは、今はわかりません。

- つまり、攻撃の可能性は残るということですか。そしてそれが中東地域全体にとって危険ということですか。

とても危険です。陸上作戦については何も言われていませんから、あるとしたら空爆ですが、それ自体はさまつな結果に終わる可能性が高いです。その代わり、2年後にイランが完全に復活したら、これ見よがしに大量破壊兵器不拡散条約を破棄するでしょうし、そうなれば必ず核兵器を製造します。

*本記事は抄訳。完全版は以下を参照(ロシア語のみ)