舌禍で児童人権担当が辞任へ

パーヴェル・アスタホフ氏=

パーヴェル・アスタホフ氏=

ズラブ・ジャヴァハゼ撮影/タス通信
 ロシア大統領直属児童人権担当のパーヴェル・アスタホフ氏が辞表を提出。このポストに就任していた7年間でまず思いだされるのは、物議をかもす、不適切な発言である。最近の発言は多くの怒りを買った。

 アスタホフ氏の解任を求めるロシア大統領への嘆願書が6月24日、署名サイト「チェンジ・オーグ」にあらわれた。1週間で署名した人は15万人以上。このような社会の怒りの理由はアスタホフ氏の不適切な発言である。カレリア共和国のシャモゼロ湖で6月19日、嵐によって船が転覆し、14人が死亡した。生き残った児童に、アスタホフ氏は笑顔で「湖のツアーはどうだった?」(注)と聞いたのである。

 6月30日には、アスタホフ氏が担当職を降りるとの情報が流れた。ロシアのメディアグループ「RBC」はクレムリンの消息筋の話として、アスタホフ氏が休暇およびその後の辞職を願い出たと伝えている。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は4日、大統領がこれを受理すると話した。

 

発言の数々

 2009年に児童のオンブズマンに就任して以来、発言がしばしば騒動を引き起こしていた。2015年、チェチェン共和国で未成年の17歳の少女が47歳の地区警察署の所長に嫁に出された時、アスタホフ氏は、カフカスの女性は大人になるのも老化するのも早いから大丈夫だと言っていた。「女性が27歳でしわだらけになって、こちらからすると50歳ぐらいに見える場所がある」

 今年4月には、バルナウルの動物園でトラが13歳の少女に襲いかかった事故にも、問題発言をした(アスタホフ氏によると、少女がトラを刺激したという)。「愚か、不良行為!ダーウィン賞もびっくりだ!」(この賞は、最も愚かな行為により死亡した人に与えられる――編集部注)

 2014年、学校に性教育の授業を導入する計画について話し合われた時、保守派のアスタホフ氏はこう話した。「『あなたの国(ロシア)ではいつ性教育の授業が行われるのか』と聞かれる。『絶対に行わせない』と答える」。自分に批判の矛先が向くと、いつも反応は同じだ。例えば、2013年には、自分に辞めてほしいと思ってる者は小児性愛者だ、と言っている

 

「ジーマ・ヤコブレフ法」を支持

 2012年12月にロシア下院(国家会議)で「ジーマ・ヤコブレフ法」が採択された時、アスタホフ氏は最も熱烈な支持者の一人であった。これはアメリカでロシア人児童を養子にすることを禁止する法律。アメリカで養父の過失により死亡したロシア人の少年にちなんで命名されている。

 野党は、「ジーマ・ヤコブレフ法」を「ろくでなしたちの法律」と呼び、猛反対。この法律によって、孤児院の児童が、たとえ外国でも、自分の家族を持てなくなった、と批判した。アスタホフ氏はこれに対し、自分は原則として、外国による養子とりに反対していると説明し、こう話した。「これはわが国を虐げ、第三世界諸国と並べること」

 

辞任の理由

 政治評論家で、モスクワ国立国際関係大学教授のヴァレリー・ソロヴェイ氏は、辞任を驚くべきことではないと考える。「アスタホフ氏は(自分の発言によって)世論をかなりいら立たせる人物になった。『統一ロシア』(与党)の支持率が非常に低くなっている選挙前のこの時期、政府には不利。政府は足を引っ張る存在すべてから離れようとしており、アスタホフ氏は典型的なその候補者である」

 アスタホフ氏を守る人はいないのではないかという。「アスタホフ氏にはクレムリンで広いつながりがない。公人とはいえ、実際には、あまり影響力のない人物」。アスタホフ氏に対する怒りが収まって、世論へのあからさまな譲歩に見えない秋まで、政府は辞任を延期させるのでは、とソロヴェイ氏。

(注)(「湖のツアーはどうだった?」のロシア語原文は«Ну как поплавали?»。アスタホフ氏はツアー全体、湖の遊覧などの状況について聞いている——編集部注)

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