モスクワに欧州最大のキッザニア

報道写真
 国の経済状況の厳しさにもかかわらず、ヨーロッパ最大の児童園「キッザニア」が今年1月、モスクワにオープンした。一体どのような課題と特徴があるのだろうか。ロシアNOWが調べた。

 本物の大きな飛行機を操縦してみたい?親は無理だけれど、子どもはTu-154のパイロットの気分を味わえる。Tu-154といえば、バイコヌール宇宙基地に宇宙飛行士を運んだあの飛行機だ。これがキッザニアの入口にある。Tu-154の機内は航空アカデミーになっており、子どもは客室乗務員やフライトシミュレータを使ってパイロットの気分を味わうことができる。

 このタイプの児童園としては世界で21ヶ所目であるが、モスクワには他とは違ういくつかの特徴がある。

 まず、これは大きな企業である。国内外の企業30社が、経済危機の最中、この児童園の建設に2500万ドル(約27億5000万円)を投じた。年間100万人の来園者が見込まれており、回収期間は5~7年に設定されている。これは達成されそうだ。入園券は2000ルーブル(約3300円)とかなり高額だが、入口には長い行列ができている。

 また、モスクワのキッザニアは初めて、体の不自由な児童だけでなく、自閉症や精神的な特殊性を持つ児童との活動システムも確立した。

ウラジーミル・アスタプコヴィチ撮影/ロシア通信ウラジーミル・アスタプコヴィチ撮影/ロシア通信

感情を刺激するマーケティング

 モスクワのキッザニアの主要な部分は、他の国のキッザニアと似ている。

 そのビジネス・モデルは、国際的な大企業や国内の大企業の関与を軸にしている。「ダノン」、「LG」、「サムスン」、「ペプシ」、「コルゲート・パーモリーブ」などが、モスクワの児童園に独自の工房を開設した。さらに、近々「ロシア連邦宇宙局」が独自の宇宙学校を開校し、ダイヤモンド採掘・生産企業「アルロサ」がダイヤモンド鉱床のイミテーションをつくる。

 キッザニアにはブランドが多い。考案者は、子どもにリアルな世界を体感させることが目的だと説明している。だが空想の世界に本物のブランドがあるのは、自社の潜在的な顧客として子どもを教育したいという思いからだろう。

 「架空のブランドにすることもできたが、それでは全く違うコンセプトになってしまう。子どもがキッザニアの通りを歩くと、モスクワの日常生活で見る看板や名称を目にするため、大人の世界のリアリティが増す」とキッザニアのクセニヤ・コルネエワ営業部長は話す。

 

マーケティング3.0

 キッザニアは、キャッチコピーではなく、感情の生成で顧客を獲得する、いわゆるマーケティング3.0の典型例として世界で知られている。

 子どもの年齢は、心理学者がインプリントと呼ぶ習慣や愛着が人間の意識の中で形成される時期であるため、いったん身につけば、大人になっても省かれることはなく、永続的になる。そのため、児童にこのような習慣を身につけてもらおうと投資する企業は、未来の上得意を集めていることになるのだ。

 例えば、モスクワのキッザニアにはLGの秘密エージェントの学校がある。子どもは家電店に入り、冷蔵庫の扉を開けて、そこから冒険の世界に入っていく。レーザー、回転管を通過し、指紋を読み取り、どこでも韓国のスマート技術に助けられる。

 「子どもはLGの技術のおかげで秘密エージェントになれると理解する。これは子どもにとっては大きなこと。こうやって感情を刺激するマーケティングが機能する」とLGロシア法人の関係者は話す。

ヴャチャスラーブ・プロコフィエフ撮影/タス通信ヴャチャスラーブ・プロコフィエフ撮影/タス通信

すべての児童のために

 スーパーモデルであるナタリア・ヴォディアノヴァの慈善財団「ネイキッド・ハート」の支援により、モスクワのキッザニアは世界初の包括的プロジェクトになった。つまり、自閉症や他の発達の特殊性を持つ児童も、個別のグループではなく、他の児童と一緒に園内をまわることができる。

 「他の国のキッザニアには視覚障がい者や聴覚障がい者を受け入れるスペースがつくられた実績があるが、精神的、行動的特殊性のある児童との活動システムが確立されたのは初めて」と、ネイキッド・ハートのアナスタシヤ・ザロギナ理事は話す。

 ネイキッド・ハートはキッザニアに工房を設けており、児童は慈善事業について知ることができる。

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