ロシアにも「ディズニーランド」があったらいいなと、モスクワ市民のさまざまな世代が夢を見てきた。ユーリ・ルシコフ元モスクワ市長(在職期間1992~2010年)は建設を約束していたが、投資家を見つけることができなかった。セルゲイ・ソビャニン現モスクワ市長は、地元の不動産開発大手「レギオヌィ」を建設計画に引き入れることができた。レギオヌィは「ドリーム・アイランド」に15億ドル(約1725億円)以上を投じ、土地を提供する意向で、この計画の最大ディベロッパーの一社となっている。公式発表によると、建設予定地はモスクワ南部の川の中州のナガチノ河岸草原で、総面積は100ヘクタール(約30万坪)ほど。2018年にも開業する見込み。現在、準備作業が進められており、3月中にも着工する予定だ。
本物の「モスクワ・ディズニーランド」を建設しようとすると、気候がネックになる。モスクワで屋外型テーマパークを営業できるのは年間たった4ヶ月だ。そこで、モスクワの行政府は、1年中来場者を受け入れることのできる屋内型パーク(1階層施設、高さ35メートル)の建設計画にとどめた。
年間400~600万人の来場者数を見込んでいる。行政府と投資家は国内旅行を中心に考えているが、モスクワを訪れる外国人旅行客の平均滞在日数を現在の3~4日よりも長くできれば、と期待している。
報道写真
「ドリーム・アイランド」の視覚的なソリューションは、ディズニーランドのシンデレラ城をほうふつとさせるが、設計者は模倣パークなどではなく、完全にオリジナルのプロジェクトだと説明している。建築のコンセプトを作成したのは、イギリスの建築事務所「チャップマン・テイラー」。ランドスケープ・デザインを担当したのは、イタリアの建築デザイン事務所「ランド・ミラノ」。レギオヌィの取締役であるアミラン・ムツォエフ氏はこう話す。「どの城にも類似性があるため、このように比較されることは避けられない。根本的な違いは、ディズニーランドが子供を対象としているのに対して、ドリーム・アイランドは老若男女を対象としているところ。当パークはロシアのおとぎ話やチェブラーシカとワニのゲーナといったアニメーションに重きを置いている」ロシアのキャラクターには、敷地の60%強が割り当てられる。残りは外国のキャラクター。すでに、アメリカの映画・アニメ製作会社「ドリームワークス・アニメーション」を含む大手3社と契約済み。
テーマゾーンではキャラクターだけでなく、有名なアニメの装飾も再現される。例えば、恐竜ゾーンには熱帯雨林の穏やかな気候が、雪の女王ゾーンには冬の空と雪が、用意される。テーマゾーン以外にも、約40種のアトラクションが設置される。中にはループジェットコースター「ロシアン・マウンテン」もある。
また、敷地内にはヨット教室、コンサートホール、ホテル、「アコーホテルズ」の客室410室の3つ星ホテル、ショップ、レストランができる。
プロジェクトの規模はナガチノ河岸草原へと重心を移すのに十分であると、経済高等学院都市計画研究所のエゴル・コトフ所長は話す。「このテーマパークの問題とは、例えばゴーリキー公園とは異なり、住宅地に近くないこと。これまでの実績からすれば、誰もが自家用車や公共交通機関を使って行かなければいけなくなる。あの場所への交通アクセスは良くない」
この欠点は、新しい地下鉄駅「テクノパーク」が開業したため、一部改善された。それでも専門家らは新たな問題を指摘する。地下鉄からドリーム・アイランドまでの徒歩でのアクセスは現在、大きな輸送拠点や給油所でブロックされている。その上、ドリーム・アイランドの駐車場も設置される。駐車場は設計上、娯楽ゾーンになっている。つまり、ホテルおよびコンサートホールとその駐車場が建設される部分は、既存の緑地から外され、またドリーム・アイランドの他の部分から輸送拠点によって孤立することになる。また、ドリーム・アイランドとその駐車場も、既存の緑地にくさびを打つような格好になる。
とはいえ、最も大きな懸念は、プロジェクトの経済的意義である。「不動産開発業者はルーブル安で毎日資金を失っているし、国民所得も減っている。行政府は減る一方の市の予算をあらゆる方法で補填しようとしている。高額かつ野心的なプロジェクトの時代は過ぎた。このような状況で、なぜモスクワは別の大きな施設を必要としているのか、これは新たな長期建築物になりやしないか。不明のままだ」と、モスクワの行政府に近い消息筋はロシアNOWに話した。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。