オムスクの電気技師によるVAZ自動車をベースにした無限軌道全地形車=
ドミトリー・フェオクチストフ撮影/タス通信ロシアではユーザー・イノベーションに夢中な人の割合が、他の国よりも高い。ロシア人の10人に1人が、独自の発明をしているか、または既存の技術を自分で改良している。発明品の中には、自転車・ジューサーや、自動車と馬のハイブリッド「ロシャモビリ」といったものもある。
ユーザー・イノベーションとは、商品やサービスの生産者ではなく、使用者自身が自分のニーズに応じて商品やサービスを創造または改良すること。
ロシアのユーザー・イノベーションの現状を、ロシア国立研究大学「高等経済学院」のコンスタンチン・フルソフ教授とトーマス・ターナー教授が調査した。外国の研究を参照し、また独自に国内各地の1670人にアンケートを行った結果、ロシアでは諸外国よりもユーザー・イノベーションにはるかに人気があることが明らかになった。調査によると、国内の発明者の割合は9.6%で、他の外国よりもかなり高い。
なぜロシア人は発明にこれほど興味を持っているのかについて、教授らは複数の仮説をあげる。第一に、困難な経済状況下での暮らし。具体的には、良質の商品の不足、品揃えの乏しさ(特に地方)、購買力の低さなど。
フルソフ教授はこう話す。「装置の機能の一つ、二つ程度が不十分なだけであれば、新しいものを購入したりするよりも、自分で装置をうまく改造する方が簡単なことがある。第二に、この文化は歴史的に形成されたもの。ソ連時代、発明活動には積極的な支援があった。科学研究所には、強大な技術基盤のあるさまざまなクラブや団体が付属し、そこでは自分のアイデアを実現させることが可能だった。通俗科学雑誌も多数刊行されていた。市場の供給がほぼなかった計画経済では、人々は自分の発明に頼っていた」
今日、科学雑誌やクラブの代わりになっているのがインターネットだ。「現代ロシアでは、インターネットの普及率がとても高い。フォーラムや多種多様なウェブサイト、交流サイト(SNS)などで簡単に必要な情報を見つけることができるし、安い材料や装置をオンラインで購入することもできるようになった」とフルソフ教授。
教授らは、ロシア人を二つの革新者グループにわけている。一つ目のグループは、高い教育を受けている、資金的に充実した都市の住民から構成される。多くは男性で、趣味やキャリアアップのために発明に取り組んでいる。分野はコンピュータと情報技術。
二つ目のグループは、小さな街や村の住民から構成される。日常的、金銭的な理由から発明者になる。こちらの発明は、家事や庭、畑での作業から、育児や交通まで、さまざまな分野におよぶ。
「他の国と比較して、ロシアは情報をより生成、発信しているが、アイデアをあまり商業化しようとしない」とフルソフ教授。
ロシアの発明者はあまり稼ごうとしないと、教授らは考える。ロシア人は自分の興味や好奇心、自ら貢献したいという気持ちや他者を助けたいという気持ちで動くことが多い。ロシアの発明者が自分のアイデアを積極的に共有したがり、あまり特許を取得しない理由は、これかもしれない。
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