来年にスピリドノフ氏の頭部移植

 ロシアのプログラマーのヴァレリー・スピリドノフさんの頭部移植手術が、2017年12月に行われる。本人によると、それにはロシアのテクノロジーも用いられる。
Valery Spiridonov
ヴァレリー・スピリドノフ氏=  ウラジーミル・スミルノフ撮影/タス通信

 幼児期より車椅子での生活を送るロシア人プログラマーのヴァレリー・スピリドノフさんにイタリアの外科医セルジオ・カナヴェロ氏が頭部を移植する助けとなるテクノロジーの一部は、ソ連時代にお目見えした。そのほかのテクノロジーは、開発過程にある。

 

出血を補うための「青い血」

 カナヴェロ氏によれば、手術の成功は、ほぼ100%ロシアの薬剤「ペルフトラン」にかかっている。この血液の代用品があれば、頭部を人体から切り離す際の大量出血の問題をクリアーできる。

 「ペルフトラン」は、ロシア科学アカデミー理論実験生物物理学研究所の生物物理学者フェリクス・ベロヤルツェフによって1980年代に生みだされ、その色から「青い血」とも呼ばれた。この薬剤は、すぐれた血液ガス運搬機能および末端の毛細血管への高い浸透性をそなえている。

 イタリアの外科医に「ペルフトラン」の利用を勧めたのは、それを開発した研究所の職員たちで、現在、研究者らは、動物への頭部移植でこの薬剤をテストしている。

 

血管のドナー

 血管移植外科医アナトリー・トローシン氏は、手術がうまくいかなかった際にスピリドノフさんの命を救う新たな方法を提案した。現在、トローシン氏を個人的に知るスピリドノフさんとカナヴェロ氏は、その利用の可能性を検討している。

 トローシン氏は、人体から切り離される頭部を宇宙服に似た特殊な容器に収めてからスピリドノフさんの親族かもしれないドナーの循環系へそれを接続することを、提案した。同氏は、「外形上、この容器は、血液の自発的ドナーにとって身につけやすく常に装着していられるものとなる」と記している。

 シャム双生児の効果に似たものが、得られる。特殊なセンサーが、頭部保護のための免疫抑制薬を血液に送ることを可能とする。頭部を通った血液は、ドナーへ戻るまえにフィルターによって浄化される。

 トローシン氏は、自身のメソッドを学術論文の形で発表するばかりでなく、移植に関するすでに3作目のSF小説「頭部移植は可能そして必要か?」を上梓してもいる。

 トローシン氏は、こう語る。「頭部間の心理的な不適合性の推移を予見することは、不可能だ。問題は、ドナーの交換を何度も繰り返すことによってのみ解決でき、今のところ、心理的に最も適合するペアは見いだされていない」

 

移植後のリハビリ

 N.N.プリオロフ名称外傷学整形外科中央研究所(CITO)は、磁性ナノ粒子を用いて損傷した脊髄の機能を回復させる実験を行っている。磁性ナノ粒子を体内に取り込んで磁場へ導くなら、それらは、損傷した軸策(神経突起)の癒着を速める。

 現在、脊髄が部分的に損傷したマウスは、ナノ粒子が体内に取り込まれると、数週間後には可動性を回復する、ということが判っている。

 また、同研究所(CITO)の外傷学整形外科の教授ゲオルギー・ステパノフ氏は、患者自身の血管および別の組織の神経を移植の際に用いることを提案している。同氏によれば、これは、ドナーの生体の拒絶の問題を払拭する。同教授の研究グループは、特許を取得し、162人の患者の手術を成功させている。

 しかし、ヴァレリー・スピリドノフさんによれば、今のところ、同研究所は、協力に関する決定を行っていない。

 

頭はロシア人、体は中国人?

 今のところ、ヴェトナム、韓国、中国が、カナヴェロ氏の実験に参加する意向を示している。ロシアの病院には、いずれも責任を引き受ける用意がない。国内の法律の複雑さも、ネックとなっている。

 スピリドノフさん本人は、ロシアでの手術を望んでいるが、「今のところ、ロシアで手術を受けるための場所も費用も見つかっていない。2017年に手術が行われるとすれば、おそらく中国になる。中国は、この分野では遥か先を進んでいる」と語る。中国の研究者らは、すでにマウスや猿の生体や人の死体を使って1000回以上の実験を行っている。

 スピリドノフさんは、筋肉や脊髄神経が次第に委縮していくウェルドニッヒ・ホフマン(Werdnig-Hoffmann)病を患っており、幼児期より車椅子での生活を余儀なくされている。通常、この病気の罹患者は、20年以上、生きられない。スピリドノフさんは、現在、32歳だが、携帯電話より重いものを持つことができない

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