ロシア・イラン合意の内容と背景

 ロシア空軍によるイランの軍事基地の使用は、紛争当事者がもはや従来の義務やシナリオに縛られることのない、シリア紛争の政治的終結を目指す闘いの新たなラウンドの開始である。しかし、ロシアとイランの本格的な軍事同盟については、今のところ、問題とされていない。
オピニオン
What and why Russia and Iran have agreed to
ロシア国防省は、遠距離爆撃機Tu-22М3と戦闘爆撃機Su-34がイランのハマダーン飛行場へ派遣された、と発表した=  mil.ru

 イランのハマダーン空軍基地へのロシア空軍の配備は、偶発的な措置でも、もっぱらアレッポの解放に関連した措置でも、まったくない。配備の前には、中東の東部における原則的に新たな文脈の配列を物語る一連の出来事が生じていた。それは、ロシアとイランとアゼルバイジャンの間の経済協力の新たなレヴェルを印象づけたバクーでの「カスピ海のトロイカ(三国)」の会議であり、露土関係における緊張を大幅に緩和したトルコのエルドアン大統領のサンクト・ペテルブルグへの訪問であり、輸送やエネルギーの分野をはじめとするロシアとイランの経済協力の急速な活発化である。

 言い換えれば、ロシアは、イランとの基地に関する合意の実現が始まる時点までに、すでに揺るぎない政治的な背景ならびに経済的および社会的な問題に関するイランとの包括的な合意を確保していた。その結果、軍事的および政治的に極めて重要な行動は、ロシアとイランがシリア紛争のみならず中東全域においても主導権を握る意向であることを示す自然な措置となった。

 

勝者と敗者

 こうした状況において、米国は、明らかに敗者となっている。ハマダーンの空軍基地の使用に関するロシアとイランの合意は、ロシアが、露米関係をもはやそのために戦術的な成果やポジションを犠牲にしうるレヴェルの優先事項とはみなしていない、ということを示した。また、これは、イランとアメリカの関係における「蜜月」が、最も近しい同盟国であるサウジアラビアへのアメリカの影響力に対するものを含めた、アメリカの政策に対する極度の不信感を伴って終熄した、ということも物語っている。

 アメリカは、ロシアに対するばかりでなくその他の国々に対しても、イランとの政治的および軍事的・政治的な関係の発展に対する「拒否権」を失いかねないことを、認識すべきである。

 イランがロシア軍部隊の自国領内への配置を許可したことは、イランが、西側の条件ではなく独自の条件に基づいてシリア紛争を解決することが地域における「力の中心(center of force)」としての自国の発展にとって如何に重要であるかを理解している、ということの証しでもある。

 こうした状況において、米国は、ライヴァルのパートナーの側からの「歩み寄りの限界」を悟れない責任を自覚すべきである。注目に値するのは、シリア紛争において静観の姿勢を取りつづけてきた中国も、ハマダーンの基地へのロシア空軍の配備の後にアサド政権への支援の拡大に関する原則的な決定を行ったらしい、ということである。

 ここで問題となっているのは、アサド政権そのものへの支援ばかりではなく、それよりは、むしろ、将来の政治的および経済的なプロセスへ参加したい中国の意向である。

 

メッセージ

 ロシアがイラン領内からの作戦を開始したことで発した政治的もしくは軍事的・政治的なメッセージについて言えば、おそらく、それらは、次の三点にまとめられる。

 第一に、ロシアは、ロシアが、イランとのパートナーシップを自国の戦略的優先事項とみなしており、米国からすると先に達せられたイランに関する国際的な合意の観点から「グレー・ゾーン」と思われる分野においてさえもこのパートナーシップを発展させていく、ということを、アメリカに示唆している。これは、先にコンセンサスを得た戦略とみなされていたイランの政治的・軍事的な野望の抑止に関する国連安保理の戦略をロシアが完全に放棄していることを意味するものではないが、そうした政策の見直しが行われていることは、火を見るより明らかである。そして、もしも現在の協力の経験が上首尾なものとみなされるならば、ロシアとイランの先例のない接近をもたらしうるさらなる進展が見られないとも限らない。

 第二に、ロシアは、反政府勢力の「穏健派」と「非穏健派」を特定する米国の政策に失望している。つねに明瞭なわけではないアメリカの姿勢に対する苛立ちは、すでに何ヶ月も高まっており、それを蔑ろにすることは、難しかった。テロ組織のリストをめぐって駆け引きをするロシアの用意を過大視した米国の大きな誤算を指摘することもできよう。この誤算は、シリア国内の「戦場」ひいては将来の平和的解決における親米的な組織の立場を著しく弱めかねない。いずれにせよ、ロシアとアサド政権がイランの参加のもとでアレッポにおける際立った進展を達成するならば、交渉プロセスの従来のモデルは、変更を余儀なくされ、穏健な反政府組織の大部分は、もはやシリア国内で大きな勢力を誇ることはできない。

 第三に、ロシアは、アレッポにおけるシリアの反政府勢力の潰滅の完遂は、シリア問題をめぐる米国およびEUとの関係を少なくとも一時的に犠牲にする用意すらある極めて優先的な課題である、と考えている。ハマダーンへのロシア空軍の配備およびアレッポの反政府勢力への爆撃の急激な強化は、単に、政治的な駆け引きにおいて西側に対して何らかの新たな切り札を出す試みではない。アメリカの現政権との政治的な対話の可能性に対する失望やアメリカに新たな政権が誕生するまで対話を「持ち越す」用意が、その背景に隠されている可能性も、十分にある。

  ドミトリー・エフスタフィエフ - 政治学者、国立研究大学「高等経済学院(HSE)」教授

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