トランプ氏の構想は歓迎できるか?

 1940年以来初めて米国の外交政策のパラダイムに挑戦したドナルド・トランプ氏は、筋金入りの異端者であることが判明した。奇妙なことにモスクワは、少なくとも公にはそのことに気づいていない。
オピニオン
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ドナルド・トランプ氏=  AP通信

両陣営から反トランプの合唱

 反トランプ陣営の活動家たちは、非友好的国や「無法」国家で溢れかえる世界における米国の地位とセキュリティを脅かす存在として、あらゆる力を行使してトランプ氏を非難している。復活しつつある孤立主義者の予期せぬ代表的存在となっているトランプ氏だが、その「言動矛盾」は外交能力の欠如と同義扱いされ、非難を受けている。

 元国務長官のヒラリー・クリントン氏 (民主党) は、「アメリカが主導権を握らなければ空きが生じ」、ライバルが「先を争ってそれを掌握する」だろうと主張している。 

 ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下でCIA長官を務めた後にジョージ・H・ブッシュ大統領とバラク・オバマ大統領政権下で国防長官を務めたロバート・M・ゲイツ氏 (共和党) も警鐘を鳴らしている。「アメリカが内向的になると、他国だけでなく米国にとっても世界がより危険になる」

 党派を超えたトランプ氏に対する攻撃は、米国選挙においていかに危険度が高いかを物語っている。トランプ氏の勝利により国内政策/対外政策が書き換えられ、米国がより内向的で敵対度の薄れた国と化す可能性が生じるかもしれないのだ。

 

同時に復讐者と調停者に

 臆面もなくものを言う有力者のゲイツ氏は、ロシアの戦闘機が米国機の上部で「バレルロール」とよばれる空中動作をやってのけた事件について、自分ならどう反応していたか歯に衣着せずコメントした。「敵が接近して来て一定の地点に達したら、こちらから撃墜しなければだめ」 

 同時に「狙撃手」トランプも主張を展開した。「当然、まずは外交から始めるべきで、すぐにプーチン大統領に電話をかけることが最初の手段であるべきだ」

 またしてもトランプ氏は一貫性を示している。同氏は以前に、ロシアの大統領と対話する準備があると発言したことがあるが、すなわちこれは、不信のギャップを埋める方法があるという見解をトランプ氏が持っていたことを示している。 

 これこそが、トランプ氏とクリントン氏の間で最も見解が異なる点である。1980年から2015年まで米国国務省に勤務し、外交官として最高レベルの大使職を歴任したジョーセフ・A・ムッソメーリ氏の発言をそのまま引用すると、「NATOの拡大がなければロシアの脅威がさらに増しているはずなので、プーチン氏との対話を増やすよりも、さらにNATOを拡張すべきだ」ということになる。

 それとは対照的に、トランプ氏は「NATOが拡大すると、その直接の結果としてロシアがより被害妄想的で攻撃的になるだろうと述べたジョージ・ケナンの警告を理解しているようだ」と米国の元駐カンボジア大使と駐スロベニア大使を歴任したムッソメーリ氏は著述している。 

 ロシアを「より被害妄想的で攻撃的」と表現することの是非はさておき、トランプ氏を嫌悪するもう一つの原因をこのベテラン外交官がどのように定義しているかは、注目に値する。それは「ロシアとの新たな冷戦」という、「第二次ネオコン (新保守主義者) の優先事項」を彼が拒否していることだ。

 

新孤立主義の預言者か、それとものけ者か

 トランプ氏は、概念的に異なるアプローチによる外界との接し方を実際に提示している。「我が国はさまざまな権力者を転覆させるのに4兆ドルもの資金を費やしてきた」と同氏は言う。「その4兆ドルを米国内で道路や橋、空港、その他のあらゆる問題を修復するのに費やしていたら、私たちは今よりもずっとよい状況におかれていただろう」

 トランプ氏は、米国本土から何千キロもはなれた地域紛争 (イグネシナウスの「勝ち目のない新たな紛争」を想起させる) や別の冷戦に勝利するのではなく、他国に「影響の行使」以上のことはせずに「友情を築き」つつ、米国内の社会体制を整備することで「平和の配当」を享受すべきだと提案している。

 トランプ氏は新孤立主義の預言者、またはのけ者として後世にその名が知られることになるかもしれない。いずれにせよ、彼が説く外交政策はより予測可能で、あまり冒険的なものではない。 

 ホワイトハウスの主となった場合に、トランプ氏が「平和を追求する党」の結集を呼びかけるかどうかは、そのような状況になってみなければ分からない。しかし、いずれの候補者の肩も持たないことがロシアにとって有利になるとクレムリンが考えているとしても、私の考えでは、ロシアおよび世界のその他の地域との関係を「リセット」させるという、まだ詳細が説明されつくされていないトランプ氏の提案は、評価と暗黙の支持に値する。

記事、コンテンツの筆者の意見は、RBTH(日本語版はロシアNOW)編集部の意見と一致しない場合がある。
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