日本のビニールハウスをロシアへ

 ビニールハウスの設計・施工を手がける越浦パイプ(札幌市)は、ロシア市場に挑戦する日本の地方企業として最も勢いに乗っているプレーヤーの一つだ。ロシアと縁ができてまだ3年ほどだが、昨夏にはサハリン州にモデル施設を設置。今年5月には来日したオレグ・コジェミャコ同州知事が、同社からの資材購入を明言した。本格的なビジネスの始まりがすぐそこに来ている。
Koshiura pipe
越浦パイプはサハリン州でビニールハウスを設計した、2015年=  写真提供:越浦パイプ社

サハリン州を橋頭保に

 「当社に来られたコジェミャコ知事から、ハウスのビニールを2万平方メートル買うとのお話がありました。今は価格や施工方法などの条件を当社と州側で協議しているところです」。そう語る越浦政俊社長(65)の表情は明るい。知事の帰国からほどなくして州政府幹部や公営農業法人代表も来社するなど、サハリン側の積極性が伝わってくる。越浦パイプはまず州を最初の販売先とし、続いて民間の農業者を開拓、やがてロシア広域で事業を展開する考えだ。

 越浦パイプの社名は、すでにサハリンの農業関係者の間で知られている。昨年ユジノサハリンスク市内にビニールハウス2棟を無償設置し、実際の栽培で高評価を得たからだ。特に知られるようになったのが耐久性。昨年10月、いわゆる「爆弾低気圧」が発生した際、同じ農場にある中国製ハウスのビニールが暴風に飛ばされ木製の骨組みだけになってしまった横で、越浦のハウスはそのままの姿を保った。即座に、日本のハウスは丈夫だとの口コミが広がった。

 

ロシアとのビジネスに活路を求め

 同社は長くロシアに関わってきた企業ではない。創業から30年、業務は原則的に日本国内のみ。現在の従業員数は30人強で、海外営業の専門社員はいない。越浦社長が海外に目を向けるようになったのは、日本の少子化・農家の減少にどう対応するかを考える中でのことだったという。今後企業として生き残っていくためには近隣国とのビジネスを検討する必要があるが、中国・韓国は以前から日本との取引が多く、今から自分たちに何ができるのか見えない。長い間「悪いイメージしかなかった」というもう一つの隣国・ロシアへの興味が沸いてきた。

 そんななかで2013年夏、取引銀行である北海道銀行がアムール州への農業視察ツアーを催すと聞き、「ロシアの農業事情を自分の目で見たい」と越浦社長自身が参加した。帰国後、この視察に同行していた道銀のユジノサハリンスク駐在員から、「サハリン州も農業振興に熱心で、ビニールハウス技術のニーズが高い」との情報を得る。翌14年2月、資材メーカー3社と合同でサハリンに渡航。農業者向けにハウスの説明会を開いた。

 

生産効率の高さを実証

 説明会では、数十人集まったロシア人から質問が相次ぎ、手応えは上々だった。だがカタログや資料だけでは良さを実感してもらうのが難しい上、ルーブル下落も重なって一般の農家からは割高な印象を持たれ、商談はなかなか前に進まなかった。そこで越浦社長は、実際にハウスを使ってもらうのが近道と判断し、州とユジノ市にそれぞれ1棟ずつ施設を寄贈することにした。

 翌15年の6月、日本からフェリーで資材を出荷。社員2人が約1カ月半サハリンに滞在し、州、市それぞれが紹介した農地に7.2m×50mのハウスを設置した。資材代や輸送代など諸費用は、越浦パイプと資材メーカー3社、そしてサハリン側の自治体で分担した。こうして農業者にハウスでの栽培を試してもらったところ、キュウリの生育に既存施設で約60日かかっていたところ新ハウスでは45日で育つなど、生産効率が高まることを証明できた

 

ロシア農業の課題にも応える

 目下の課題は、州政府への販売をできるだけ早く実現して、その後のビジネス展開につなげること。ロシア語での商談や情報収集といった業務をこなすのは同社だけは難しいため、サハリンとの仲介役になった北海道銀行や、道銀の関連会社である北海道総合商事がサポート役を引き受ける。越浦社長は「ロシアも日本と同様、農家の担い手不足、地方の過疎化などの問題を抱えています。今必要なのは農家の生産性を上げることで、当社のビニールハウスが必ず役に立つ。道銀さんなどほかの企業とも連携して、ロシアに売り込んでいきたいです」と意気込んでいる。

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