展示会は2 月11日と12日、イルクーツク市内の展示場「シブエキスポセンター」で開かれた。参加したのはIHI、川崎重工業、日揮、丸紅、横河電機など民間12社と日本水道協会。事務局のROTOBOや経済産業省の関係者を含めると計40人強が前日までに現地入りし、12の説明ブースを構えた。2ブースに1人の割合でロシア人通訳者もつく。ROTOBOの齋藤大輔次長によれば、シベリアで日本の展示会が開かれるのは少なくともソ連崩壊後では初めてという。
初日の開場直後から地元ロシア人が続々と施設を訪れ、1時間ほどでかなりの混雑に。
「これは何に使う機械ですか?」「どんな仕組みですか?」
各ブースで、来場客が矢継ぎ早に質問を重ねる。汚泥処理などに使う遠心分離機をアピールしていたIHIは、ロシア人社員を含む4人での客対応だったが、質問が多いためブース前には頻繁に行列ができていた。会場に足を運んだのは主に、東シベリア各地域の水道公社「ヴォドカナル」関係者や州・市政府職員、民間の上下水道工事事業者、建設業者など水技術に関心を持つ人々。IHIの高橋信康グローバルビジネス本部主幹は、「当社はモスクワなどで数々の展示会を経験してきたが、今日はこちらの話を真剣に聞こうとする方が多いことに驚かされている。地元のプロジェクトに関わる相談もあり、当社にとっては予想以上の収穫」と話す。
今回出展したのは長くロシアに関わってきた企業だけではない。水研(滋賀県日野町)は2本の水道管をつなげる高機能の接続器具を、関根産業(千葉県流山市)は排水処理に使う合成樹脂のロック材を出品。両社ともロシアでのPRは初めてだったが、多くの来場者がサンプルを手に取ってそれぞれの説明に聞き入っていた。水研は持参したパンフレットが初日の午前中で底をつき、急きょ現地でカラーコピーして間に合わせた。
変わりダネとして耳目を集めたのが、寒冷地仕様の作業用ゴム手袋を扱う青井商店(北海道旭川市)だ。通常の手袋は極寒下ではゴムが固まり、曲げようとすると割れてしまうが、同社製品はマイナス50度以下でも使えるのが売り。シベリアの厳冬下でも野外作業に使えるとあって、見本を手にはめながら長く質問するロシア人が目立った。青井貴史専務は「極東の展示会では価格だけ聞いて去ってしまう人も少なくなかったが、ここでは製品の機能をじっくり聞く人が多く、手応えを感じる」と明かす。
ロシアの水関係インフラは課題を抱えている。イルクーツク市幹部の説明によると、水道関連ではソビエト連邦時代の設備がまだ現役で使われており、新しい設備への更新が急務になっているという。下水浄化の技術も発展の途上にある。近年同市ではドイツやデンマークなどヨーロッパの技術を取り入れて更新することが多いが、これはヨーロッパ以外の情報が少ないためという側面もある。市としては選択肢を確保する意味からも、日本の技術を知ることができる今回のイベントを歓迎しているとのことだ。
実際、出展企業のうち川崎重工業、横河電機は初日にブースを訪れたイルクーツク市のヴォドカナル(水道公社)幹部から個別のプレゼンテーションを求められ、2日目の午前に急きょ同社を訪問。川重は下水タンクに圧縮空気を送る装置、横河電機は上下水道システムの制御機器類について、現場技術者らの前で説明した。
シベリアには国内人口3位のノボシビルスク市などもあり、日本に近い極東と比較すれば主要市の規模が大きく市場性は高い。反面、地理的な不便さなどから日本企業がこれまで積極的に関わってこなかったため、ビジネスの面では互いに情報が不足しているのが現状だ。こうしたイベントを通して両国の企業・団体間でのやりとりが増えれば、近い将来、シベリアは日本企業の有望な進出先として浮上してくるかもしれない。
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