期間は9月21日から約1週間。研修員となる日本人は現地在住者を含めて12人だった。所属は大手商社やゼネコン、機械メーカー、コンサルティング会社など様々。日露通訳のロシア人2人が同行するためロシア語ができなくても問題はない。
どの日も原則的に午前は座学、午後に現場視察というスケジュールだった。座学は主に、歴史的建造物である極東連邦大学校舎が会場となり、沿海地方政府職員や学識者からビジネス関連の諸制度や計画についてレクチャーを受けた。テーマの1つには、いま話題の「ウラジオストク自由港」も取り上げられた。例えばウラジオの製造業者がこの新制度の対象企業として登録されると、関税ゼロで原材料を輸入できるようになる見通しだという。
午後の視察先は現地の製造業、リサイクル業、上水道や熱供給施設など多岐に渡った。初日に視察したソーセージ工場では、男性マネージャーが現場を案内し、主としてドイツ製の生産設備を導入していると説明した。日本人参加者が「日本製の設備導入は検討しないのか」と質問すると、「日本はロシアの展示会に出品しないので情報がなく、検討対象になりにくい」旨の答えが返ってきた。
ある日は、ビジネスマッチングの時間が設けられていた。地元の自動車関連業者、また食品、運輸、港湾関係など17社がエントリー。事前に日露両サイドで参加企業リストが示され、希望を出せば面談の時間が割り当てられる仕組みだ。いわゆるビジネスパーソンではない筆者にも商談テーブルが割り当てられた。座っていると割り当て時間に関係なく誰かがやってきて、自分の会社をPRしていく。気がついたのは、英語を使おうとするロシア人が少なくないことだ。ほとんど英語教育を受けていないはずの年配者でも一生懸命話そうとする。時代の変化を感じた。
今回の参加者の一人、東京在住の食品コンサルタント、鈴木裕之さん(41)は、「身近でなかったロシアの状況を、2時間飛行機に乗るだけで知ることができた。短期間で多くの企業を訪問でき、非常に有意義でした」と振り返る。鈴木さんは懇談会で現地の菓子卸業者との接点ができたという。
この研修プログラムの実施主体は、正確には政府・経済発展省の付属機関「連邦人材センター」である。ここに各地方政府が運営する「地域人材センター」が関わるが、両センターは日本の経済界との接点がほとんどない。このため、代わって日本への呼びかけや事務連絡の窓口になったのがモスクワとウラジオの「日本センター」だった。実は極東でこの研修を開くことになったのも、日本センターから沿海地方政府への働きかけがきっかけだったという。これまで研修が主にサンクトペテルブルクなどヨーロッパ側ロシアで長く続いてきたことから、日本に近い極東でも実施してはどうか、との提案だった。
ウラジオ日本センターによれば、極東での研修は来年以降も続けて開く方向とのことだ。関心のある方には、日本センターからの案内にアンテナを張っておくことをお薦めする。
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