ガスプロムは2016年度、サハ共和国から天然ガスを中国へ供給するパイプライン「シベリアの力」の建設に、920億ルーブル(約1380億円)しか投じない。これは2015年度の建設費のほぼ半分である。ガスプロムは同様の決定を2015年初めにも行っていた。
にもかかわらず、ガスプロムの関係者によれば、建設の進み具合は早いという。昨年敷設されたパイプラインの長さは、計画の42キロを上回る45キロであった。さらに、2019年にも中国への供給を開始すると約束している。
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今月に入って、アジア向けのもう一つの計画に変更のあったことが、明らかになった。2011年に発案された、日本と韓国を主な輸出先とする、年間生産量1000万トンのLNG工場を、沿海地方に建設する案(「ウラジオストクLNG」プロジェクト)を、ガスプロムは延期する。
大手銀行「ガスプロムバンク」(ガスプロム傘下の銀行)がこの(LNG)プロジェクトへの融資を拒んだことが、主な理由の一つになったようだ。経済紙「コメルサント」は、西側がガスプロムバンクに発動した経済制裁との関連性を指摘している。
「シベリアの力」の建設に関しては、ガスプロムはいかなる問題も正式に発表していないが、間接的証拠から、プロジェクトが深刻な困難に直面していると考えることができる。
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例えば、ガスプロムはなぜ、昨年4月、「シベリアの力」の建設費用を2011年と変わらぬ8000億ルーブル(約1兆2000億円)と見積もったのかわからない。昨年12月の入札価格から判断すると、パイプラインの建設だけでも(コンプレッサ・ステーションなしで)8250億ルーブル(約1兆2375億円)かかるはずだ。
次の問題は、エネルギー価格の下落である。ロシアの投資会社「プレミエル」のアナリスト、セルゲイ・イリイン氏によると、「シベリアの力」は天然ガス1000立方メートルあたり350米ドルで採算が合うものの、ガス価格は原油価格と連動しているため、このレベルまで戻ることを早期には望めない。そのため、回収を考えるなら、プロジェクトははるかに安くなければならないのだという。
とはいえ、他の見方もある。このようなプロジェクトは10年で回収できるようなものではない。1980年代にヨーロッパ向けに建設されたガスパイプライン「ドルジバ」は、2000年代にようやく回収できている。
「ガスプロムのガスは中国にとって、輸送コスト抜きでも競合より常に安くなるため、数十年の長きを見越したガスパイプラインの建設には意味がある」と、ロシアの投資会社「フリーダム・ファイナンス」ロシア株式市場運用管理責任者のゲオルギー・ヴァシチェンコ氏は説明する。
「シベリアの力」経由で日本と韓国にガスを輸出する可能性についてはどうだろうか。専門家によると、これは実現しない可能性が高い。日本も韓国も、中国が参加しているプロジェクトに依存したがらないためだ。「これらの国の関係はそれなりに難しく、『シベリアの力』をこのような供給に使うことは恐らく実現しないだろう」と、イリイン氏は話した。
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