ノヴァテクの権益売却については、ロシアの経済紙「コメルサント」が独自の消息筋の情報として伝えている。中国の基金とは、習近平主席が昨年11月に創設を発表した「シルクロード基金(絲路基金)」のことである。
「石油と天然ガスの最大の輸入先の一国である中国が、資源採掘とこの分野への投資に参加することに関心を持っている」と、ロシアのバイナリーオプション会社「ヴェルム・オプション」のアナリスト、アレクサンドル・クラスノフ氏は話す。ノヴァテクは欧米の経済制裁の対象企業で、欧米の融資を受けられないため、中国資金がその代わりになるという。アメリカの投資銀行大手「メリルリンチ」は、権益の価値を15~20億ドル(約1800~2400億円)と試算している。
液化天然ガス開発プロジェクト「ヤマルLNG」には、南タンベイ・ガス田の基地にLNG工場を建設する計画もある。2017年までにそれぞれ年間500万トンの能力を有する3ラインを建設する。総投資額は推定で280億ドル(約3兆3600億円)。現在、プロジェクトの権益を保有しているのは、ノヴァテク(60%)、フランスの「トタル」20%、「中国石油天然气集団公司(CNPC)」20%。LNGの売却先はすでに決まっている。トタル、CNPC、スペインの「ガス・ナトゥラル・フェノーサ」の3社だ。支配株主はノヴァテクとなっているため、シルクロード基金が取得できるのは9.9%に限られる。
ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏は、今回の取り引きが「ヤマルLNG」にとっても、ノヴァテクにとっても、良いものだと考える。第一に、ノヴァテクは残った株式をようやく他に割り当てることができた、すなわち発生したコストを補填し、今後の参加を確保できたため。第二に、取り引きがプロジェクトの次の段階に必要な融資と直接関係している可能性があるため。ヨーロッパのガス市場の現状から、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」がガスパイプラインに重きを置くとしたことは、あまり良くない決定だったという。
クラスノフ氏によると、これはロシアでLNG開発が続くことを意味するという。しかし、現在ロシアで稼動しているLNG生産工場は、ガスプロムの「サハリン2」工場のみ。
アメリカは今月、サハリン大陸棚の南キリンスキー鉱区を制裁対象リストに追加。アメリカ企業はこのプロジェクトに設備を提供できなくなった。この鉱区はLNG用に利用される予定であった。
この決定がサハリン2を含むLNG輸出プロジェクトや、イギリス・オランダ系石油大手「ロイヤル・ダッチ・シェル」との作業の見通しを危うくすると、専門家は考える。「南キリンスキー鉱区はLNG工場の資源基地として使われると想定されていたため、(設備の輸出制限は)LNGプロジェクトの今後にダメージを与える可能性がある」とバラキレフ氏。輸入設備がないと、ガスプロムの開発に問題が生じる可能性がある。特に、今後の調査で石油があることが明らかになった場合だ。「どうやらアメリカは、最初からガスプロムのLNGプロジェクトを標的としていたようだ。これがアメリカの輸出プロジェクトの好ましくない競合になってしまうから。既存のプロジェクトはダメージを受けないだろうが、その先行きが危ぶまれる」とバラキレフ氏。
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