開演を知らせる3回目のベルが鳴り、照明が消えると、舞台――正しくは馬場に、馬たちが現れる。馬は音楽に合わせて、高難度の技をこなす。そしてその技をつないで一つのストーリーにした舞台を、観客たちは息をひそめて見守る。
モスクワの馬劇場は1年前に創設されたばかり。劇場はVDNKh(全ロシア博覧センター)内にある国立馬術伝統センターの馬博物館の中に置かれている。主要なアーティストたちは、ロシアの乗用馬、ウラジーミル・ヘビー・ドラフト種である。
もっとも小さい「スター」は、シェルドンというニックネームを持つヨーロッパ品種のミニチュアホース。シェルドンはすでに、小さな馬がビッグなアーティストになるというストーリーを描いた「ある友情の物語」という演目で主役を演じた。
馬劇場のアーティスト、アイーダ・ガジミルザエワとワジム・コロドチキンは、「馬の自由」というジャンルで活躍しているが、2人は、このスタイルで演技を行うロシア最大のグループを率いている。つまりこれは、2人が調教している馬たちが、後ろ足で立ったり、ピルエットをしたり、馬場を歩いたりといったすべての技を、皆で一斉に行うことができることを意味するのである。加えて馬劇場では、馬が縄跳びをするというユニークな技も披露されている。